本と身体的なこと

本を読むうえで重要視することは人それぞれあると思います。

好きなものごとについて書かれた文章を楽しみにする人もいますし、本の装幀に惹かれる方もいるでしょう。
また、作者の人柄を感じるためにその方の著作を読み耽ることもあると思うのです。

その感性に応えてくれる本は必ず購入するようにします。
今日も本屋でそんな本を見つけることができました。

『ラインマーカーズ』
著者:穂村弘

現代短歌のトップランナーである穂村弘さんの歌集です。

まずもって穂村さんのお人柄が魅力的なこともあり、僕は棚の前をぶらつくときには「ほ」の著者名から探し始める習慣があります。

今日は平台に構えられた短歌特集の片隅から差し込まれるように視界に入ってきました。

装幀をつぶさに観察。タイトルのとおりラインマーカーで描かれた彩豊かな表紙絵が目を惹きます。

帯に書かれた短歌。この著書の代表作と思われますが、ことごとく型にハマらない言い回しの短歌であり、今なお新しいと感じさせてくれます。

あとがきは穂村弘さんのお人柄が如実に現れております。
繊細だけど温もりのある話し方をされています。人間味を形にしたような人だと改めて感じました。

これらの情報を数秒のうちに体感して、僕の中でこの本を購入することは確定となりました。

本を選ぶときですら、このような情報のやり取りが身体を駆け巡っています。
本の身体性とでも言えばよいでしょうか。感性に働きかける媒体としての本を、僕は体験するために本屋に通っているところがあります。
本を楽しむ読書体験は、文字を読むことだけではないと思うのです。

本には各々の感性に従って好きに楽しめる総合性があります。

手触りとか、言葉の言い回し、はたまた著者の考えとの共感とか、それらの感覚を刺激してくれる媒体って本に代わるものはあるのでしょうか。
本好きな人が世の中に残り続ける理由がわかる気がします。

蛇足ですが、個人的には「人間って、どんな生き物?」と思うのなら、この著者のエッセイを読むことが最も手早く答えを得られると思っています。
人間味を感じたい方はこの著者の作品をぜひ読んでみてください。


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