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不朽の名著であり、いまでも有用な科学の教科書

『セルボーンの博物誌』の存在をはじめて知ったのは、ジェームズ・ラヴロック著『ノヴァセン』を読んだことがきっかけでした。ラヴロックの説明を引用します。

" 人類がどれだけ遠くに来たのかを知るには、ギルバート・ホワイトの著書『セルボーンの博物誌』を読んでみてほしい。ホワイトはハンプシャー州セルボーンの副牧師だった。天才的な観察者にして、作家であり、ツバメがその嘴で蠅を捕まえる音を「時計ケースの蓋を閉める音のようだ」と書いている。アントロポセンの威力が明白になる前の1789年に刊行された本書は、物事が急速に移り変わっていくのが当たり前になったこの新しい世界以前がどんなだったかを知りたい向きには必読書だ。ホワイトは博識家で科学者だった。....
彼の著書は自然界の見事な観察であると同時に、いまも有用な科学の教科書でもある。" (p.59より)

この本は、「ファーブルやダーウィンを先導し、たとえ英国は滅びても本書は不朽と讃えられた名著」(本書より)で、文学的に豊かなエッセイです。

この世界は人新世以前からどう変わってしまったのか。失われゆく自然と私たちはどう向き合えばいいのか。思うのは、まず自然の儚さや繊細さ、美しさを肌で感じる体験を日常的にしてみることの大切さです。

本書をすすめたいのは自然の喪失に関心のあるあらゆる人々です。この本は読了してすぐに売るような本ではないと断言できます。人生をかけて座右とする本だと思います。少なくとも私はそうしたい。

アントロポセンを生み出したのはラヴロックが構築したガイア理論でもあります。ガイアなくしてはアントロポセンという概念も生まれなかった。その意味で、本書と『ノヴァセン』セットで読むとたのしいと思います。

都内の自然公園があるのですが、その一帯は古来禁猟地で、鳥類の楽園だったそうです。しかし近年は野鳥が激減しています。人新世は案外身近なところで感じられるのかもしれません。

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