月と石の草原

月の光が煌々と照るなかで、草原で眠る。穏やかな星たちの歌に風が草を撫でていくのを感じながら、言語をコミュニケーションとする生物のいない世界の夢を見る。空には翼の獣と綿雲の獣が飛んでいる。地べたには炎を履く蛇が歩き回り、わたしは石の積み木であそぶ。この世界で暫くいい。いや、ずっとこれがいい、と、静かに思う。穏やかで、静かで、平和で、安心で、暖かく、安全で、幸せで、優しい。たまに雲の上で招待状を描いてみたりする。届けばいいなと祈りながら。

草原からは草のよい香りが立ち上り、遠くで鳴く獣たちの遠吠えが子守唄になる。雨は降らず星が降る。まるで雨のように、静かな音を出して。ぐにゃりと溶けているわたしは腕を上げることさえままならない。ここは少しの力でも動けるから、そんな私でも居心地がよい。いつか獣たちの皮膚に触れてみたい。触れることに赦しが貰えるのなら。

美しいものと醜いものを抱えられるだけ抱えて、また、このふかふかのベッドがぽつんと置かれた夜の草原に還ろうとする為に、わたしはまた外の世界をひとつ知る。知りたくなかったなと言いながら疲れ果てて還って来るわたしを迎えてくれる。

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