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思い出

母は認知症になってから思い出の中に生きているのかなと思う時があります。子供の頃に育った場所に帰りたいとたまに言います。もう母の育った家もないんですがそれを聞くと切なくなります。夜中部屋のドアを叩くので「どうしたの?」と聞くと「お母さんがいないんだけど、まだ帰ってきてないのかな」と子供のように私に聞くんです。私は(お母さんって、おばあちゃんの事かな?)と考えて「お母さん!じいちゃんもばあちゃんもとっくにお墓のなかだよ」と返すと母は泣きそうな顔で「そうなの?」と聞き返しできます。「お母さんは今88歳なんだよ!ばあちゃんが生きてたら110歳越えてるよ!」と言うとふと我に返ったように「そうだったね。なんでそんな風に思っちゃったんだろう」とへこんでしまいます。「きっとお墓参りにいってないから気になってるんだよ。近いうちに行こうね。」って言うと「そうだね。行こうね!」と笑顔になって落ち着きます。きっと母は思い出の中にたまに行ってしまうのかなと思います。

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