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自由な生き方って何だろう|ドラマ「悪女(わる)」を観た感想

アラフォーの私が新卒生として働いていたのは約20年前のこと。「発光ダイオード世代」などと言われ「電気を通す(指導すれば)と、きれいに光る(いい仕事をする)けど、決して熱くはならない」と揶揄されたが、これもまた時代を象徴していたわけで。

さて今回ご紹介するのは
「悪女(わる)〜働くのがカッコわるいなんて誰が言った?〜」
2023年日テレから今田美桜主演で放送された作品で、令和の働く人々に焦点を当てたヒューマンドラマだ。
実は1992年にもドラマが作成されており、令和版には当時の主演・石田ひかりが主要キャラとしてキャスティングされたことが話題になった。

あらすじ

大手IT企業にコロナ2年目の新卒生として入社した今田美桜演じる山田麻里鈴(まりりん)は、超ポンコツだかスーパーポジティブ社員。
姥捨山と言われている地下の備品管理課に配属されるも、元スーパー社員・峰岸(江口のりこ)の指導のもと、規格外の出世を目指す。

みどころ

このドラマの見どころは、様々な立場の女性社員が登場すること。
・コロナ年新卒入社。いまだに会社に馴染めない2年目社員
・スキルはあるが男性社員に遠慮するエンジニア社員
・仕事は生活のためと割り切る省エネ節約社員
・時短で肩身が狭いワーママ社員
・男性と肩を並べて出世したアラフィフ・バリキャリ社員
・女性活躍の象徴として花形部署の課長に大抜擢された海外帰りのイケイケ社員
などなど…

男女は平等になったけど…

男女雇用機会均等法の施行から約40年。
確かに就活で明ら様に女性差別をする企業もなくなったし、女性管理職ももはや目新しくも何ともないが、男性と全く同じように働けているかといったら否!何だかんだ家事・育児はやっぱり女性中心だし、キャリアの為に家庭を犠牲にしているケースは多い。

しかしあれもこれも理解のない夫や上司や同僚など男性のせいかといったら、このドラマではそれも否!と提言。

男だって生きづらい

鈴木伸之演じる営業部のエース・小野忠は、分かりやすいスポ根社員。本人に悪気はないが「女はこういうもの」という考えが随所に現れる。メンバーのランチも気前よく奢るのだが「大して感謝もされない。つくづく男は損な時代だよ」とぼやく。

女性管理職推進プロジェクトのため、シリコンバレー帰りの敏腕女性社員が営業部の課長に大抜擢。しかし次期課長と補佐を務めていた男性社員に無視をされ、イジメに合う。ここで主人公のマリリンが問題解決へと奮闘するのだが、男性社員が吐露したのは「男は仕事ができて当たり前」という世間の価値観や、夫や父親としてのプレッシャーだった。

社会的に優位である代わりに命懸けのプレッシャーを強いられてきた男性たち。男女平等というならば、女性が女性らしさを求められないのと同じく男性にも男性らしさを求めてはいけない。自由とは一人ひとりが自立した考えをもち、「一般的には」や「普通は」といったアベレージに頼る思考が許されない、最も高度な生き方だ。

ジェネレーションギャップだって

このドラマは世代間ギャップもテーマに取り上げる。マリリンも2年目になり、高橋文哉演じる山瀬くんという後輩社員が登場。正直この山瀬くんはマリリンよりもはるかに仕事ができるww。そんな山瀬くん、毎回クライアントの自慢話ばかりで終わってしまう商談にしびれを切らし、先輩の小野忠不在中に一方的なプレゼンをし、取引先に大目玉をくらうというシーンがある。

実績もない頭でっかちな新入社員が先走った失敗談なのだが、物語はそれで終わらない。彼らは「失敗や無駄が許されない」と常にタイパ・コスパで最短ルートを求められる時代を生きてきた象徴。そんな時代を創った大人が「今の若者は~」なんて言うのは無責任だとドラマは投げかけている。

昭和から平成、そして令和へ…

昭和は「24時間働けますか?」が父親たちの応援歌で、セクハラ・パワハラは当たり前。平成は何でもかんでも自己責任。大した対価も得られないのに個人が必要以上に責められる時代だった。そして令和。その歪みが一気に露呈し、個人が最も尊重されはじめている。

ジェンダー、ジェネレーションなどあらゆる差別がおかしいという価値観は良いことだが、失敗が許されない生きづらさもある。まだまだ創世記で問題も山積みだ。

ただ私は高度なこの時代をうまく受け入れたいと思う。頭は固くなり、挑戦は億劫だが、この難局を乗り切った先は限りなく明るい。考えても見れば、日本は少子化で人口減少まっしぐら。あれやこれやと難癖つけて人を切ってる場合じゃない。自分の中の「普通は~」を取っ払い、どんな未来を生きたいのか素直に考えてみたい。


『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?』(日テレ 2022/4)
出演:今田美桜/江口のりこ/鈴木伸之/高橋文哉/向井理
脚本:後藤法子/松島瑠璃子
演出:南雲聖一/内田秀実/山田信義
プロデューサー:諸田景子/小田玲奈/大塚英治/平井十和子

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