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津堅島の年中行事 8月|Field-note

沖縄県の現うるま市津堅島で、1990〜1991年当時あるいはそれ以前に行なわれていた年間の行事や祭祀等の採集記録です。不定期に掲載します。


シバサキ(旧暦8月10日)

8月は一般に悪霊はびこる月だと考えられているが、特にこの日はキライビ(キレビともいい、日が悪い)であり、マジムンが徘徊するといわれる。

人々は夕刻になるとグサキ(ススキ)を刈りに行く。それをサンに結びシバを作って、屋敷、家屋の四隅、門ロ、戸口、畜舎、便所、井戸、生産道具、庭の樹木などに結んだり、差し掛けたりする。これはシバのカリー(善に働く霊カ)をもって魔除けとするためである。

グサキは一束に大体3本が用いられる。また、シバに桑の枝を一緒に束ねている場合もあるが、これは雷が落ちないことを祈願する意味を持つ。

家族の誰であってもこの作業を行なってよい。昔はこの日は家族全員が仕事をしなかったという。

かつてはこの日の夜は、青年たちが高い木などに登って一晩中村落を監視していた。フィーダマ(火玉)が現われた家では不幸が起きると考えられており、火玉を発見したら即刻その家を訪ね、注意を促したという。

また、この日は厄払いのためのボーバーラー(爆竹)をこどもたちが鳴らす音がかまびすしく聞こえた。

ハチグヮチアシビ(旧暦8月11日)

ウシデーク(臼太鼓)、トーウドゥイ(唐踊り)が行なわれる。かつては9日から15日まで続けられた。ここでは現在の状況だけ記すことにする(過去の状況については『津堅島の唐踊り』勝連村教育委員会編を参照のこと)。

この日、津堅殿内と神谷殿内にはそれぞれ津堅村、神谷村と書かれた旗が門口に立てられる。夕方近くになると、各家の婦人たちがシキルンチマーに集まり、円陣を組んで、手には四つ竹、扇を持って数曲舞い踊る。舞い終わると、今度はめいめいがカチャーシーを踊りだす。

ヌルがカンサギに祈願して、次に男性による唐踊りに移る。しかし、現在ではこれも著しく衰退していて、わずか2名のニッチュが踊っていたにすぎなかった。この後全員で神谷殿内に移動し、ここで男女それそれ1曲ずつ踊って祭祀が終了した。

ジューグヤー(旧暦8月15日)

十五夜の月の光にあたれば身体が丈夫になるといわれ、月見を行なう。

各家庭では普段と違う豪華な料理、オリ(黍と小豆を蒸した強飯のおにぎり)、あるいはフチャギモチ(小豆をまぶした餅)をこしらえ、仏壇に供え焼香する。家族で、あるいはクミや親族で集まって宴会を開く。

またシキルンチマーでも、神人がカンサギに豊作の祈願をしたあと、村落全体で観月会を行なっている。

ヒンガン(新暦9月20~26日)

八月彼岸のことで、2月のヒンガンと同じ内容である。

ハクルヌウガン(ヌルによる日決め)

次の年の粟の豊作を祈願する祭祀。3月の儀礼と同じ内容である。

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