「食堂み」の女たち27

あれから十五年。2020年開催のオリンピックが東京に決まったというニュースを響子が耳にしたのは「民宿 宮下」だった。響子は老夫婦に代わって民宿を切り盛りしている。「跡継ぎはあんたに任せたで。残す金はないけどな」「金なんかいらんわ」と響子は笑った。
玄関脇の掃除をしている響子の相棒、美奈は受付にあるパソコンと格闘している。美奈も響子も未だに独身だ。そして奥の調理場には、合間を見て手伝いに来てくれる光恵がいる。
俊一は二十五歳になり、IT系の会社に就職しプログラマーとして海外で活躍している。

「ちょっと早うしてや。今夜は二十人の団体やからな」響子が美奈に叫ぶ。「昨日も団体やったし忙しすぎて死ぬわ」パソコンが苦手な美奈の顔は必死だ。「ぐちゃぐちゃ言うな。目指すはホテル富岡よりおっきょうにすることや」「無理やて。富岡はまた県外にホテル建てるらしいよ」

続く


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