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脱成長的な考え方のパイセン|共有地をつくる|Review

『共有地をつくる――わたしの「実践私有批判」』
平川克美著、ミシマ社、2022年

レビュー2022.07.05/書籍★★☆☆☆ 

ジャケ買いならぬタイトル買いだった。ジャケ買いはアタリもあるがハズレもある。いやハズレのほうが多いだろう、統計はとっていないがね。今回は・・・ハズレかな。

なるほどと頷けることは書いてある。

「欲望の呪縛から逃れる」――ミニマリストになりたいボクには響く言葉だ。人はみな必要消費分は買い尽くし、見栄や惰性のための買物ループにずっぽりハマっている。買うこと=私有することで失うものを増やして不自由になっている。そのとおりだ。

「縁側モデル」――すばらしい。内でもなく外でもないではなく、内でもあり外でもある。縁と無縁が共存できる場所をつくろうと、著者の平川さんは「隣町珈琲」を開いた。そこでは所有権を解除して、貸したり借りたりの機会を広げていく。私有から解放されようぜと。

これらの底辺にあるのは、いきすぎた資本主義への反感だ。同意する。資本主義経済も消費もビッグバン後の宇宙のように膨張し続けている。

もうひとつ、日本社会への嘆きがある。国が成熟すると需要が減退するが、企業優位の緊縮財政策は誤った舵とりだった。低成長を前提としたプランBを持てなかったのは、日本という国のシステム自体が老いているせいだとおっしゃる。著者自身、その誤った舵とり世代のど真ん中にいるのだけどね(かくいうボクもそうなのだが)。

とまあ、考えさせられることが書いてあるのだが、何が不満かと言うと、それって本一冊じゃなくて一章に収まるよね、ってことなのだ。それ以外のいわば行間は、自身の体験や高尚すぎない引用がちりばめられて、テンポよく読み進められる感じのいい文章なのだが、読了後にすぐに忘れてしまうチープさがある。

著者もそれとなく書いているように、これまでの著作の焼き直しなのだろう。なんとなく薄いレモネードを飲んでる気分になるのが、この低評価の理由かな。

この本は福岡県八女市の「うなぎBOOKS」というセレクト本屋で買った。もんぺをブランディングして高価格化に成功している「うなぎの寝床」という地域商社が本家である。町家を改造してショップや宿を営業し、地方創生の勝ち組として称賛されている。

八女市の地域活性化に貢献したいという気持ちはあったボクだが、おそろしく高いもんぺは買えなかったので、本屋で何か買わねばという気持ちになり、半ば焦って買ってしまった。このときのシチュエーションが評価に影響していないと誰が言えようか!



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