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KANさんが公表、メッケル憩室癌とは

最近の医療ニュースを深掘りしていきます。

今回はこちら

歌手のKANさんが、癌を公表しました。

この、聞きなれないメッケル憩室癌について、書いていきます。

メッケル憩室とは?


メッケル憩室とは、小腸におこる先天性の奇形のひとつです。

胎児期の初期には、へその緒と小腸のあいだに卵黄菅という管があります。

通常、この卵黄管は胎児の発育とともに消えてしまいますが、成人後も小腸にのこって、袋状の構造物となることがあります。

この袋状の構造物を、メッケル憩室とよびます。

有病率は2%程度といわれており、男性に多く、人種差はないといわれています。

回盲部(小腸と大腸の境目)から100cm以内の部分にできることが多く、およそ3cm程度の長さで、通常は無症状で経過することが多いです。

一方で、メッケル憩室をもつ4-7%の方に合併症がおこるといわれています。

最も多い合併症は、出血腸閉塞ですが、そのほか憩室炎、穿孔、腫瘍などがあります。

出血は血便などで気づかれることが多く、腸閉塞は腹痛・発熱・嘔吐などで気づかれることが多いです。

これらのことから、合併症がおこるメッケル憩室は、非常にまれであることがわかりますね。

メッケル憩室におこる癌

メッケル憩室に癌を発症するのは、メッケル憩室におこる合併症のうち0.5-3.2%ともいわれ、まれな合併症とされています。

一方で、メッケル憩室は回腸より1.6倍癌がおこりやすいともされています。

組織形としては腺癌のほか、膵臓癌やGIST、リンパ腫、平滑筋肉腫など、さまざまな形を呈します。

そして、組織形と発見されたときの病期(進行具合)によって、予後が異なるとされています。

偶然にメッケル憩室が見つかった場合・・・


これまでの話を踏まえると、メッケル憩室とは、比較的まれな腸管の奇形であり、さらにほとんどが無症状で、合併症がおこることもまれです。

一方で偶然メッケル憩室が見つかった場合に、予防的に手術による切除を行うかについては、コンセンサスがありません。

過去の報告では、

・年齢50歳未満
・男性
・憩室の長さ2cm以上
・組織検査で異常組織の存在

という4つの因子が、合併症をひきおこすメッケル憩室と関連するファクターであるとの報告があります。

手術にも合併症はあります。

メッケル憩室が見つかった場合、このような因子を考えながら、治療法を選択していくことが一般的です。


参考文献:
1. Thirunavukarasu P, Sathaiah M, Sukumar S, et al. Meckel's diverticulum--a high-risk region for malignancy in the ileum. Insights from a population-based epidemiological study and implications in surgical management. Ann Surg. 2011;253(2):223-230.
2. Lequet J, Menahem B, Alves A, Fohlen A, Mulliri A. Meckel's diverticulum in the adult. J Visc Surg. 2017;154(4):253-259.

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