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ノルウェイの森 を読んで


言わずと知れた名作、村上春樹のノルウェイの森を読んだ感想を書いていきたいと思います。

[高校生の頃の感想]
 初めて読んだのは高校生の時でした。正直に言って、性的なシーンが多いことに驚きました。
でもストーリーが面白いと感じ、どんどん読み進めていきました。都内で大学生活を送るワタナ君と、彼を取り巻く様々な人々。片思いの直子を思いながらも、ちょっとエキセントリックな緑に惹かれていくワタナべ君。直子の悲劇的な最期(直子にとっては悲劇ではないのかも)。
 ストーリー展開に夢中になって、主人公達の心の動きにはあまり注目していませんでした。

[今読んでみた感想]
 15年経っても時々読み返していますが、全く飽きません。

1 ワタナベ君の心の変化
 ワタナベ君は客観的に、クールに、世間とは一歩引いたような感じで生きています。直子との関係も近いようで遠いような感じです。
 しかし緑と出会うことで、ワタナベ君の生き方が少し変わります。緑を通して、現実世界との繋がりを持とうとしています。緑に振り回されて「やれやれ」となったりしますが。
 このワタナベ君の心の変化が面白いです。

2 人との別れ、喪失
 直子も緑も好きになってしまい、悩むワタナベ君。しかし、直子はワタナベ君のいる世界から、恋人のキズキのいる世界へと旅立ってしまいます。 
 直子だけではなく、東大生の先輩永沢さんやその恋人ハツミさん、直子との間を取り持ってくれたレイコさんとも離別するシーンが描かれています。人との別れ、喪失による切なさ、悲しみが、読んでいる側にも伝わってきます。
 ワタナベ君は直子の後を追うことはしません。緑とともに生きようとします(公衆電話から緑に電話をかけるシーンで物語は終わります)。何かを失いながらも、生きていかなくてはならない姿に、強い切なさを感じました。 
 話の冒頭でワタナベ君が飛行機に乗りながら、直子や過去のことを思い出して、苦しくなるシーンがあります。この時点で緑とはどうなったのかがはっきりと書かれていません。もし緑とも袂を分つようなことがあったとすれば、ワタナベ君はかなり大きな喪失を味わっているはずです。このことを、物語を読み終わってから感じたのですが、改めてワタナベ君の抱える喪失の深さに思いを馳せることになりました。

3 性的な描写について
 ワタナベ君にとって性的な行為は、相手の女性とのコミュニケーションの延長として、自然に行われることのように書かれています。自然に行われること、というのに驚きを感じないのは、自分が年を取ったからなのかもしれません。
 緑と仲直りした後の行為、直子のお葬式をした後のレイコさんとの行為のシーン、いいなと感じました。性欲を満たすだけの行為、直子のようにその後相手を喪失することにつながる行為ではなく、そこから前に進むための行為と感じたからかもしれません。

[終わりに]
15年経っても、飽きたり違和感を覚えたりせずに読むことができました。これからも、深く読み続けていきたいです。今後私も生きていく上で、様々な喪失を経験していくことになると思います。そんな時に、この小説により共感することになるのだろうか?と思います。

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