J1リーグ9節 清水vs浦和 簡易分析

過去の振り返りシリーズ第2弾。

今回は配置的な話を多めに。


清水4-4-2、浦和5-3-2。

開始直後は清水のボール保持に対して浦和は前で人数を合わせたプレス。

2トップは2CBへ、IHはCHへ、WBはSBへ、というようにボックス+SBの6人でビルドアップを行う清水に対して浦和は時間を奪う選択。

清水としては大きく空くDHの脇をどう使うかが鍵。SHが少し絞るのかFWが下りてくるのか。FWに入った北川がこの役割を担うことが多く見られた。

10分頃になると浦和は守り方を代えて5-4-1セットに。

2トップに入っていた武藤が右SHのようなポジション取りとなり5-4-1っぽくなる。ただし、左右で役割が異なるようで武藤は中央に下りるCHについていったり前向きの矢印が強めに見え、それに伴ってSB監視はそのままWBの縦スライド対応。一方でIHで入っていた左の長澤は中央を意識しつつもSBのエウシーニョに前進を許さないようなお仕事だった気がする。武藤サイドで圧縮をかけてバックパスを誘発できるとそのままGKまで寄せてマイボールにという守り方だったか。

でも少し時間がたつと前に出ていく役がエヴェルトンに変わって武藤はサイド守備者に。短い時間で守備形態を頻繁に変えているのはどういう意図だったのだろう。


対して浦和のボール保持

ビルドアップは3CB+DHとIHの出入りで行う。4~6人で流動的な形。

それに対して清水は4-4-2ブロックを組んでスペースを守る守備。ラインは比較的高めに設定されているが、前からプレスはかけずに相手の出方を伺って対応する。特に意識されていたのは2トップがDHの選手を監視すること。一人がCBにアタックに行ったらもう一人は必ずDHの選手をマークするように決まっていたように見えた。

噛み合わせ的に浦和が狙いたいのはWBのところ。清水4-4-2に対してWBは良い意味で半端な立ち位置になるため、誰が対応するのかが曖昧になりやすく清水のSH&SBに判断を迷わせたい。

14分頃のシーンではそのWBを使う攻撃の狙いが見られた。

FWの武藤が左SBの松原の前に立つことでWBへアプローチ出来ないようにする。もし、WBの森脇へ出てしまうとCBの鈴木から裏へ簡単に出されてしまうので安易には出ていけない。そうすることでWBの森脇のマークはいない状態に。鈴木にプレスをかけていた中村がプレスバックして対応するが、十分な時間を得ているWB森脇から逆サイドに張っていた左WBの山中へ展開といった攻撃。清水の守備システムを利用し、逆サイドまで届けられる森脇のキック精度が生かされた非常に良い狙いだったと思う。

途中から武藤が松原を引き付けるポジショニングを意識していて、森脇を浮かせる狙いがあったと思う。それに気づいていないのか清水左SHの中村は鈴木に寄せる。森脇の方がベースポジションが高いことと単純にキック精度があることから、状況見ながら鈴木を捨てる判断をしても良かったのかなと。

この後浦和は青木を最終ラインに落とした4バック化でのビルドアップに変更。4-4-2に近い形となる。かみ合わせがばっちりハマる形にあえて変えたわけだが、清水2トップの意識がアンカー位置に入る選手に向いていたことから変更したのかなと。

ダブルボランチのようになったIH長澤&エヴェルトンのどちらかが清水2トップの背後に下りることで中央での数的優位を作り出せる。清水2トップはアンカーへの意識が強いので、どちらかがアンカーを監視。そうするとCBの位置に入る2人のうちどちらかは浮く。2トップがアンカーを捨てれば外から経由してアンカー位置のIHを使える。中央で3対2を作ることで誰か1人は浮かせられる。その3人がマウリシオ・青木・長澤(orエヴェルトン)となれば配球もできる。そんな狙いだったかもしれない。


清水は浦和3バックを引き出してその裏を狙った攻撃、浦和はWBが浮くところからの展開で得点を狙うが、どちらも決定機という決定機は作れない。

他には武藤が自陣の守備までは戻ってこないので、その空くところに中村が待機しているという狙いもあったかも。

清水は北川、浦和は武藤が攻撃のキーマンになりそう。両者ともシステム的に空きやすいところに入る動きや浮く場所を作り出す動きが秀逸。ボール保持において周りを生かすことができる貴重な存在になっているように感じた。


後半に入ると4バック化をやめる浦和。清水は2トップで前から追っても4-4ブロックがついてこず、分断されることが多くなる。それに伴って浦和の中盤選手DH・IHからの展開が増える。ただし、清水の4-4ブロックも堅いのでそう簡単には破れず。特にヘナト・アウグストのカバー能力というかバランス感覚は抜群で埋めてほしいところにいてくれるし、前に出て奪うこともできる。この選手は外せないだろうなあと。

SHの献身的な守備とヘナトのバランス感覚で押し込まれても守れる清水だが、CBの立ち位置がやや不安定かなとも感じた。54分のシーンではSBが外につり出されたため、SB-CB間をヘナトが埋めていたのだが、なぜかCBのファン・ソッコも前に出てきたため、中央が手薄に。逆サイドのSHが絞ってきていたので、人数は足りたが、SHが大外に戻らなくても対応できるシーンだったと思う。


清水CBのところが気になったのだけど、浦和の先制点はCKの流れから。興梠シュートまでの一連の流れがスーパーだった。こぼれをマウリシオが押し込む。


前から行かざるを得なくなった清水は2トップのプレスに後ろがついていくようになる。ということで清水が持って浦和は守る展開になる。

浦和は武藤→汰木、長澤→柴戸でお仕事の多いポジションにフレッシュな選手を入れる。IHだとエヴェルトンの方がタスクは多い気がしたけど、消耗度的には長澤の方が大きかったのかな。

清水はドウグラス、楠神、滝と攻撃的な選手を入れる。それぞれ同ポジションの選手と交代で全体のバランスは変えない。

浦和は立田へのマークに誰が行くのかが少し曖昧になると後ろのマーク判断も遅れやすくなってピンチを招くこともあったが、最後には岩波で高さ対策もして結果的に完封。ラストプレーにPA内で事故が起きかけたがポストに助けられたところから逆に息の根を止める追加点を奪った。


多くの時間帯で清水がコントロールし、浦和が打開策を練るような試合だったように思うが、取るべきところで取れないとこうなってしまうのかなといった感想。サッカーは難しい。


選手個人の話をすると清水はヘナトは前述したとおり、守備での貢献度が非常に高いと感じた。どこかレオシルバっぽさのある選手。松原は利き足ではない右足でのクロスにチャレンジしていてチャンスメイクもできていたことは好材料ではないだろうか。

浦和は長澤のビルドアップ立ち位置が少し気になった。解説の戸田さんも触れていたが、低い位置に下りすぎてしまっていたように思う。ポゼッションの安定にはなるが、後ろが重くなってしまい、そこからの攻撃に繋がりにくくなっている印象。ビルドアップ時に槙野のところでもう少し違いを作れたら変わるのだろうか。ただ、長澤は球際のデュエルやトランジション時に強みを発揮できる選手なのでその部分に期待しての起用のはず。


最近のヨンソン(元)監督のコメントにあったようにフレイレの移籍はけっこう痛かったのかなと感じる部分もあった。統率力やコミュニケーションについては現場単位でしかわからないけど、その部分での懸念点はあるのかもと少しだけ感じた。


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