「誰でも弁護士になれる」時代に弁護士になってて、とてもラッキーでした。
「弁護士です」と言うと一般的に「わー、スゴイですね」的な反応をいただくのですが、それに対していつも「アメリカでは誰でもなれるので、決してスゴクなんかありません」とお応えしてました。(謙遜でなく、かなり本気で)
日本の司法試験とは比べものにならない高い合格率なこともあって、どこに行っても必ず弁護士はいるし、希少価値は全然ありません。(弁護士の母数が日本より遥かに多い話は前回ノートで書きました。)
実際どのくらいの人数で、どんな合格率なのか改めて調べたところ、私にとって最大重要な結論は:
あの頃に弁護士になっておいて、本当によかった。私はなんてラッキーだったんだろう。
しかも「あの頃」どころか「あの年」(1994年)に特定して、ラッキーでした。くじ運とかには縁がない私ですが、ほかの形で運が強いのかもしれません。「運も実力のうち」というらしいので、実を伴った運であることを願うばかりです。(ただのラッキー人生じゃなくて)
ラッキーその①
1994年はアメリカ全国、司法試験の超当たり年だった。
ラッキーその②
1994年をピークに、合格率は毎年下がり続けている。(直近の2015年夏試験は「史上最悪の合格率」)
なので、これからは
「昔は頑張れば誰でもなれたんだけど、司法試験がどんどん難しくなって、ロースクール入学倍率もあがってて、狭き門になってきてます。なので、最近の若い弁護士さんの方が昔の世代より秀でた優秀な方が多いかも」
との返事に変えようと思います。
前置きが長くなりました。。。
まず弁護士がどれだけ多いか、の話。
「アメリカの弁護士」というのは実はなくて、弁護士資格は「州」でとります。(私の場合カリフォルニア州。)資格を受けた州の弁護士活動しかできないので、実はとても限定的な資格です。また、いくつかの「専門弁護士資格」もあって、それは別口で取得します。(たとえば最高裁判所の法廷に立つための特別資格、あるいは特許弁護士資格(これは州の弁護士資格から独立してとれる))。
数が多い(および米国外でも馴染みがある)のは圧倒的にNew York州とCalifornia州なのでその二つと日本を比較するとこんな感じ(2014年):
California州弁護士の数:163,327人 (対人口比:238人に人1人)
New York州弁護士の数:169,756人 (対人口比:116人に1人)
日本(全国)の弁護士の数:35,045人 (対人口比:約3,630人に1人)
「238人に1人」というのは大きめの学校なら「各学年に1人」との感覚でしょうか。日本もここ20年で倍以上の数に増えてますが(1995年に15,108人から2015年に36,415人)、まだ「3,630人に1人」というのは「学区域に1人」レベルかと思います。なので俄然、希少価値ありませね。
(元データおよびアメリカ全50州比較はこちらご覧下さい。日本のデータは日弁連のこのファイルからご覧下さい。蛇足ですが、日本の法曹界の女性比率の低さに驚愕を覚えました。)
次に、司法試験の話。
司法試験は各州ごと、夏(7月最後の週)と冬(2月最後の週)の同じ時期に行われます。学校年度が8/9月ー5/6月なので、年度終了後に行われる「夏の陣」がメインの試験になります。(2月は7月に落ちた、もしくは受け損ねた受験生が多いので、統計的には7月の方が重視されます。)
私もロースクールを卒業してすぐに、夏のカリフォルニア州司法試験を受けました。卒業から試験まで約2ヶ月、毎日「司法試験集中ゼミ」に通って試験問題を練習したり、試験テクを教わりました。ゼミへの往復の車の中でカリフォルニア州法だけの特別科目をオーディオ(当時はカセットテープ!)で聞き、とにかく詰め込み詰め込みで勉強しました。ロースクールの授業とは全く違う毛色の勉強で、日本の受験勉強のように単語カードを作ったり、暗記ペンを使ったりしました。当時は全て手書きだったので、筆記試験の練習の繰り返しでしっかりペンだこができてました。
そんな努力が報われて無事に合格した時は本当に本当に心から嬉しかったです。
そして20年後の今になってわかったことは。。。1994年の司法試験合格率が史上最高に高かったこと。努力が報われたというよりは運気に助けられた方が強かったかも知れません。
カリフォルニア州の過去30年の合格率の推移はAbove The Lawという弁護士業界サイトにまとまっています。
1994年 合格率63.2%
私がロースクールに入った頃、カリフォルニアはアメリカで一番難しい!と聞いていたのですが、確かに1994年以前はずっと50%台、そして1994年以降も(2008年の61.7%を除いて)ずっと50%台、もしくは50%を切る年もありました。そして2015年には最悪の 46.6%。
何の偶然か分かりませんが、New York州でも同じような合格率の推移で1994年が最高、 2015年は過去最悪でした。
1994年 78.7%
2015年 61%
New York Bar Exam合格率(2004年以降)はこの記事ご覧下さい。外国人受験者の増加影響についても解説しています。2004年以前のデータはこちら。
そして、アメリカ全国的に見ても1994年が合格率のピークだったことがふと見つけたこの資料でわかりました。(ここの5ページ目の棒グラフ、1981-2002年の全国の合格率をまとめています。
1994年っていったい何があった年なのか、不思議でなりません。
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最後に、カリフォルニア州で弁護士を目指す方に朗報です。
これまで3日間かかっていた試験が2日に短縮されるそうです。ほかの州は2日のところがほとんどですが、カリフォルニアだけ「マークシート方式の全国共通試験(1日)+ 筆記試験(1日)+ 実務試験(1日)」と分量が多いことから「最も難しいで賞」を自負してましたが、来年から筆記と実務の部分を合わせて1日にまとめるらしいです。
また、3年間のロースクール大学院教育(とそれにかかる膨大な授業料)を経た生徒たちが司法試験を通過できないのではロースクールの存在意義にも関わるので、司法試験合格率がここまで下がっているのは問題視される傾向にあります。なので、これからは「誰でも弁護士になれた1994年」の時代に少し戻る方向性かもしれません。
アメリカで司法試験目指しているみなさま、引き続きどうぞ頑張って下さい!
今日も読んでいただきありがとうございました。
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