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小説「風の華」序章(2)

 制服の男女は、あきらかに潤と翠だった。
(どうしてふたりで歩いているんだろう)
 華は、その出来事を、まるで別の世界を眺めているような気持ちでいた。けれども、心の中では、もう一人の華が、どこか途方に暮れた姿で立ち尽くしていた。
(いやだな)
 華は、自分のなかに、明らかな嫌悪感が生まれつつあるのを感じた。嫌悪感は、制服の男女に対してなのか、華自身の心の惑いに対してなのかわからなかった。
 はっきりしない、自分の感情の扱い方を探るように、華はアイスティのカップに手をのばした。すると、アイスティは華の心を代弁するかのように、指先から滑り落ちてしまった。
 鈍く、がさついた音を響かせて、カップの中身が床に広がった。


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