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「今後、書きたい小説は?」

ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」を刊行したときのインタビューで聞かれて困った質問のひとつが「今後、書きたい小説は?」でした。

書きたい小説。小説のネタはメモとしてたくさん残っているし、書こうと思っているテーマも頭の中にあります。
それらは「いつか書きたい小説」ではあります。
だけど、それらのネタやテーマが今後書いて刊行できるかは別問題です。
商業出版するためには、多くの読者が手に取ってくれる作品にしないといけません。本屋に書籍が並ぶためには多くの人と費用がかかりますから。

Amazon Kindleなら出版コストは0円ですので、商業出版と比較して自分が書きたい小説を書いて出版することができますが、それでも他人に公開する以上は読者が読んで楽しめる話にしたくなります。
「小説は他人に読んでもらうもの」と僕は規定しているので、自作を読んでくれた人には、有意義な時間を過ごしてもらいたいと思ってしまいます。

だけど、書きたいテーマの中には、多くの読者が望んでいないものもあります。そのままテーマを表現した小説を書いても、あまり読まれないようなものです。

平たく言えば、「自分が書きたいもの」とマーケットにギャップがあるということになるかもしれません。
その解決方法はシンプルで、「自分が書きたいもの」を人が読んで楽しめるものに昇華させればよいわけです。
重いテーマや著者の主張をそのまま書いても受け入れてもらえなそうなら、面白い物語に変換することが必要です。大上段に構えた説教のような小説なんて読みたくないですからね(中には読みたい人もいるのかな)。
面白く書くことこそが作者の腕の見せ所なのでしょう。

多くの読者にとって作者が言いたいことや抱えるテーマなんて関係ありません。読んで面白いことがなによりも大事です。
面白く読んでもらったあとに、テーマに通じるなにかが読者にわずかでも残ってくれれば、めっけものだと思うようにしています。

「一番言いたいことは書かない」と誰かが言っていましたが、まさにそうだと思います。言いたいことをそのまま書いてしまえば一行ですみますが、それで伝わるなら長い小説を書く必要がありません。
長い時間を物語内で過ごしてもらうことで、水が染み込むようにじんわりと伝わるような、そういう小説を書きたいですね。


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