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私の中のジキルとハイド 〜双極性障害の頭の中 5

唯一無二の存在。あたしじゃなければ駄目だと。あたし以外は意味がないと。あたしだけが必要だと。誰か。あたしのことを。あたしを。特別だと認めて。他と違うと。価値を見出して。あたしの。あたしだけの。あたしという存在の。あたしという人間の。意味を。価値を。必要性を。存在意義を。今すぐ。今すぐに。じゃないと終わる。消滅する。どこにもいなくなる。消滅する。終わる。終わる。終わる。終わる。終わる。終わる。

本谷有希子:『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』


みなさん、こんにちは。
双極性障害2型のフツーの会社員、パピヨンです。

会社で起こした“大爆発パニック”から1週間が過ぎ冷静になってきたので、『嵐のあとの気持ち』を忘れないよう記録として書き残しておこうと思います。


私の中のジキル博士

普段の私は明るくおしゃべり。
会議やミーティングでも率先して意見やアイデアを言うタイプです。
“存在がやかましい”と仲間に笑われるほど、いつも何かしら中心にいます。

根っからの長女気質なので、仲間や部下の世話も焼きたがりです。
なので、“たのまれ仕事”や“たよられ仕事”が大好物。
調子が良い時はこれらのお願い事を

「はいはーい。任せろ〜♪」

と明るく引き受けるのが私のオハコなので、部下も上司も信頼してくれているのだと思います。

ずっとこの“ジキル博士”のままでいられたら…どんなにか良いのに、といつも思います。


私の中のハイド氏

私はふとした言葉やトリガーで“大爆発”を起こします。
もう、完全に制御不能なのです。

巷で言われるアンガーマネジメントで、
「6秒待てば怒りは収まる」と聞きますが、
6秒なんてそんな長い時間待てません。
特に混合状態の時は、なまじ頭が回転するので相手も怯むほど凄まじい速さで“反撃”してしまうのです。

本当に、私の中には“悪魔のようなハイド氏”が確実に居ます。

どうして大切な仲間に対してこんな態度を取ってしまうのか?
自分でも全然理解できません。
普段は至って朗らかに仕事をしている私なのに…。


あの日の記録

先日の“爆発”は、上司の些細なひと言でした。
しかも内容はもっともな正論です。
“少々の説明不足と言い回しのアヤ”だけです。

それにもかかわらず、瞬間で沸点に達してしまった私は、泣き叫び、そして叫んでいる途中から“会社で爆発してしまった!!”という事実にさらにパニックを起こしました。

上司は慌てて他の部署のメンバーに見られないように、仲間3人でエレベーターに私を乗せて隠してくれました。
泣き叫びながらガタガタと震える私の手を握って「俺が悪かった!ごめん!悪かった!」と謝り続けていました。
上司は全然悪くないのに。

その後は静かな部屋に私を座らせ、私の病気をよく知っている隣のデスクのデザイナーが、何も言わずにそばにいてくれました。
上司は自分がいると余計に興奮させると思ったのか、早々に部屋からいなくなっていました。

私は過呼吸が治まり泣き止むと、「お願いがある」と伝えました。
勝手知ったる隣のデザイナーは「うん」とだけ言って手帳を開きました。

自分でも笑えますが、一旦おさまれば浮かぶのは今日やるつもりだった仕事のことばかり。
しかし大泣きした後なので顔はぐちゃぐちゃ。
もう今日は会社に居られないと悟り、会社でしか出来ないことを捲し立てるような速さでひと通り彼女に頼みました。

ぐちゃぐちゃの顔のまま、帰りの電車の中で「病欠」の申請を出しました。

どうして私はこんななんだ?
今いる私はいったい誰なんだ?
どうして大切な仲間を傷つけてしまう?
もう、消えてしまいたい。

果てしなく押し寄せる後悔。
そんな気持ちをぐるぐる抱えたまま、その日はひとり家でやるべき仕事だけして終わりにしました。




ハイド氏と生きていく

翌日は土曜日でしたが、朝上司からLINEが来ました。

「守ってやる立場のオレがトリガーになってしまって最低だった。本当にごめん。お前の仕事ぶりは自慢だし、もっと理解できるように努力するから許して欲しい」

もう涙でスマホの画面が見えませんでした。
悪いのは私の病気なのに。

そして週明け、なんとなく気まずいまま重い気持ちで出社しましたが、みんな笑顔で「おはよー」と言ってくれました。
何事も無かったようにフツーに接してくれるのです。
私の中に“ハイド氏”がいると、みんな知っているのに。

私の気まずさを察してくれた、向かいのデスクの別の上司に呼び出されました。

「この間は大変だったな。でも、お前のそーゆーのも全部ひっくるめて、これからも一緒にやって行こう。特別扱いはしないし、お前もイヤだろ?
この先、また“アレ”が起こるかもしれない。それはそれでしょうがないとみんな理解してるから。お前の“特性”みたいなもんだと。お前が必要だからさ。それでやって行こう。なぁ?」

こんなに素晴らしい仲間に囲まれているのに。
できればもう爆発したくない。
ずっとジキル博士でいたいのに。
でも、私は“ハイド氏”と生きていかなければならない。

こんな私が存在して良いのか?
私の中には“ハイド氏”がいるのに。
この『記録』が、ハイド氏の出現の抑制薬になってくれることを願って。

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