銀河鉄道999 1巻 第8話 そして騙された男・・
「暗黒星メフィストの黒騎士」
停車駅 メフィスト
今回読み進めて気が付きました。前回は詐欺が横行する世界「彗星の巣」でしたが、今回は実際にだまされた男の末路が描かれていました!
このエピソードは前回と対になっています。おそらく松本氏は自分もしくは知人にそのような目にあった人がいたのではないでしょうか。
今回の停車駅は銀河鉄道でもめずらしい個人私有の星。しかも本人がそう主張しているだけの星。なんと銀河鉄道の駅を騙されて買った黒騎士という男が自分の星だと主張し続けているというのです。
ややこしいのでこの駅には絶対降りないでと言われていた鉄郎ですが、不幸な事に列車から落ちてしまいます。近くで様子を伺っていたのでしょう、すぐに黒マントに身を包んだ黒騎士があらわれ、鉄郎を襲います。そして助けようとしたメーテルは黒騎士の槍に串刺しにしてしまいました。物語を盛り上げるためとはいえ串刺しはさすがにこれはやりすぎです。しかし、殺人さえもいとわないくらい黒騎士の世の中への怒りが深いという事がわかります。
ここまで読み進めれば、みんなそれほど心配していないと思いますが、もちろんメーテルは助かります。メーテルは串刺しになりながら謎の声と対話します。この声は劇中で何度か登場しますが、そのたびにメーテルを救う事になっていくのです。
黒騎士の境遇を見ていると「ぬけだせない貧困」のイメージを連想してしまいますね。現代でもこのような思いをしている人は多いでしょう。そして自分の境遇を「自分のせいだ」と思っている人と「騙された」と思っている人に分けると黒騎士は後者になるでしょう。そんな人たちが手元に残った数少ないものにとてつもない執着を見せるのはよくわかります。お金がなく粗悪品の機械の体しか買えず、その体を見られるのがいやでヤミで暗黒星を買ったがそこでも騙された黒騎士の人生はどんなものだったのでしょうか。
「銀河鉄道株式会社も地球政府も植民星管理局も・・だれもみとめてくれないが・・おれはヤミ屋に金を支払った!! だからこの星はおれの星だ むだんで降りるやつは生かしてはおかない」
メーテルを殺されたと思っている鉄郎は戦士の銃を手にして黒騎士を撃ちました。そこでマントが剥がれ黒騎士の無残な機械の体があらわとなります。つぎはぎだらけでところどころ缶詰を使っている黒騎士の体、それがくじらの缶詰なところに時代を感じますね。
ここでも鉄郎は黒騎士から機械の体を否定する言葉を耳にします。
「機械の体といってもいろいろあるんだぜ よくおれの残がいを見て考えろよ」
そこでメーテルは何喰わぬ顔で無事登場します。メーテルが無事だったら撃たなきゃよかったと言う鉄郎。自分も貧乏のつらさはよくわかっています。人に騙されたこともあるのでしょう。
今回は鉄郎が黒騎士に対して深い同情をもって終わります。黒騎士を犯罪者として処断するのはとても簡単です。しかしそれ以上問題を追及しない社会では第二、第三の黒騎士が現れるだけでしょう。こんな境遇にいる人たちに本当に必要なのは鉄郎のような人なのかもしれません。
「黒騎士の星は孤独な星・・・身も心も傷ついた男がひとりすんでいた暗黒の星・・そして 身も心も傷ついた男が永遠の眠りについたなにも見えない星・・」