馬蹄形の大屋根空間 牧野富太郎記念館(建築物語 #11)
今回は高知市にある、とても素敵な大屋根の建築を旅します。
「日本の植物分類学の父」と呼ばれる、牧野富太郎の功績をたたえて、その研究内容を保存、また植物を研究するための博物館です。
高知駅南口から、観光バスで30分でいけます。
以下、公式サイトです。
設計は、僕が(勝手に)敬愛してやまない、内藤廣さん。僕が人生で建築デザインというものに触れた「海の博物館」の設計者です。
内藤さんは、出世作の三重の「海の博物館」をはじめ、島根の「島根県芸術文化センター」、宮崎県の「日向市庁舎」など、公共建築を多く手掛けています。
同時に住宅も多く手掛けられており、公共空間ではダイナミックな構造表現をしつつも、住宅建築で培った細かな配慮が空間全体に行き届いている建築家さんです。
また、オリンピックの新国立競技場のコンペ審査員のひとりであることが記憶に新しいですね。
牧野富太郎記念館は、馬蹄のかたちをした2つの屋根で構成されています。
牧野博士の蔵書や遺品など牧野文庫をはじめ、図書室、ホール、講義室、アトリエ実習室や映像ホール本館と、展示館の2棟に分かれています。それらを、長い庇のあるデッキで施設同士を繋いでいます。
バス乗り場から森を抜け到達するアプローチ。低い大屋根が迎えてくれます。
屋根のある半屋外の本館エントランスです。軒の高さは、園内に豊かに植樹された植物よりも低く、建築と緑が共存関係にある空間になっています。植物学者の博物館らしい建築ですね。
構造は、柱・桁(奥行き方向の水平材)は鉄骨の丸パイプが使われています。ねじれに対応するため、角材ではなく、丸パイプが使われています。梁(奥行きに対して直行する水平材)は、木集成材が使われています。
木材と、鉄骨材同士がうまく力が伝達できるように、接続部には木部が金物でおおわれています。
切妻型の断面になっており、馬蹄形の内側と外側といった両側が、軒の高さが低くなるようにデザインされています。
アップダウンする、木集成材の梁、鉄パイプの柱・桁が流れるような空間を作っています。
本館と展示館を繋げるデッキです。ここでも軒桁と柱は鉄パイプが使われています。それらを繋ぐのは、木ルーバー材で、間接光が柔らかな光をデッキに伝えます。
ここでも植物がデッキを徐々に侵食してきているのが、良いですね。負ける建築?
階段ホールです。階段の機能のみならず、階段に座って、休憩したり、講義を聴いたりできるようになっています。こんなところで、内藤さんの建築解説が聞けたら、最高でしょうね。
屋根の向こうに見える、水平に切り取られた植物が美しいですね。
展示室は、フロアレベルが低く設定されており、天井の高い、構造表現豊かな空間となっています。
展示品も、牧野氏の植物の精緻なスケッチなど、見ごたえありますよ!
展示棟も、本館と同じような架構(構造部材の組み合わせ)となっています。ここでは、中庭の植物も展示品となっています。
水盤に映り込む植物と柱が、いい感じですね。オーバーフロー(水があふれること)したら石材の下の側溝に水が落ちる仕組みになっています。
建築空間に付随する外構計画ではなくて、外構もしっかり建築空間に取り込んでデザインされています。
雨どいから落ちた雨水は、植木鉢に落ち、植物の糧となります。こんな植物園ならではのディテールもあちらこちらに散見されます。
・・・
牧野富太郎記念館は、大屋根の有機的な構造表現が美しい建築でした。アップダウンする構造部材によって、流動的な空間が形成されています。
緑や外構が建築の内部まで入り込んできて、また屋根も低く抑えられ、植物と建築が1対1になっているような共存した風景が、懐かしくも新しい景色をつくりだしています。
雑談ですが、この施設がメインだった高知旅行でしたが、訪れる前日に飲みすぎて二日酔いになってしまいました。もう、高知のお酒はおいしくて 笑
酔い醒ましもあって午前からゆっくり歩きながら、この施設を堪能していたら、夕方までゆったりと過ごすことができました。
あ、ちなみにレストランで食べられるカレーライスは絶品です、昨今のゴタゴタが収まったら、ぜひぜひ出かけて欲しい建築です!
ぱなおとぱなこ
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