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Utopia-理想郷-

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夢。とあるお話の断片。
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記事一覧

とり

大丈夫だよ
あなたが信じてくれなくても

君もわたしの国民だから
まずは君に
安心と平和と豊かさを届けよう

この国は美しく平和で豊かな国になる
君はわたしが、それを叶えられないって
心のどこかで思ってる
そんな君を心から癒し、信じさせてあげるよ

僕の宰相
安心してね
そしてゆっくり休んでね
大丈夫だよ

君は僕に嫌われてもいいなんて
そう思ってることは知っている

どんな不幸なことがあっても

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追憶

生まれてきて世界で初めに出会った人間が理不尽すぎて、それを超える理不尽にあったことはないし、それを超える理不尽に再開するのも堪ったもんじゃないんだけど、

度合いは違えど世界は理不尽であふれてて、では、世界を変えましょうと人差し指を立てわたしの王に提案をし、負傷しながらも移動できるところはわたしの美点かと思うわけです。

流浪を続けているわけですが、
いつか腰を落ち着けたいですねと、
隣をてちてち

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mundus-世界-

ひとつの世界が終わる。

またひとつ世界を知る。

それでもわたしの世界はちいさくて。

はやくはやくと広げたいと、

急くこころを宥め賺し、あやす。

また明日から、世界をひとつ進める。

盤上の駒を動かすように。

どこまでもいけるのだと、じゆうな心。

全てを流し去る、激しい川の音、

そんな形容をしたくなる雨の音。

きっと祝福にあふれる光が照らされる。

座り込んで落ち着く。

火を起こ

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月と石の草原

月の光が煌々と照るなかで、草原で眠る。穏やかな星たちの歌に風が草を撫でていくのを感じながら、言語をコミュニケーションとする生物のいない世界の夢を見る。空には翼の獣と綿雲の獣が飛んでいる。地べたには炎を履く蛇が歩き回り、わたしは石の積み木であそぶ。この世界で暫くいい。いや、ずっとこれがいい、と、静かに思う。穏やかで、静かで、平和で、安心で、暖かく、安全で、幸せで、優しい。たまに雲の上で招待状を描いて

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とある外套

王さまと私は相変わらず歩いている。外套がとても重そうで歩みを阻んでいるようだったので、わたしが持ちますよ、と、預かって差し上げた。私も外套を着ているのだが、そんな私を見上げて、なんだか落ち込んだような顔をされるのだ。気持ちはなんとなくわかる。分かるし、外套を着られたままでもわたしは一向に構わなかった。外套に押しつぶされて、わたしの王さまが歩みを止められたとしても、わたしも横に座って王さまが立ち上が

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hortus -私の庭園-

葉から雫がするりと落ちていく。その先に進むと止まった古時計がそのままにしてある庭がある。装飾の凝った白の丸テーブル、その上にあるティーセットとバターの香りを放つお菓子たち、明るい煉瓦で作られた小道、鉢植えの緑や木々たちを金の陽の光は等しく輝かせる。鮮やかな色の翼をもつ鳥たちが囀り、寒さと死と終わりを知らない森。遠くから泉が湧く音と囀りを引き立たせるゆったりと静かな音楽が響いている。

古希くらいだ

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