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就活生に求められるものとは|ドラマ『わたしの一番最悪なともだち』

本日ご紹介する名セリフはドラマ『わたしの一番最悪なともだち』から。

就活中の主人公・笠松ほたるが最終面接で受けた質問「朝起きて最初にすることは?」に対する回答を取り上げてみました~。

私は、私は朝起きたらまずスマホを見ます。
何か知りたいことがあるわけでも何でもなくて、ただスマホを見ます。多分、自分だけが知らないことがあるのが怖いからです。

それで、もうすぐ始まるドラマに誰が出るとか、今、誰が炎上しているとかそういうことを知ったら、今日も世界こんな感じかーと思ってベットから出ます。

<中略>

メイクが終わったら持ち運び用のケースに必要なものを入れるんですけど、毎回なんだかんだいってパンパンになってしまうのがなんか自分っぽくて嫌だなーと思っています。

これが私の朝です。
何の変哲もない朝です。
つまらない朝です。
大学に入って1人暮らしを始めてからずっとこんな感じの朝でした。

でも就活が始まるってなって、自分がどんな会社に入って何をしたいか考えた時にヒントになったのがこの朝だった気がします。

自分の日常を支えるモノ。
化粧水、乳液、コスメ。
そういったものをつくる会社に携わりたいと思ったのは本当です。

NHK『わたしの一番最悪なともだち』第13回

ドラマの紹介

『わたしの一番最悪なともだち』は2023年8月からNHKの夜ドラで毎週月曜~木曜に放送された15分ドラマ。

主人公・笠松ほたるの就活編と社会人編の2部構成になっており、2023年10月期のギャラクシー賞月間賞を受賞している。

主人公・笠松ほたるにはドラマ初主演の蒔田彩珠(あじゅ)、主人公の天敵・美晴役に髙石あかり、気の許せる大学の同級生役に倉悠貴など新進気鋭の若手俳優が勢ぞろい。3人をそっと見守るクリーニング屋の店長に市川実日子が起用されている。

あらすじ

就職活動に大苦戦中の大学4年生・笠松ほたるには小中高大が同じで今も家が近くの鍵谷美晴(かぎやみはる)という天敵がいる。いつもスポットライトを浴び、人気者の美晴が鼻に付くほたる。

しかしそんな美晴のキャラで自分を偽り、エントリーシートを提出したら通ってしまった。その後の面接も次々に合格してしまい……というのが大まかなストーリー。

冒頭のセリフは……

美晴の人気者キャラを見事に演じ切り、順調に最終面接まで登り詰めたほたるだが、面接官に「我々に『自分』をこう見せようと思う部分はよく見えるが、そうじゃないあなたが見えてこない」と言われ、言葉に詰まる。

重苦しい雰囲気の中、最後の質問として「朝、最初にすること」を聞かれ、ほたるは初めて自分の言葉で自分自身のことを語る。そんな4分弱にも及ぶ独白シーンが冒頭のセリフだ。

スポットライトもなく、人気者でもない。普遍的でつまらない日常を語り、そこに本音を見出す重要なシーンである。


新卒採用は人生で一番キツい…

生きていると、受験、転職など世間に評価される機会は何度かあるが、新卒の就活ほどキツイものはないと思う。

自分の経験上、転職はまずこれまでの実績。そこに人間性が評価される。受験はとにもかくにも点数だしね…。だから、ダメでも言い訳ができるわけ。自分のプライドを守ることができる。でも新卒の就職活動って人間性100%。
いや、これがもう本当にキツい……。

『素の自分を見せて』
『弱みと強みは表裏一体だよ』
『就活は自分を見つめなおす良い機会だよ』
……なんて言うけど、結局は大人が用意した「あるべき姿」にうまいことハメれた人が勝ち。

それに当てはまらん奴は
『素の自分』なんて求められてへんし
『弱み』は弱みのママやし
『自分を見つめなおした』とて……
なんてことを15年ほど前の私は思てました……

主人公の笠松ほたるは、面接で語る自己PRに薄っぺらさを感じながら、ありきたりな言葉で自分の人生を語っては、お祈りメールを貰う日々。

しかし「なりたい自分」であった美晴のキャラで面接が受かりだすと、喜びとともに、本来の自分とのギャップに悩み、それは社会人になってからもシコリを残す。


就活生に求められるものとは

新卒一括採用は日本独自のもので、就活期間の長期化など批判もある一方で、実績がなければ採用すらされない海外と比べると未経験でもチャンスが与えられる素晴らしさもある。

アラフォーおばさんの私が思うに、実績も何もない新卒就活生たちが一番見られているポイントは『何を求められているのか』を察知し、行動する能力で、それが『自己PR』をきっちりPRすることなのではないかと思う。

この先進む社会では、お客様が、上司が、一緒に働く仲間が『何を求めているのか』の先にしかチャンスはない。そのことに気づいていますか?の最初のテストが就活なのではないかと思う。

「自己PR」は、その会社の都合に合う人物かをジャッジされ、それが何かに気付かず、偶然マッチして内定を勝ち取る子もいるけど、内定を何個もとっちゃう子はいち早く気付いて合わせにいってるよね。

私なんかひねくれているから、そんな奴を薄っぺらい人間とか思ってたけど、15年経った今では「いや、それくらい合わせに行けよ」って過去の自分に思ってしまう。そういう人たちって薄っぺらくなんかない。だってそこに気付けるって視点が外側にあるから。

ほたるの天敵・鍵谷美晴は「誰が、何を求めているのか」をいつも考えている。だから人気者になるし、スポットライトも当たる。私なんていつも「自分がどう見られているか」しか考えていなかった…。

ほたるは、バイトでも何でも真面目に取り組んだし、責任感もあるし、良い子なんだよ、本当に……。でも視点が思いっきり内向き。

美晴になりきることで就活がうまくいきだしたのは、美晴が人気者だからではなく、この視点の違いを美晴というキャラを通してPRすることができたからではないかと思う。

つまりこの「相手が何を求めているのか?」の外向きの視点があれば、別にほたるのままでも充分に乗り切ることができたのだ…。


全ての就活生にエールを!

内定が出ない日々は、まるで自分が全否定されているかのようで辛く過酷な毎日だ。

でもその人の価値は、就活なんかでは測れない。そう思えないかもしれないけど、決して人間性が否定されるべきではない。もしそんな会社があったら、こっちから願い下げだ。

現在の就活戦争の過酷さは、本来なら働いてからが勝負なのに、これじゃスタートラインに立つ前にヘトヘトやん…と気の毒に思ってしまう。

でもアラフォーおばさんからしたら、20代前半の君たちはまだまだ何だってできるじゃないとも思う。

別に内定をとるだけが正解だとは思わない。でも全ての就活生が自分なりのゴールを掴みとれるよう願わずにはいられない。


『わたしの一番最悪なともだち』(NHK 2023/8)
出演:蒔田彩珠/髙石あかり/高杉真宙/倉悠貴/サーヤ/久間田琳加/井頭愛海/紺野まひる/マギー/倉科カナ/原田泰造/市川実日子
脚本:兵藤るり 協力:吹野剛史
演出:橋爪紳一朗/小谷高義/工藤隆史
制作統括:陸田元一/櫻井賢
プロデューサー:押田友太


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