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山小屋のゴミをアップサイクリング

山小屋のプラスチックゴミ

この記事をお読みの方は山小屋を利用されたことはあるでしょうか?
昨今の登山・アウトドアブームの煽りを受けて、山小屋の利用者は年々増加傾向にあります。利用者は日本人のみならずインバウンド需要も多く、閉鎖的かつ物資の供給が難しい環境にも関わらず、多種多様な基地としての役割も果たす重要な施設となっています。

そんな山小屋は容易に物資を供給できる場所にはありません。
技術が進んだ今でも環境への配慮を最大限に発揮する物資の供給方法には、「歩荷」と呼ばれる人力で数十キロもある荷物を背負って運んでくれる方の存在が必要不可欠です。その他には高額なヘリの空輸を利用して、定期的に荷揚げを行う等の方法しか確立できていないのが現状です。

このように荷揚げされた物資も多くは食料品の為、必然的に出るゴミもまたヘリ等を利用して荷下ろしするシステムを採らざるを得ない現状があります。その中でも多いゴミは、飲料から出たペットボトルを始めとしたプラスチックゴミ。このようなゴミ問題は近年のアウトドアブームも追い風となり深刻化している現状があります。

山小屋で3Dプリンター?

これらのゴミの中でも特にプラスチックゴミに目を向けて、ゴミをリサイクルする方法を模索するプロジェクトが始動しました。単純にリサイクルするのであれば、ペレット状にして再利用するのが一般的です。しかし、前述の通り「山小屋」と言う特殊な環境下ではやはりゴミを一旦、荷下ろしする必要があります。
そこで、単純にプラスチックゴミをリサイクルするのではなく、アップサイクリングする事で山小屋と言う特殊な場所で必要とされる道具や、そこに従事する山小屋スタッフの為の必要物資をプラスチックを利用して、その場で制作する事ができないのか?その答えの1つが3Dプリンターでした。

山小屋に設置された3Dプリンター

リサイクルの為に必要な燃料を削減し、現地制作・利用を目指す

3Dプリンターがあれば必要な物資をその場で出力する事が遠隔でも可能です。つまり、Wi-Fi環境が整備されてさえいれば山小屋のスタッフが出力しなくても、遠隔でデータを作成し山小屋で出たプラスチックゴミ(ペットボトル等)をマテリアルとして新たな道具や物資を3Dプリンターで出力する事が可能なのです。
そんな近未来的なシステムの構築に尽力するのが、Design Studio Bergchen
です。

代表を務めるK氏とはあるイベントをきっかけに知り合いました。
そのイベントではBright fieldが森の案内人としてネイチャーガイドを実施。プログラム中に落ち葉を1枚観察し、葉をデータ化。同じ形の木の葉をアウトドアでは必需品の蓄光タグとして3Dプリンターで出力するというイベントでした。お互い山が好きと言う事もあり、その後も活動をご一緒させていただく中で、今回の記事にもある「山小屋のゴミ問題」に対して取り組みの一端を、森の案内人としての側面からお手伝いさせていただく事となりました。

山小屋では仕切りにカーテン等を用いてプライベートを確保する小屋も少なくない。
これは実際に小屋に設置された3Dプリンターで物資を出力している様子。
不足したカーテンレールパーツ等を山小屋で出たプラスチックゴミをアップサイクリングし供給。

環境保全活動 嚆矢の地「尾瀬」からゴミ問題を考える

有数の山岳景勝地である尾瀬ヶ原。国内における環境保全活動はこの地を嚆矢として始まったと言っても過言ではありません。
広大な湿地帯には本来、寒帯・亜寒帯にしか生息しない高山植物が自生するなど、独自の生態系を有する尾瀬ヶ原。この地にも開発の波が押し寄せた時代がありました。
それは広大な湿地が全てダムの底に沈む建設計画でした。その時、このダム建設に対して反対する動きが生まれました。当時、環境に対する世間的な見解がまだ重要視されていなかった時代、経済的な発展に対する反対運動は大きな力が必要でした。この活動は後の日本自然保護協会へと発展し、国内における環境保全活動の嚆矢が誕生したのです。

これも何かの縁なのか。そんな尾瀬にある山小屋から、この活動がスタートする事となりました。前例のないプロジェクトなので、やはり受け入れてくれる山小屋はそう多くはありません。その中でも尾瀬ヶ原にある弥四郎小屋の現オーナーは暖かくこのプロジェクトを受け入れてくれました。

尾瀬ヶ原が一望できる特等席に鎮座する弥四郎小屋

3Dプリンターを活用して山小屋で消費されるプラスチックゴミをアップサイクリングする。一見聞こえの良い活動ではありますが、「導入」となると問題は山積みです。この活動をより多くの方に知ってもらいたい。この活動を通して自然に触れる機会を提案し、環境問題に対して意識を向けてほしい。その為には、山小屋に3Dプリンターが置いてあるだけでは浸透しません。実際に自然界の美しさに触れる体験はもちろん。自然に触れ、その素晴らしさに触れる事の実体験から生まれる「自然って素晴らしいな」と言う思いがなければ、ゴミの問題など誰も考えようとはしないのです。
その為にBright fieldは森の案内人として森に入る事、自然に触れ合う機会を提案し活動の輪を広げていきたいと考えています。
そして今後もDesign Studio Bergchenのような、志と自然に対する思いを持った人、企業と共に様々な機会の立案を進めて行きたいと考えています。

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