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親を亡くした子と関わるとき

ココオル代表(丸田勝也)の中学校の同級生「ゆきわ」です。

サッカー部で、不良らしいと噂されていた丸い丸田くんが、大学生になって、顎がシャープなビジュアル系塾講師に変貌を遂げるなんて誰が想像できただろうか。神ですら無理なレベルだ。「どこが丸田やねん!」そう思わずにはいられない。丸い目だけがそのままの丸田くんでした。

そして神は、丸田くんがリーダーになることはわかっていたでしょう。

でもそれは地元で○○○○水産とか、そういう店長とか工場長とか、体格は中学生の頃みたいな感じでカンロクたっぷりのおっちゃんになるだろうと。

それがどうだ。上京して、身体は筋トレで鍛え上げて年齢不詳、ココオルなんてオシャレな名称のデジタル系バリバリのリーダーになっている。

前置きは以上で、ここからが真面目な本題です。

ひとり親家庭の中高生の支援


いつもリーダーとして、やりたいことのビジョンやパッションが溢れている丸田くん。

ある時は、ひとり親家庭の中高生を支援したいという話をしていました。

他のココオル仲間(中学生の頃に母親を亡くしている)からは「ひとり親の中でも、父親/母親、離婚/死別などで異なってくる気はしている」との意見。

私のほうでは、自分が読んでいる専門誌で何か参考になる記事はないかと探していたところ、3年前のバックナンバーから「死別」に関する記事を見つけました。

以下、その記事からの引用を中心に話を進めていきます。

死別とストレス


死別は誰もが経験することですが、人生におけるストレスの程度が最も高い出来事で、強いストレスは心身に影響を及ぼすことから、死別によって様々な精神・身体症状が生じてもおかしくありません。

例として、死亡率上昇、うつ病罹患率および自殺率の上昇が知られています。なので、遺族に対するケア(ここでは子ども)が欠かせません。

子どもの死の捉え方は大人と異なる面があります。まず、保護者が子どもに対し、死の事実をどのように話しているかで子どもの捉え方が変わります。なので、可能であれば、子どもにどのように話しているか、保護者から前もって聞いておくのも参考になると考えられます。

また、子どもの死の捉え方は年齢によって異なりますし、個人差もあります。なので、ケアを行う際には子どもが親の死をどのように捉えているのか、子どもとの会話や質問を通して知るのが良いと考えられます。

援助を行うときの基本的事項としては、次の2つのことを念頭に置きます。

●人には死別後の世界に適応する力がある
●どのような状況でも人には成長の可能性がある

子どもは困難に耐えうる力があります。例として、死別を経験した子どもを継続して観察した調査で、うつ病の罹患率は死別と関係ないことが示されています。子どもはつらいことがあっても、それを将来まで引きずらないことの現れです。

とはいえ、前述のように、死別というのはストレスの程度が高い出来事で、あまりにもショックが大きい場合や、これとは別のストレスも重なると、様々な精神・身体症状、最悪の場合は自殺のリスクも高まることが心配されます。

TALKの原則

私は以前「子どもを自殺から守るためにはどうすればいいか?」および「大衆的ではないピュアな子をいかに守るか」というnoteで、死にたい気持ち(希死念慮)があるかどうかわからないときに使われる手法として「TALKの原則」を紹介しました(出典:月刊『健』2021年5月号 特集 子どものメンタルヘルス 〜コロナ禍以前の問題とコロナ禍で起きたこと〜)。

Tell … 言葉に出して心配していることを伝える
Ask …「死にたい」気持ちについて率直に尋ねる
Listen … 相手の気持ちを傾聴する
Keep safe … 安全を確保する

前述のnoteではTellとAskとKeep safeについて述べました。

遺族の援助にあたってもTellは大切で、“常にあなたを見守っている”という有形、無形の意思表示をすることで、子どもは安心感を得ることができます。

また、話を聴くことは最も大切なことなので、今回はListenについて紹介します。

受容傾聴の態度

前述の出典で、受容傾聴(Listen)の態度として、5つのポイントが挙げられていました。

●ジャッジしない
●アドバイスしない
●勝手に決めつけない
●ありのままに受け止める
●子どもの情景を見させてもらう

困りごとを相談してきた子どもに対し、話をよく聞く前に解決策を提案したり励ますということをしてしまう、ジャッジしたりアドバイスしたりして、受容傾聴の前に問題解決を急いでしまう、といったことを多くの大人がしてしまっています。

このような対応をしてしまうと、子どもがどんな気持ちなのか、何に悩んでいるのかわからなくなってしまいます。そして子どもは、自分を受け入れてもらえないという感覚になり、困ったときでも何も言わなくなってしまいます。結果、大人たちはその子が何に困っているのかわからなくなり、SOSをキャッチできなくなります。

子どもをありのままに受け止めるコミュニケーションとして、オウム返し、詳しく尋ねるという方法があります。「○○が□□だった」と落ち込んでいる子に「□□だったんだね」とオウム返しをし、「どんな風に?」と詳しく尋ねてその子の情景をシェアしてもらい、理解します。このとき、「□□だったの!?」という言葉はオウム返しでも語気が強いと叱責されている感じになるので、評価を交えないでニュートラルに返すことが大切です。

詳しく尋ねる際にも、矢継ぎ早に質問をしてしまうと、これまた責められているような感じになります。子どものペースに合わせて、子どもに起きていることをていねいに聞いて情景をシェアしてもらいます。

その上で、どうしていったらいいかも大人から提案するのではなく「どんなふうにしていこうか」など、問題があればその子が主体的に解決できるように促せるとよいですし、アドバイスをするなら、子どもの話を聞いた後、最後の最後で大丈夫で、会話の最初にアドバイスをしてしまわないようにします。

遺族の援助

以上のことをふまえ、遺族への援助にあたって、どのようなポイントを意識して聴けばいいかを下記に挙げます。

●相談に来たときは、自分の気持ちを話したいと思っていることがほとんどなので、ある程度の時間をかけて話を聴くことが必要。

●その時に大切なことは、「親を亡くしたから辛いのだろう」などの先入観はもたずに聴くこと、および話の途中で自分の解釈や意見を述べたりしないこと。

●話を聴くことは時間がかかると思いがちだが、よく聴くことが最も短時間かつ効率的に問題を解決するための方法。話をするだけで安心し、その後のケアが不要になることもある。

●逆に、話を十分に聴かずに決めつけてしまうと心を閉ざしてしまうことがあるので注意。

●中には、「自分のせいで保護者が亡くなってしまった」と思い込んでいる子どもがいる。その場合には「あなたのせいではない」と明確に伝える。それだけで楽になる子どももいると考えられる。

話を聴いていると問題点が浮かび上がってきます。理解した問題点を子どもに対して提示した上で共有します。共有した問題点が解決可能なものであれば、一緒にその方法を考えます。場合によっては保護者やスクールカウンセラーを交えて考えることも必要かもしれません。

一緒に考えることを続けている間に、子どもは問題解決能力を身に着けていきます。これを根気よく続けるべきで、焦りは禁物です。

問題が当面解決不可能なこともあります。その場合、答えを性急に求めずに待つ姿勢も必要になります。待つことも伝えて共有します。援助者は、目の前の問題に対して、解決可能か不可能かを見分けて対応します。

上記のようなケアを行っても精神症状に改善が認められない場合は、精神医療の専門家である児童精神科医との連携をすすめます。一人で抱え込まないこともケアのポイントです。

補足事項として、保護者の援助についても述べます。

保護者は愛する人を失って深い悲しみの中にありますが、親として子どものケアも行わなくてはならない大変な立場にあります。また相続などでもめて社会的につらい思いをしていることもあります。保護者も死別を経験してつらい思いしていることを考えながら対応します。誠実な対応は、苦悩を抱えている保護者のつらさを和らげる役割を果たします。

おわりに

この世には、様々なつらいこと、悲しいことがあります。

同時に、楽しいこと、救われることもあります。

悲しいことがあっても、喜ばしいことがカバーしてなんとかなる。

そんなことを繰り返しながら、人々は助け合って生きています。

前述の、母親を亡くしたココオル仲間は、打ち込めるスポーツがあって、その仲間がいて良かったという話をしていました。

私は結婚してから一度、同じ町内に引っ越しをしていて、もとの家を、月に2回の子ども食堂を行う建物として使ってもらっています。

もともと別の建物で行われていたのですが、コロナ禍でお弁当を渡すスタイルになり、今の場所になってそれが続いているのです。

仕事で忙しい夫も、その日は午後から休みをとって現場に駆け付けます。

ボランティアで行っていることで、他のメンバーにもそれぞれの生活があり、月に2回というペースが絶妙で妥当だと思います。

人は何かを習慣化するのに21日かかると聞いたことがあります。

逆に言うと、例えば、21日間「死にたい」と思い続ければ、本当に死んでしまうんじゃないかな? なんて思います。

死にたいとまではいかなくても、孤独をかかえ、ごはんもろくに食べられず「つらい」「かなしい」そんなことを思い続ける子どもがいたとしたら…

「つらい」「かなしい」そんな思いが定着して、例えば自暴自棄になってしまったりする前に、子ども食堂の日がやってきて、おなかも心も満たされて考えが変わるかもしれない。

私はそのような希望を抱いているのです。


☆出典☆
月刊『健康教室』2018年9月号 Information PLAZA「家族を失った子ども・保護者へのケアと支援について」

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