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不動産会社設計部というところ

(このnoteは一度3年前に書いてて、大きく更新をしています。)
僕は、都内の不動産会社の設計部に勤務している建築士です。30人くらいのちいさな事務所で、仕事がやりやすい規模なので風通しがよい。
そんななかで、不動産会社の設計部とは、その学びとは? をふりかえって考えてみました。仕事に特化した自己(自社)紹介みたいなものですので、気軽に読んでください。

1.一般的な不動産会社での設計業務との比較

多くのデベロッパーの設計部がやってることって、自社で仕入れた土地にどれだけ建てられるかというヴォリューム検討して、土地を購入するまでの業務です。建物を建てる場合は、設計事務所に外注して発注者の視点で建てるまで、建ててからを考えるプロジェクトマネジメントをする仕事です。

僕のいる設計部は、だいぶ毛色が違うよう。

ヴォリューム検討までは同じだけど、土地を購入して、自社で企画して、設計して、工事監理して、ときおり工事部門で施工もして、運営もします。文字通りワンストップで建築のプロデュースをします。全部の案件ではないですが、年間2~5ほど実際に設計して建てています。

文章にはさんで、ちょっとだけ弊社が手がけた案件載せていきます。


2.いわゆる設計事務所との比較

一方、設計事務所というところは、おおくの場合土地が用意されていて、すでに企画が用意されているところから設計がスタートします。例えば、”庭園の中にいるようなホテル”をつくってださい、といった具合に。

うちでは、「どんな建物を、どういうコンセプトでやるか」の企画会議に参加するところからが仕事です。「クライアント=会社」の目標を設定するところからはじまるので、企画力も鍛えられ、建物が完成した時に、設計事務所にはない1から10までかかわった達成感が得られます。

自社がクライアントだと言いましたが、ありがたくも外部から頼んでくる場合もあります。その時は、完全に設計事務所と化しますが、不動産で培った業務もお手伝いをしていきます。具体的には、権利関係の整理や、収支からの建築予算を管理していくことです。

外部クライアント様ご依頼 更生保護施設(2023)
旧施設の木の温もりを継承
更生保護のマークを壁面緑化用部材としてデザイン


3.だけじゃない設計業務(概要版)

ここに書くことは一つ一つ大事なことなので、それ自体が1記事にできる。ざっくり全体を把握してもらいたいので、要約版となっています。

ふだん、戸建住宅からマンション、ホテルやオフィス、商業を設計しています。

では、どんなものを自社開発しているか、を描いていきます。どこにでもありそうな効率を上げまくった建築やってるんでしょ、と言われます。

それは半分正解、半分ハズレです。

確かに敷地に建てられる床面積を最大にとるのは、デベロッパー案件においてはキソのキなので守ります。デベ案件に関わる建築家さんもみな守っています。けど、それ以外は自由、というか企画に合わせたデザインをしていきます。効率以外の快適性や使いやすさや美しさは一任されています。

むしろ、建築で他にはない新しい価値をつくることが会社からの要求なので、常に企画に対する建築のあり方から考えています。ここに、僕に対して会社からのニーズがあるのだけれど。建物はクライアントにとって莫大なお金をかけて、50年は建つのだから、これくらいでよいか、と安易に自己肯定してしまうような案件はひとつもありません。全部に魂を込める。

勤めてつくづく思いますが、設計の考えでは、建物の美しさは極められても、発注者の満足度は違うところにあるような気がして。ひとつのキーワードは実現力だなと。それには、施工・発注からも提案できるような設計者でありたい。

宮古島のビジネスホテル内外装改修(2022)
営業しながら価値をあげてく改修が課題



ほおっておくとただの効率的建築となってしまうので、企画にマッチした美しい建築ができるよう、一番発注者として大事な、予算・工程を設計側がむしろつかんでおかなくてはならない、と思っています。逆に言えば、予算・工程を管理・提案できれば、案件自体のクオリティも確保できる、ということ。これが私のミッション。

なので、徹底したコストコントロールをします。プロジェクトの節目に必ず概算をチェックし、必要あれば仕様変更や効率的な工法の提案し、予算に近づけます。企画自体が実現できないと意味がないため、必要あれば収支も協議して、予算をあげてもらうこともあります。ここも設計事務所と同じ。

要求に合わせて、工程も徹底して守ります。こちらの方が大事です。
家つくるときも、ビルつくるときも同じで、クライアントには建築を完成させたい大事な都合があるのです。生々しいですが、広報や、銀行融資、契約などさまざま事情があり、この大事な都合を無視する設計事務所や施工者を何度見たことか。たとえどれほど美しい建築をつくろうとしていようとも、発注側としてはむしろマイナスイメージなので。

ピンときた方はいると思いますが、自社で設計監理に加えて、発注者としての仕様検証、またコンストラクションマネジメントもしているというわけでして。建築というものをオールラウンドに考える必要があります。設計だけでは実現力に乏しいし、発注・施工だけでは企画の純度に欠けるような。。だから3者をミックスして考えて生み出すこと。

あ、でも不動産会社なので、営利だけを求めたどこにでもありそうな案件も少なからずやってます。こちらは、我々がかかわることはなく、インハウスではやらずに設計外注しています。難度の高い設計や、企画をつけたい案件に我々はかかわっています。

実は、僕は割と、一定の制約の中で設計することが好きでして、パズルをひも解いていく行為に似ていると感じています。そこに楽しさを感じます。

だけじゃなく、合わないピースがあったら、じゃあ新しくつくってしまえといったように、制約の中でいかに自由を見つけて建築に価値を見出していくかを考えています。普段の法律や要望という設計条件に加えて、遵守するルールが加わった、強化された条件下で設計しています。

そんな中で、自由を見出して空間をつくる設計業務を重ねています。そうすることで、自分の発想の引き出しはパンパンになるし、何より制約の中からキラリと光る建築が生まれそうな気がしてなりません。


耐震性の高い(耐震等級Ⅱ)の横浜市建売住宅(2024竣工)
スキップフロアと高天井で空間の豊かさを提供したい


ぱなおとぱなこ

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