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ご近所トラブルの背景にあるものとは?

不動産業を生業としているわたし。いただくお仕事は顧客様や知人からの紹介が多く、そのためほとんどの相談は電話で始まります。この日の仕事も1本の電話から始まりました。

「隣りのおじいちゃんが怖いので引っ越しがしたいんです……」

今にも泣き出しそうな震えた声で、おずおずと話し出した女性。
彼女は知人の娘さんです。
かなり動揺した様子の彼女は、話のまとまりがまったくありません。
そこでわたしは質問しながら、ひとつひとつゆっくりと聞いてみることにしました。

彼女がその住まいに引っ越してきたのは5年程前。
門扉のある庭付き一軒家の賃貸です。
隣りは50年以上もそこに住んでいる80代のご夫婦。

そのご主人様が1年ほど前から、敷地内に無断で侵入するようになったというのです。敷地内に入ってきては外の水道を勝手に使ったり、石のようなもので外壁をゴリゴリと削ったりすることがありました。またある日は、突然敷地内に入ってきたかと思うと、大声でわめきちらかします。
それでもお隣りという関係ですので、日々の暮らしを考えるともめ事は起こしたくありません。彼女はやめて欲しいと奥様に何度もお願いし続けましたが、状況が変わる様子はいっこうにありませんでした。

さらに月に1度くらいだったこの行為、3か月ほど前から週に1度に増え、ついにはこの1週間はほぼ毎日、敷地内に入ってなにかをしているといいます。さすがにこうなると我慢も限界です。そこで不安とストレスでたまらなくなった彼女は、わたしに電話をしたのです。その後相談の1か月後に新しい場所に引っ越し、穏やかな毎日を過ごしています。

報道などでも目にするご近所トラブル。しかもこのような困った行動を起こしている方に、高齢者の独居または高齢者のみの世帯ということが少なくありません。高齢になると身体の変化の他にも認知症の症状が出てくる場合があります。今回相談を受けたケースも、もしかすると認知症の症状のひとつかもしれません。こういった行動は本人にとって『理由』があるものです。ところがなぜそのような行動を起こすのか、周囲はわからないためトラブルに発展します。

認知症にはいろいろな種類があり、症状もさまざまです。被害妄想や幻覚・幻聴のある場合も……。今回のような高齢者のみの世帯、なにか今までと変化が生じていないか? と確認するすべが必要だと感じた事例でした。

高齢者世帯には民生委員がかかわってくれていることもあります。ところが家族や付き合いの長い民生委員ほど、変化に気が付かないことがあることも事実です。そこで、社会福祉士、ケアマネージャー、保健師など高齢者の暮らしや介護の専門家に相談できる場所があることを知っておきたいもの。
あなたの街にもこういった『高齢者の暮らしや介護のよろず相談所』があります。その名も地域包括支援センター。お住まいの地域ごとに管轄がありますが、インターネットや役所で調べることができます。万が一の時の転ばぬ先の杖として、所在地と連絡先を調べておきましょう。


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