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「雨はコーラがのめない」

朝起きて、雨の匂いを感じたのはとても久しぶりだったように思う。

激しい夕立に見舞われる日もあったが、朝から雨を見るのは懐かしい。


わたしは雨が好きだ。雨に濡れるのも嫌いじゃない。



それはわたしの好きな作家、江國香織さんの飼っている犬の名が「雨」であることも、もしかしたら関係しているかもしれない。



22歳になるまであまり本を読んだことがなかったが、わたしが自分のことに精一杯で勝手にパンクしそうになっているのを友人が見かねて、本読んだみたら?と声をかけてくれた。それから友人の勧めてくれた小説や自分でいろいろ調べて大学の図書館の小説を読み漁っていた時に出会ったのが江國香織さんの「がらくた」であった。この本をきっかけにわたしは読書に没頭するようになった。


それからわたしは江國さんの本をたくさん読んだ。ぜんぶの本を読みつくすのが悲しくて、あえてまだ借りてない、買ってない本があるくらい、江國さんの本が好き。


江國さんの紡ぐ言葉が大好きで、彼女のエッセイ本もたくさん読んだ。「泣く大人」「泣かない子供」という本のタイトルだけでわたしの心は揺さぶられた。タイトルだけで感動した。


「雨はコーラがのめない」ももっとも好きな本のひとつだ。江國さんが「雨」と「音楽」について紡いでいる本。文字を読んでいるのに頭から音楽が流れる経験をしたのは初めてだった。図書館で借りて読んだのに、どうしても自分の「雨はコーラがのめない」が欲しくなって本屋に行って買った。


この本に出てくる音楽を、わたしは一曲も知らなかった。でもこの本から流れてくる音楽は美しくて切ないんだろうということはすぐにわかった。


シンプリ―・レッド「If you don't know me by now」


この曲をすぐに調べて聴いた。やっぱりとても好きだった。繰り返し何回も何回も聴いた。

「neverはどう考えても三度いる」という江國さんの言葉を思い出しながらこの曲を聴くと、わたしの隣にも「雨」がいるように思える。


わたしは英語をきいても言葉の意味がわからない。でもとても儚くて繊細なストーリーが心の中に流れる。わたしもこんな風に誰かを想ったり想われたりする日は来るのだろうか。寂しい歌なのかもしれないが、とても美しくて羨ましいと思う。



あれからもう5年も経つのに、今朝の雨はこの曲を思い出させた。

もう一度この曲をインストールしてジョギングにいこう。



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