「人にやさしいままでいたい」第5話
伊藤藍は高校時代に向進一と参加した合コンのことを思い出していた。
あの合コンは苦くて苦しい思い出だ。カラオケで何を血迷ってかマキシマムザホルモンの「爪爪爪」を歌ってしまったのだ。ドラムもピアノもギターもできる、自分は音楽に精通しているんだってことを女子にアピールしたかったんだと思う。でもカラオケには楽器はなかったから、何かできないかと思って、奥の手のデスボイスを披露したのだ。それが失敗だった。現場は失笑に包まれた。自ら未来を破壊してしまったのだ。
「おまたせー」
緊張