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発熱外来における診療所薬剤師

現場感覚ではCOVID-19感染症とインフルエンザの同時流行、先週くらいから感染者の上昇(角度)が変わってきた感じがあります。
発熱外来での薬剤師として行っている薬剤調整をこの度振り返ってみました。

第10波?インフル、コロナのツインデミックその前に…日本は、高齢化×災害としての新興感染症でした。
全世界でみても、2020年からこれまで伸び続けていた平均寿命が1996年以来の短縮をおこしていました。そうみるとCOVID-19のインパクトはすさまじいです。

日本経済新聞社:平均寿命27か国以上で減少(2022/4/24)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC213LE0R20C22A4000000/

1.まず、いまのCOVID-19は

戦い方を手に入れた。
BBX系統→EG.5やBA.2.86→再びXBB系統と変異は行ったり来たり、これは繰り返していきそうですがこれは表側のスパイクタンパクが変異している。そのためスパイクタンパクをターゲットにしたモノクロナール抗体治療戦略はほぼ全滅しています。抗ウイルス薬の作用点には変わらないということで、現在人類が手に入れている手段は有効と考えています。
ワクチンについては、かなり多くの人の命を救ったことは間違いないと思います。ですが、現在は大多数の方が抗体低下していることが予想され、これから重症化の懸念があるのではないかと考えています。厚生労働省からの発表では8割程度ワクチン接種しているとのことですが、まだ2割がワクチンしていないということになります。
BA.5以降、オリジナル株に比較しどうも抗体が上がりにくいようです。免疫が誘導されなければワクチン戦略もなりたたない。

*発熱外来では、抗原検査(鼻腔咽頭ぬぐい)によりウイルスの有無を確認したら、ワクチン接種の有無や最終を確認します。

デジタル庁 新型コロナワクチンの接種状況

https://info.vrs.digital.go.jp/dashboard/

2.SARS-cov2にみる重症化

重症化リスクファクターを考えますが、冒頭に書いた「高齢化」があり、ファクターのひとつに「高齢者」があります。まあ、65歳以上を高齢者という時代も今だけかもしれませんが。

「COVID-19」感染症という病気を引き起こす病原体の名称は「SARS-CoV-2」とされ、試験管内(in vitro)でアンギオテンシンレセプターにて増殖することが認められています。血圧をあげようとする物質がこのレセプターを介することは良く知られており、血圧を下げる薬はこのレセプターをブロックするものもあります。アンギオテンシンレセプターは血管内皮に多く存在することが知られており、つまりSARS-CoV-2の動きとして肺では「表面よりも内側」血管の中、表面の下に行きたがるウイルスであることがうかがえます。血管病変や血栓につながるのはこの特性によるものと考えられています。
また、炎症性サイトカイン(インターフェロン)を誘導しにくいことも分かっており、熱がでないくせに重症化が水面で進んでしまう可能性もあるようです。ようです、と書かせていただきましたがもちろん私は研究者ではないので2次情報、気になる方はご自身で調べていただけると幸いです。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)として、肺の血管透過が進行した結果、血液中の成分が肺胞腔内に移動して肺水腫のような状態:つまり一般的な肺炎像とは違うということで、何が言いたいかといえば、発熱外来ではほぼ遭遇しませんが、熱だけでなく、指先で測る酸素飽和度も重要となってきます。

つまりは、いろいろなことが分かってきたため死亡率がかなり少なくなっているということが言いたい。「ほぼ」治療も確立したと言ってよさそう。
(参考 IDSA診療ガイドライン)
高齢の方はCOVID-19症状が軽くとも、その後に誤嚥性肺炎などのリスクも考えなければならない。
戦略として、抗ウイルス薬を入れるかどうかの選択:重症化リスク、遷延(Long covid)リスクがあり根源を叩くのは基本と言えば基本になります。しかし通常ではあり得ない速度で誕生した新薬たちであり歴史が浅いこと、また高価であり自己負担も安くないこと、そして「在庫している薬局が見えなくなった」ことの説明も必要となっています。

3.一方のインフルエンザは

2023-2024の流行をみると、H3N2が多く、A/H1pdm09も増えてきている、B型ウイルスも出ているのでまだ流行は続きそう…と、サーベイランスみると2019-2020と同様になっている。なんといっても今年の問題は、この2年半ほどインフルエンザの流行がなかったため、特に小児などは全く抗体がない状態。さらに、ピークが予想より遅かった!早めにワクチンを接種された方は抗体が下がっているかも。今年最大の難所となっています。
インフルエンザは+細菌感染が重症化のリスクファクターになっている。
誤嚥性肺炎など、COVIDと違ってバクテリアが繁殖する余地があるのが特徴で、抗ウイルス薬と、必要に応じて抗菌薬を使用することがあります。

薬剤調整依頼の実際は

前置きがながくなってしまいましたが、発熱外来において診療所での薬剤師(私)はどんなことをしているのかについて書き残しておきます。ただし、医療法、薬剤師法や療養担当規則に抵触しない、かつ薬剤師免許などでは守られていない「定義されていない」働き方であることを念頭に置いて読み進めていただければと思います。
1.医師+薬剤師→薬物療法
昨今の薬物療法はかなり複雑、多様化しています。幅広く薬物療法を使いこなそうと思ったならば、ぜひ「薬」を使用するのではなく「薬剤師」を使用していただくことをお勧めします。
発熱外来では診療後、医師から病状や注意点(依頼)としてオーダリングがきます。
ポイントとしては、①妊娠(妊娠の可能性)や、授乳があるか、②既往や原疾患に影響する薬はないか、③併用している薬とその服薬状況はどうか、④腎機能(肝機能)はどうか、⑤そして、薬局で供給可能な医薬品かどうかが付け加わりました。もちろんそれ以外にも、副作用歴やアレルギー、生活リスムや環境、キャラクターなども加味しながら薬剤選択、提案をしていくわけです。⑤については、かかりつけ薬局を確認し(なければ行けそうな薬局)連絡して、在庫確認する作業まで入ってきます。これを、一人の医師や指示をうけた看護師がやるか(やれるか)を考えたときには難しいのではないかと思っています。
発熱外来では、症状が厳しい場合、また使用したい医薬品が薬局になかった場合に「院内調剤」で対応することもあるハイブリッド薬剤師として現在対応しています。

おわりに

今回は発熱外来だけのお話ですが、保険薬局で働く薬剤師、病院、病棟で働く薬剤師とは少し違った立場で働いておりニーズと同時に自分が提供できる価値を探しながら日々奮闘しています。
自身の記録を兼ねての発信ですので、いろいろと甘いところあります。どうかご容赦ください~


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