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えんがわ日和#1 - おばあちゃんの旅行-

祖母が「本当に楽しかった。おばあちゃんは本当に幸せ者だよ。」と電話越しで何回も言うのを聞いて、電話してよかったと思った。
だけど、同時に「おばあちゃんがいなくなったらこの日の電話を何回も思い出すんだろうなぁ」とぽそっと思った。

先日祖母と9人の家族で旅行に行った。
きっかけは、叔父が「みんなで旅行に行こうよ。」と言ってくれたことだった。
祖父の1周忌がちょうど終わった頃で、介護生活で凝り固まっていた心が少しずつ解凍されていた。

認知症の祖父と日々暮らすだけで精一杯だったが、いなくなってしまうと
「もっと思い出作っておきたかったなぁ」と思いながら手元にある同じ思い出を何度も反芻して寂しさをやり過ごしていた。
そこにきた叔父の一言。同じ後悔はしたくないと思い話に乗ってみたら、思いがけず実現した。
5年に1度旅行するかどうかの私たち家族がスッと集まって実行に漕ぎ着けたのは、みんな同じ気持ちだったからだろうと思う。

祖母は電話の向こうから楽しかった道中のエピソードを何回も話す。
「私もその場にいて同じことを見ていたよ」と言いたくなる気持ちをぐっと抑える。
その代わりに「そうだね、楽しかったね。とっても笑ったね。」と返事をした。
祖母と楽しく話していると、何回でもあのみんなで旅行した日に戻れるのだ。
またみんなで旅行に行こうね。



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