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【創作大賞2024】漫画原作部門『ミスナマハゲと花笠女王』第1話
(あらすじ)
秋田出身の山形の大学生・アカネは、山形の銀行の内定のかわりに、『花笠女王』を一年引き受ける。
また、秋田の観光組合の父の頼みで、はじまったばかりの『ミスナマハゲ』も引き受けることになる。
リボンをつけた『ミスナマハゲ』は、女と分かるために、割烹着を着させられたり、出刃包丁のかわりに『調理器具』をもたされたりと、大迷走がはじまった!
(補足・登場人物)
柳葉アカネ(22)山形の大学生・秋田出身
アカネの父親(50) 秋田観光組合の職員
アカネの母親(50) 主婦。秋田大曲在住
モモコ(22)山形の大学生・花笠女王
キハル(24)山形観光組合職員・花笠女王
ミドリ(24)秋田の銀行員・ミスナマハゲ
アオイ(24)秋田農連職員・ミスナマハゲ
面接官A(50) 山形の銀行
面接官B(50) 山形の銀行
山形担当者(40)花笠女王の担当者
秋田担当者(30)ミスナマハゲの担当者
女性キャスター(25)ニュースキャスター
青森AB 青森のアイドル・ボーイミー津軽
岩手A テクノ音楽家・デクノボーイ
宮城AB お笑いコンビ・そこで牛ターン
福島AB 福島のアイドル・ラーメン・キタカタクッタ
#創作大賞2024 #漫画原作部門 #少年マンガ #少女マンガ #青年マンガ #BL #TL
〇タイトル『ミスナマハゲと花笠女王』
〇山形市の外観・昼
山形市の外観がうつる。
〇山形の銀行の外観・昼
山形の銀行の外観がうつる。
〇山形の銀行の会議室・昼
会議室で、面接を受けている主人公の柳葉アカネ(22)。
アカネM『就職活動、真っ只中。大学四年生の私は、山形の銀行の最終面接
まで、何とかこぎつけていた』
正面には、面接官A(50)と面接官B(50)が座っている。
面接官A「実は君にお願いがあるんだけど。山形の花笠女王を、一年間だけ
引き受けてくれないだろうか?」
アカネ「花笠女王ですか?」
面接官A「実は毎年なり手がいなくてね。毎年三人必要なんだが、地元の銀行から一人、農業連合から一人、観光組合から一人と、いつの間にか恒例になってしまっていてねぇ」
アカネ「私は秋田県出身ですが、大丈夫なのでしょうか?」
面接官B「山形の学生だから、いいんだよ。大学四年の夏から、来年の夏まで。引き受けてくれれば、もう内定を」
面接官Bが、横の面接官Aにも確認する。
〇山形市・アカネのアパートの外観・夕方
〇山形市・アカネの部屋・夕方
山形市のアカネが、部屋から秋田の母親(50)に電話をしている。
母親「花笠女王。いいんじゃないの。ヌードになったりしないでしょ?」
アカネ「ならないよ。花笠女王が。ただ着物を着て、写真に写ったり、駅で観光パンフを配ったりするの。アルバイトの日当も出るんだって」
母親「だったらいいじゃない。このご時世に、正社員で就職できたら大したものよ。お父さんにも言っとく」
アカネ「うん」
アカネM『こうして私は柄にもなく、はじめて「女王」になった』
〇山形観光組合の外観・昼
山形市内のビルの外観。
〇山形市内の会議室…昼
会議室でアカネと、モモコ(22)と、キハル(24)が、しゃべっている。
モモコ「私は、お父さんが、農業連合で働いていて、何とか、一年って頼まれちゃって……」
キハル「私は、市の観光組合の人間で。今年はじゃんけんに負けちゃって……」
アカネ「銀行の人が言っていた通りだ。倍率一倍のミスコンだ」
三人が、声を合わせて笑う。
山形の担当者が入ってくる。
山形担当者「ええ。それでは一年間の大体のお仕事を説明します」
山形の担当者が、ホワイトボードに年間の予定を書いて、説明している。
山形担当者「早速ですが、これから衣装合わせに入りたいと思います。みなさん、お時間は大丈夫ですよね?」
キハル「はい!」
〇山形の写真館の外観・昼
〇山形の写真館・昼
テーブルの上に、花笠女王の着物が置かれている。
モモコ「綺麗な色!」
山形担当者「先にメイクに、入らせていただきますね」
三人の花笠女王が、椅子に座りながら、プロにメイクをされる。
着物を着て、花笠をもった三人が、写真館で写真を撮りはじめる。
カメラのシャッター音とともに、三人の集合写真が映しだされる。
〇奥羽本線・昼
アカネが、山形から秋田に向かう、奥羽本線の電車に乗っている。
車窓には、のどかな田園風景が、広がっている。
〇秋田県大曲駅の外観・夕方
〇アカネの実家・秋田県大曲・夕方
秋田の実家に帰り、母親に写真を見せているアカネ。
母親「いいじゃない!このまま、お見合い写真に使えそうね」
アカネ「プロのメイクが、ついたからね」
母親「他の二人も美人じゃない。いい!これはいい!」
アカネ「もう仲良しなの」
父親「ただいまー」
アカネの父親(50)が帰ってくる。
母親「お帰りなさい。あなた、これを見て」
母親が写真を見せる。
父親が写真を見て、複雑な顔をする。
父親「アカネ、実はお願いがあるんだが」
父親がカバンから、パンフレットを差し出す。
アカネ「ミスナマハゲ?」
パンフレットには、頭にリボンをつけたナマハゲが、横から顔を出している。
父親「今年からなんだが、三カ月たっても、誰も応募者がいないんだ」
アカネ「当たり前よ。履歴書とかに、絶対書けないし。大体お面かぶっているんだから、誰でもいいじゃない」
父親「そうなんだよ。でも女じゃないと、後ろから見た時、さすがになー」
アカネ「大体ナマハゲが、リボンつけているだけで女とか。昔の漫画みたい。誰のアイディア?市長?県知事?県会議員?」
父親「まあ、そんなところです。力のあるー、お方です」
アカネ「こわー。ありえない」
父親「なぁ、アカネ。一年だけやってくれないか。一人でれば、他からも差し出しやすくなるんだよー」
アカネ「差し出すって言った!いけにえだ! 現代のいけにえだ!」
父親「頼むよー。たぶん、半年で終わるから。ただの思いつきだし。山形の花笠女王と、かけもちでやってくれないか?山形の活動は土曜日だけなんだろう?こっちは調度、日曜日なんだよ」
アカネ「私にも、プライドってものがある」
父親「頼むよー。どうせ顔もでないし。日当にお父さんが、プラス三千円、お小遣い出すからさー」
〇秋田市の外観・昼
秋田市の外観。
アカネM『三千円はでかい』
〇秋田観光組合の外観・昼
秋田市内のビルの外観。
〇秋田市内の会議室
会議室にアカネと、ミドリ(24)、アオイ(24)が座っている。
三人とも、元気がない。
ミドリ「秋田の銀行から来た、ミドリです」
アオイ「農連職員の、アオイです」
アカネ「観光組合の娘の、アカネです」
アカネM『何だろう、このデジャブ感』
秋田の担当者が入ってくる。
秋田担当者「ええ。それでは一年間の大体のお仕事を説明します」
〇秋田の写真館の外観・昼
〇秋田の写真館・昼
秋田担当者「みなさん。こっちでーす!」
秋田担当者が、三人を写真館に誘導している。
テーブルの上にナマハゲの衣装と、赤・青・緑の、本格的なナマハゲの仮面が置いてある。
ミドリ「やっぱり、ガチかよ」
秋田担当者「みなさんの、お好きな色を選んでください」
アカネ「好きな、服の色みたいに言う」
アカネは赤、アオイは青、ミドリは緑の仮面を、しぶしぶ手にとる。
秋田担当者「リボンだけだと、女とわかりづらいので、割烹着も用意しました」
アオイ「私、そういうキャラ、知っている。はっきりとは、言えないけど……」
秋田担当者「準備ができたら、ミスナマハゲの、プロマイド撮影に入ります」
ミドリ「プロマイド?」
アオイ「プロマイドって、言うのー?」
アカネ「……あのー、プロのメイクなんかは?」
秋田担当者「え?何のことです?」
アカネ「いいえ。こっちのことです」
アカネが無言で、ナマハゲの仮面をつける。
ナマハゲの衣装に、リボンと割烹着をつけて、出刃包丁をもった三人が、写真館で写真を撮りはじめる。
カメラのシャッター音とともに、三人の集合写真が映しだされる。
× × ×
秋田担当者「はい。悪い子は、いねえがー!」
アカネ・ミドリ・アオイ「悪い子は、いねえがー」
アカネ達が、秋田担当者のかけ声に続いて、出刃包丁を上にあげている。
秋田担当者「もっと、大きな声で。悪い子は、いねえがー!」
アカネ・ミドリ・アオイ「悪い子は、いねえがー!」
ミドリ「あのー、どういうシチュエーションでこれをやるんですか?」
秋田担当者「まだ、決まっていません」
アカネ達が不安そうに、顔を見合わせる。
〇山形駅外観・昼
山形駅の外観。
テロップ『山形市・土曜日』
〇山形駅・昼
山形担当者が、アカネ達に説明をしている。
山形担当者「花笠女王の、活動一日目。今日は、山形新幹線で到着したお客様に、山形産のワインの試飲を、配っていただきます」
到着した山形新幹線。
着物を着た花笠女王の三人が、試飲カップを配りはじめる。
キハル「山形へ、ようこそー」
モモコ「山形へ、ようこそー」
アカネ「山形産のワインの試飲でーす」
キハル「白ワインもありまーす」
モモコ「お子様は、葡萄ジュースをどーぞ」
〇秋田駅外観・昼
秋田駅の外観。
テロップ『秋田市・日曜日』
〇秋田駅・昼
秋田担当者が、ナマハゲの衣装を着たアカネ達に、説明をしている。
秋田担当者「ミスナマハゲの、活動一日目です。秋田芸能保存会の皆様が、秋田新幹線で到着したお客様を、秋田音頭でお出迎えして下さります。我々ミスナマハゲは、それを後ろで、盛り上げるのが仕事です。張り切って、いきましょう!」
到着した秋田新幹線。
秋田芸能保存会が、秋田音頭の歌と踊りと演奏とをはじめる。
その後ろで、ミスナマハゲの三人が、音頭に合わせて、出刃包丁を上げ下げしはじめる。
若い女性「ミスナマハゲだって。おもしろーい!一緒に写真、撮って下さーい!」
若い女性観光客達が、ミスナマハゲと一緒に写真をとる。
幼児を連れた家族連れも、寄ってくる。
家族連れ「一緒に写真、撮って下さーい!」
幼児「ワーッ」
アカネ達を見て、幼児が泣き出す。
アカネ「おー、よしよし」
アカネが、幼児の頭をなでる。
幼児「ワーッ」
幼児が、一層泣く。
ミドリ「私達、あんまり子供に近づかない方がいいわよ」
アカネ「このキャラ、やりづらい」
突然、小学校一年生くらいの子供が、アカネの腰にパンチをする。
小学生「ライダー・パンチ!」
アカネ「あ、いたーっ!」
小学生「この、化けものー!」
アカネ「この、ガキー!」
アカネが、出刃包丁をもって子供を追っかける。
しばくすると、アカネが二人の駅員に連行されて戻ってくる。
〇秋田市内の会議室・昼
黒板に『第一回・ミスナマハゲ反省会』と書いてある。
秋田担当者「作り物とはいえ、駅構内で出刃包丁はよくないということで、このようなものを用意しました」
テーブルの上に、しゃもじ・オタマ・泡立て器が置かれる。
秋田担当者「お好きな調理器具を、選んでください」
割烹着をつけたナマハゲ達が、それぞれに調理器具を手にとって、見つめあう。
アオイ「どんどん、主婦化していくね」
アカネ「男鹿半島に怒られるぞ」
秋田担当者「基本、あの辺の方には、ミスナマハゲのことは内緒です。シーッ」
アカネ「シーッじゃないよ!バッタもんかよ!」
ミドリ「やばいんじゃないの?」
アオイ「ちゃんと、筋は通してよー!」
〇山形市の外観・昼
山形市の外観。
テロップ『山形市・土曜日』
〇山形市内の会議室・昼
会議室でアカネ・モモコ・キハルが、Tシャツ姿で、花笠音頭の練習をしている。
音楽「花の山形。紅葉の天童。雪のー。チョイチョイ……」
アカネ「あー、こっちはマトモでいいなぁ」
アカネが踊りながら、一人ごとを言う。
アカネ達が、一休みをする。
モモコ「アカネちゃん、花笠音頭、覚えるの早いね」
アカネ「そう?秋田音頭なら、昔、お婆ちゃんに、習ったたことがあるんだけど」
キハル「秋田音頭って、どんなの?」
アカネが立って、秋田音頭を踊ってみせる。
アカネ「コラ、いずれこれより、御免こうむり、音頭の無駄をいう、アーソレソレ」
モモコ「アハハ」
キハル「時代劇みたい」
アカネの携帯が鳴る。
アカネ「ちょっと、ごめんね」
アカネが部屋の隅に行って、電話に出る。
アカネ「え?何ですか?急遽、明日?ナマハゲが、子供達と交流会?」
〇秋田市内の公園・昼
テロップ『秋田市・日曜日』
入口には『子供広場・ユルキャラと遊ぼう!』の、看板が置いてある。
子供達が四体の『ユルキャラ』のところに集まって遊んでいる。
公園の隅に、ミスナマハゲの三体が立ちつくしている。
アカネ「……この仕事、完全に数合わせだな」
ミドリ「こっちはユルキャラじゃねえ!ガチキャラだぞ!」
子供達が、うれしそうにユルキャラ達に抱きついている。
アオイ「それにしても、私達。子供にぜんっぜんっ人気ないね」
ミドリ「まあ、ナマハゲって、元々そういうものだから」
アカネ「ちくしょー。こうなることは初めっから、わかっていたんだ。あの秋田のハゲ担当め。しかも、こねーし」
黄色いゴムのボールが、ナマハゲ達の方に転がってくる。
アオイが、ボールを拾う。
アオイ「えいっ」
アオイが、ボールを投げ返してやる。
しかし、子供達がボールを無視して、ちらばるように逃げていく。
子供達「ワーッ」
アカネ「……き、嫌われている」
アオイが膝まづいて、泣き出す。
アオイ「あんまりだよー。これじゃあ、あんまりに、ナマハゲがかわいそうだよー」
アカネ「そうだよ。見た目がコワイだけで、心は傷つきやすい乙女なのに」
アカネとアオイが、膝まづいて抱き合い、泣きだす。
アカネ・アオイ「オーイオイオイ。オーイオイオイ」
ミドリ「オイオイ泣いてんじゃねえよ。子供の前で。みっともない」
ミドリが二人の後ろに立って、怒っている。
アカネ「そうだ。アオイちゃん。私が悪いナマハゲやるから、アオイちゃんは、良いナマハゲやってよ」
アオイ「そしたら、アカネちゃんはどうなるの?」
アカネ「……私は旅にでも出るよ。どっか遠くに」
アオイ「私、そういう話も、聞いたことあるー!」
ミドリ「ヒロスケ童話、やってんじゃねーよ!って言うか二人とも、いつの間にか、ナマハゲと、同化してんじゃねえよ!身も心も、ナマハゲ化してんじゃねえよ!」
アカネ・アオイ「ハッ!」
アカネとアオイが、顔を見合わせる。
(つづく)
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