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イスパニア日記②マドリード

マドリードは芸術の街。


マドリードを初めて訪れたのは4日目。以前からNHKの「世界ふれあい街歩き」でどんな街かは知っていたものの、もちろん初めての街はドキドキだった。

バルセロナ・サンツ駅からAVE(高速鉄道)でマドリードまでおよそ3時間弱。スピードも新幹線と似たようなレベルで、ちょうど東京から大阪まで乗った感じ。

マドリードでまず降り立ったのはアトーチャ駅。アトーチャ駅は主にスペイン南部や東部に向けて発着する長距離高速鉄道や近距離路線が乗り入れている。駅の規模はスペインでは1位2位を争う大きさでかなり大きい。もちろん単純な規模で言えば日本の新宿や池袋、東京の方が大きいけれど、日本の駅に比べてやたら面積が広く感じた。そして不便なことに入り口が少ない。日本だと少なくても二方向、多ければ蜘蛛の巣状に出口が伸びているが、スペインは違った。北側にしか出れないようになっているようで、少々不便に感じた。


アトーチャ駅外観。立派な駅舎。

私たちはアトーチャ駅の隣のホテルに泊まったのだが、これがなかなか曲者だった。ホテルは位置的には駅の隣だが、出口から割と遠いところにあり、重いケースを持ちながら20分ほど歩く羽目になった。ホテル自体は綺麗だったし朝ご飯のバイキングはソーセージが美味しかったので満足。
アトーチャ駅から20分も歩くと、閑静な住宅街になる。ホテルがあるのは、たくさんのマンションやアパート(集合住宅のことをスペインではpiso「ピソ」という)が並ぶ地域。
ゆえにご飯を食べるお店が少し歩かないとなかったのは少しだけ不便なところ。でも治安は良い感じだった。

次に泊まったのが、ラバピエスというところにある貸アパート。しかしこれはまずかった。設備は問題なかったが、所在地はマドリードの中では少し治安に問題のある地域で、行くときに住民たち(この人たち仕事してるのか?みたいな人たち)からジロジロと睨まれるようなところ。
後から調べて分かったことだが、マドリードの中では移民の多い地域で、治安に多少問題がある地域だった。宿泊地には行ったものの、危険を感じ取った我々は、安全重視の観点から、急きょ新しいホテルを中心部のソルに取り直した。
ラバピエスやアントン・マルティンという地域、行った時はあまり治安は良くないように感じたので、もしマドリードに泊まられる際は参考にされたい。
一方のソルは中心部で繁華街。デパートやショップが立ち並び、レストランも多い。夜はスリや詐欺に注意だが、対策してれば問題なし。ただし夜は暗く狭い路地は入らない方が無難。


マドリードは地下鉄がとても便利。1番線〜12番線まである世界でも有数の地下鉄ネットワークで、繁華街を中心に大抵の場所は地下鉄で行ける。乗り換えもスムーズ。一日二日だけ滞在する人はツーリストカード(バス地下鉄乗り放題切符)がお得だし、長期滞在で一日あたりの回数をそこまで乗らない人は乗る分だけチャージして乗るのがおすすめ。券売機での購入とチャージ方法が少し分かりにくいのがネック。空港と市街地の行き来も地下鉄が便利。(もちろん空港バスも出てます。)

マドリード地下鉄


さてマドリードの観光の話に行こう。

ソフィア王妃芸術センター

マドリードに3つある大きな美術館の一つ。(他二つのプラド美術館とティッセン美術館は留学日記の方で書く予定)
ソフィア王妃芸術センターはアトーチャ駅からも近く、アクセスは良い。
近代から現代の美術を豊富に収蔵しており、スペインを代表する近現代の芸術家ピカソやダリの絵画は必見。
作品は写真不可だったので、見どころの画家を説明する。僕の解釈を交えて解説するので、間違えてたらすみません。

パブロ・ピカソ
言わずと知れたスペインの偉大な芸術家。
彼の芸術家人生は大きく3期に分けられる。幼少期の写実的な時代。青年期に独創性を追求し始めたいわゆる「青の時代」、そして老年期に彼が完成させた「キュビズム」の時代。
彼が中心になって完成させたキュビズムとは、ある物体の形状を解体、さらに単純化抽象化し、再構成することでその物の本質を表現しようとする試み。
ある種あべこべな、歪に見える不気味な彼の絵は、その対象物の外的構造からあえて離脱させ解体して再構成することにより、本質を追求するものだ。(私見)
この美術館では「ゲルニカ」のほかにも「静物(死んだ小鳥)」など多くの作品が展示されている。青の時代の作品「青衣の女」も必見だ。
この美術館の目玉「ゲルニカ」は彼の老年期における代表的な作品だ。この巨大な作品は、彼が完成させたキュビズムの集大成でもあり、反戦の意思の表れでもあった。
「ゲルニカ」とはスペイン北部の町の名前である。スペイン内戦の最中、スペイン北部にある都市ゲルニカはフランコ将軍側と戦闘を繰り広げる勢力の本拠地の一つであった。そのためにフランコを援護したナチスドイツ軍によって、大規模な空爆を受けることになった。平和だった田舎町は地獄絵図へと変わり、焦土と化した。
絵を見てみよう。上に描かれるのは街に降り注ぎ炸裂する爆弾。下に描かれているのは生き絶えた人、また逃げ惑い憔悴する人々や動物たち、死んだ我が子を抱きしめ泣き叫ぶ母親などの群像。全体的に陰鬱とした不気味な黒のタッチで描かれたこの絵は、ピカソの気迫と怒り、悲しみを纏っている。
彼はスペインで生まれ育ったが、スペイン政治がフランコ独裁になってからは、結局祖国に足を踏み入れることはなかった。この絵はニューヨークの美術館に寄託されていたが、「スペインが民主国家になった時に『ゲルニカ』は祖国に戻してほしい」という彼の遺志により、フランコ独裁終結後にスペインの美術館に展示されることとなった。このエピソードからも、ピカソのこの作品への思い入れを感じることができる。

サルバドール・ダリ
こちらも世界的に有名な芸術家。彼はシュルレアリズムを描く画家の一人として世界に名を馳せた。日本では福島県の諸橋近代美術館が彼の作品を多く収蔵していることで有名。
シュルレアリズムとは、近代において流行したフロイトの精神分析などの当時最先端の科学や心理学の影響を受けつつ、物体や概念を現実離れした手法や構図で描くことによって、思考の真の動きを描き出そうとする芸術運動である。まるで悪夢のような不思議かつ不気味で超現実的な表現は、我々現代人を、自らの理性や先入観によって無意識に制限している心理的イメージから解放し、純粋な心理や内面を描き出そうとする試みである。
この美術館に収蔵されている「大自慰者」や「透明人間」などは、そういったシュルレアリズムに基づいて描かれたものだ。歪で不気味な作品は、性的に倒錯していたとも言われる変人の内面を描いている。理性や先入観と言った、無意識に絵画に対して持ってしまう枷を全て排除した作品は、やはり不気味だ。
彼の作品は他にも「窓辺の少女」などがある。窓辺に佇む少女の後ろ姿を描いたこの作品。こちらは前述の作品に比べると一般的な風景画、人物画にも見えるが、どこか不安を感じさせる色使いや構図に、シュルレアリズムの作風を見ることができる。

ジョアン・ミロ
こちらも著名なシュルレアリズムの画家。ただし彼の特徴は、上記のダリとは異なる手法のシュルレアリズムで、抽象画を彷彿とさせるようなタッチ。彼の手法は後世に多大な影響を与えた。
ここで見られるのは「パイプを咥えた男」「カタツムリ、女、花、星」など。

フアン・グリス
こちらはあまり有名ではないかもしれない。スペイン出身の画家で、彼もピカソと協調しキュビズムを完成させた画家の一人だ。
この美術館では「バイオリンとギター」や「海を前にしたギター」などが収蔵されている。


ソフィア王妃芸術センター廊下


マドリード鉄道博物館

スペイン国鉄(Renfe)が運営する博物館。デリシアス駅の旧駅舎をそのまま用いた博物館で、スペイン国鉄の歴史や技術、そして過去に使われていた多くの鉄道車両を展示する。3階には巨大なジオラマもあり、子供や鉄道好きはもちろん、旅好きなら楽しめる施設だと思う。
月に数回、雑貨のマーケットが開かれる。

旧駅舎にたくさんの古い列車が展示してある。
広軌だからか、車両のサイズが日本よりも大きく感じる


エルコルテ・イングレス

マドリードの中心繁華街(グラン・ビア)であるソル地区にあるデパート。マドリードには他にも数店舗ある。スペインのマドリード本店のみならず、スペインやポルトガル、南米などにも100以上の支店を持つ大規模デパート。
ここは旗艦店だけあって品揃えは抜群。食品、化粧品、衣料品など、お土産物は大抵ここで揃う。ここの惣菜、特にパエリアはとても美味しい。
日本食も置いてあるので、ホームシックの時はここで寿司や醤油を買おう。スーパーでも寿司は大抵置いてるけど、ここはやはりデパートだけあって寿司の質が高い。(サーモンとマグロしかないけど)醤油は日本のものなので、安心して食べられる。
ただし、ここのインスタント味噌汁はそんなに美味しくなかった。「日本製」の記述に騙されたが、出汁が効いてなくて美味しくなかった。

ここではお土産の話をしよう。
私がエルコルテのお土産で特にお気に入りなのは「イビザの塩」だ。バレアレス諸島のイビザ島で、古代にはフェニキア人によって紀元前から作られていた塩。それと同じ伝統製法で作られる自然派の塩。綺麗な結晶と上品な旨みが特徴。特にスペイン料理を作るときに重宝する。パッケージが水色の可愛いデザインなのも良い。(これはAmazonや楽天市場で普通に買える)
またオリーブオイルの品揃えも抜群で、種類が多すぎて困るほど。上質のオリーブオイルを比較的安価な価格帯から取り揃えているので、お土産に良い。スプレータイプは手頃な値段で軽い上に使い勝手が良いのでオススメ。(ただしめちゃくちゃ勢いよく出るので注意)
スペインのオリーブオイルは、日本でもよく食べられるイタリア産のようなコクのあるオイルとは異なる、あっさりとしていて、滑らかで舌触りの良い食感が特徴。
日本では通販でもなかなか手に入らないレアな物なので、スペインに行かれた際はぜひ買ってみよう。

マドリードのグルメ

マドリードはスペインの首都、ヨーロッパでも有数の大都市だけあって、食事には困らない。
今回は韓国料理、ガリシア料理、中華料理、ボカディージョ(サンドイッチ)やパエリアを食べた。
韓国料理はキムパ(韓国海苔巻き)は美味しかった。でもチゲ鍋は多分日本で食べる方が美味しかった。店の好みの問題かもしれない。店の女将さんが優しい雰囲気で良かった。ヨーロッパでアジア人に会うと安心感がある。

ガリシア料理は芋や魚介を使った料理が多め。
魚介のスープはめちゃくちゃ美味しかった。出汁は正義である。あと、ししとうみたいな小さいピーマンのフリットは美味しかった。ただめちゃくちゃ量が多かった。揚げたピーマンに塩をかけたシンプルな料理。結局こういうのが一番美味しかったりする。

中華料理は美味しかったけど少し割高。でもマドリードの中華は安いところが多い。米が恋しくなったら日本料理は高いので中華の方が良いかも。ただし米はインディカ米なので、日本の米が食べたい人は日本食レストランが良いかも。

ボカディージョは大きなフランスパンにトルティージャ(スペイン風オムレツ)を豪快に挟んだ一品。多かったけど美味しかった。

エルコルテ・イングレスの惣菜売り場で買ったサラダやパエリアは美味しかった。特にここのパエリアはスペイン人でも好きな人が多い。


スペインのサンドイッチ、ボカディージョ
トルティージャ(オムレツ)を挟んである。豪快である。
韓国料理。ヨーロッパに行くとアジアの味が無性に恋しくなる。


ピミエントス・フリトは日本で言う「ピーマンの素揚げ」
シンプルだけどうまい。ただ量が多すぎる。
魚介のスープ。ムール貝とエビが豪快に入っている。
シンプルながら出汁がよく効いていて美味しい。



次からは少し長いアンダルシア編。まずはグラナダへ。



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