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Bohemian view☆

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フォーは旅に出ました。
いつも旅に出ているのですが、今回は特別にとても遠いところへ行くことにしたのです。そこに行かないとできないことがあったからです。 


場所というものは特に大切ではありませんが、時として「場所」というものがとても大切になったりもします。それはつまりそこにあるエネルギーの問題で、私たちが誰か特別なエネルギーに会いたいと思うとき、特別な「移動」が必要になるのです。 


フォーはそこでだれに出会うか知りませんでした。
ただ、出会うということだけは知っていたのです。 


そしてそこで、フォーは自分のエネルギーをかき混ぜて、また違った形になろうとしていました。 


それが必要だからです。 


フォーは柔らかいブランケットとティーカップを持って出かけました。
大きな鳥に乗って、海を渡りました。 


新しい陸を何度か見て、やっと自分の行くべきところへ辿り着きました。 


良い屋根を見つけ、そこにブランケットを敷いて、寝床を作りました。 


そしてそこで、いつものようにぐるぐると回る毎日を過ごしました。 


そう、一番大切なのは、その場所でのぐるぐると回る回り方なのです。 


隙間だらけの点でいるか、美しい曲線を描く点の集合でいるか。
どのように過ごすかだけが、大切な問題なのです。

フォーは柔らかな曲線を描き、美しいダンスを踊るように

太陽と月と絡まりながら、転がりました。 


ゆっくりと緩やかに。 


そして時々早くなったりもしながら。 


その場所には美しい絵が出来上がりつつありました。

フォー自身はその直中にいたので、絵を見ることが出来ませんでしたが

自分が美しいものを描いていることは知っていました。 


そしてそれをみて人々が幸せになっていることも知っていました。 


フォーの描く曲線は、緑だったり、柔らかい水色だったりしました。
柔らかい水色は、時に紫に見えたり、ピンクに変わったりしました。 


そしてどの色も黄色く輝いていました。
そしてそのすべてが美しく優しいものでした。 


色の中に見えるのは、声だったり、響きだったりしました。
響きが伝えるのは愛だったり力だったりしました。 


そのすごくはっきりと曖昧な絵の中で、フォーは静かに待っていました。

そしてそれはやってきたのです。
とても明るい光を持って。

その光に出会う前、フォーはいくつかのエネルギーを助けたり支えたりしなければなりませんでした。
そういうことは時として、とても大切です。

フォーは迷っているエネルギーや弱いエネルギーを自分の絵の中に取り入れ、泳がせてやりました。 


かわいらしいエネルギーは、フォーの中で泳いでニコニコして離れていきました。
フォーは少し疲れましたが、絵は渋みを増して、よけいに美しくなりました。

そしてフォーの中を泳いだエネルギーは、時に大きなエネルギーを連れてきました。 そしてまた、そのエネルギーがとても大切なエネルギーを連れてきたのです。
フォーは笑ってそれを受け入れました。
ありがとうを言って。

大きなエネルギーは一つの鍵をくれました。
フォーはその鍵を使って、自分の足下にあるドアを開けてみました。
ドアは光ると、たくさんのエネルギーをくれました。
エネルギーはフォーを満たしました。

フォーは少し飛んで、遠いところの景色を楽しみました。今まで見えなかったものが見えました。

それはとても素敵なことでした。

これでフォーはまた少し、いつもよりたくさんの人に元気をあげられるようになったのです。

「大切なことはなんですか?」

フォーはそう問いかけました。
いろんな人に問いかけました。
その答えはみな違っていました。

恋をすることを大切にしていている人は、自分のものは何一つ手に入らず、

溺れているように見えました。しかし本人はそれに気づかず、目的の無い旅を、さも大きな目的があるように続けるのです。

ある人には仕事が一番大切でした。仕事が一番の生き甲斐でそれなしにはいきれませんでした。

友情が一番大切だという人もたくさんいました。彼らは仕事の中、遊びの中に友情を見つけ、それを大切に育みました。

ある人は快楽を一番大切にしました。とにかくそれを求めて、何か悲しいことを忘れようとしていました。彼らは泣くこと無く、毎日楽しそうに笑っていましたが。フォーにはその人の奥の方に少しずつたまっていく黒いものが怖くて仕方がありませんでした。 


ある人は指を大切だと言いました。指を使って音楽を奏でるし、ものを作るからです。だけれど、フォーにはその人が愛を求めていることがよくわかりました。
愛を求めて求めて埋まらないものを、ほかの何かで埋めていたのです。
フォーは彼をしっかりと抱きしめてやりました。

ある人はフォーが一番大切だと言いました。だけれども、フォーはそれも違うと思いました。
彼らはフォーの中の自由と愛を求めていたのです。

たくさんの人がたくさんのものを求めていました。

けれどもフォーにはわかっていました。
みながたった一つの同じものを求めていることを。

すべてがつながっていて、たくさんいるように見えるそれぞれの人ですら、たったひとつのいのちでしかないことを。

フォーは飛んで飛んでぐるりと回ってきて、もといたドアの前に戻ったときに、大きないのちに出会いました。

それはとても大きないのちでした。

大きないのちはフォーの中に入ってきました。
するりと。

そしてそれは同時にフォーが大きないのちの中に入っていったようでもありました。

つまりフォーと大きな流れが一つになったということ。

いずれこうなると、フォーは知っていました。

フォーはその流れの中で生き生きと動き始めました。
彼女はいつも大切なものを持って歩いていました。
それは本当の本当に大切なものでした。
しかし多くの人がそれは持っていなかったり、忘れていたりしました。

フォーは新しいいのちを作ろうとしていましたが、どうやったらその新しいいのちが、一人でも多くの人の宝物探しの役に立つだろうかと考えました。
新しいいのちは、それを生む過程の中にこそ大きなエネルギーが必要なのです。

彼女は自分がそれを作るのではなく、たくさんのいのちにそれを作らせることにしました。
フォーは小さないのちの前に現れては笑って回りました。
そして少しばかり問いかけをしました。
小さないのちは考えて、少し飛んで、揺れて、泣いて、自分のいのちの宝を並べました。

そしてフォーの作る大きな新しいいのちは少しずつ成長していきました。
そしてそれは小さないのちの成長でもありました。

そしてフォー自身の新しい仕事でもあったのです。

少しの人の変化はたくさんの人の変化につながりました。
世界は少し変化しました。

本当に小さな世界。
しかしその小さな世界を変化させたフォーはもう一つ大きな新しい世界へ行くことができるようになったのです。 


フォーは小さな世界の流れをうまく乗りこなし、多くの人の幸せを守り、そうして今、やっと大きな世界の一員となったのです。 


そこはとても良い眺めでした。
その波はとても大きかったので、小さな世界よりも乗りこなすことは難しいものでした。 


だけれども大きな波は彼女をより生き生きと活発にさせ、そして同時に慎重さと懸命さをもたらしました。 


とても大きな波の上で彼女は大きく深呼吸しました。
フォーは自分の流れてきた流れをゆったりと見やりました。
世界は虹色で、柔らかく渦を巻くようにうねっていました。

たくさんのいのちを巻き込みながら、流れは進んでいきました。 


時に雲が浮かび上がり、渦の周りを彩りました。
雲は美しく光るしずくを垂らし、多くのいのちを祝福しました。 

いのちはおのおのの色に輝き、流れを美しい虹色にしました。 

虹色の海も生まれました。 


海はあふれ、その光をさらに遠くに高いところへと届けました。

世界はとてもとてもとても美しい虹色をしていました。 


空も海もつながって。美しい虹色でした。 


フォーは軽く飛んで川までやってきました。 


大きな川です。川はたくさんの祈りを受け、神々しく寝そべっていました。

川の周りには多くの寺がありました。
寺にはたくさんの人が座っています。
座る人の心は静かに、井戸のように広がっていきます。
井戸のように。
そう、井戸のように潤すのです。
井戸の周りには美しい花が咲きます。
とても美しい花。
花は踊りを踊るでしょう。
絡まり合うように。

「どのいのちにも意味がある」

ちょっとした柵を飛び越えながら、フォーは歌いました。
同時にフォーは祈りました。
そしてフォーは大きな世界の流れの中で回りました。
踊りました。

世界は音を立てて動きます。
より強く、より鮮やかに。
大きく速く。

フォーは大きな世界を、大きく大きく飛び回るのです。

「あなたのたいせつなものはなに?」

フォーは そう言いながら飛び回りました。

皆がそれについて考え、大切なものを大切にし始めました。
大切なもの、大切なもの。

くるくる、くるくる。

フォーにとって大切なもの。
それは繋がることでした。 


たくさんの人と、世界と、そして自分自身と繋がること。

繋がれば繋がるほど、それは広がっていきました。
広がれば広がるほど、それは繋がっていきました。

「愛してる。」

フォーは歌いました。
フォーはいつも歌います。
泣きそうになりながら。
歌は揺れです。
彼女は揺れることが好きなのです。
揺れながら涙を流します。
とても嬉しいから。
愛していることと、愛されていることと両方。 


だけれども、彼女は自分がたくさんの人しか愛せないことに気づきます。
たくさんの愛すべき人がいて、たった一人だけを愛することが出来ないと。
自分の愛は多くの人に向けられるべきものだと。
そして少し寂しくなるのです。

ありがとう。もっと遠くに行きたい。行かなくてはならない。

まだ止まっては行けない。
彼女は揺れて回ります。 


そう、世界は踊りで出来ているのです。



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