見出し画像

スタートアップ・ブランドがコンプラ対応のまえにやること

こんにちは。ブランディング×弁護士の三浦です。事務所では「スタートアップ支援グループ」にも所属しています。今回は、前回の記事「スタートアップ・ブランドに、本当にコンプライアンスは必要なのか?|弁護士 三浦悠佑|note」の続きということで、スタートアップ・ブランドに必要なコンプライアンスとは何かについてお話をしたいと思います。

完璧なルール整備は不可能。じゃあどうする?

リソースも時間も限られているスタートアップ・ブランドにとって、全ての法律の要請に完璧に対応せよというのは、そもそも無理な話です。

予算も人員が豊富な大企業のお客様であっても、ルール整備を完璧に行うには膨大な時間とお金がかかります。例えば、私が過去にお手伝いしたルール整備プロジェクトでは、基本的なルール整備だけでも1年以上の月日がかかり、弁護士費用も相当な金額になりました。

スタートアップ・ブランドでは、このように一気呵成に「コンプラ対応」=ルール整備を進めるのは現実的ではなく、走りながら少しずつ整備を進めていくしかありません。

でも、どこから手を付けたらいいのでしょう?

そこで必要なのが、優先順位を見極める基準です。それこそが、「コンプライアンスのコンセプト」なのです。

コンプライアンスのコンセプトって?

コンプライアンスのコンセプトとは、「そのブランドがルールと付き合う姿勢」を簡潔に言い表したものです。そのブランドは何故存在しているのか?何を目指しているのか?ブランドのパーパスやミッション・ヴィジョン・バリューから導き出される「ルールに対する姿勢」です。

例えば、廃材を利用してサステナブルな商品を作っているスタートアップ・ブランドがあったとしましょう。彼らはブランドを立ち上げるにあたって、パーパスやミッション・ヴィジョン・バリューを決め、それを起点にブランド名を決めたり、ロゴをやプロダクトのデザインを行い、顧客とのコミュニケーションを行っているはずです。

ルールとの関係はどうでしょうか。一般的なブランディングの手法の中には「人」や「社会」とブランドの関りを整理するものはあっても「ルール」とのかかわり方を整理するものはありません。しかし、ブランドパーソナリティを決め、ブランドの「振る舞い」を決めていく中で、ルールとどう向き合うかという要素は必ず含まれています。

それを言語化したものが、「コンプライアンスのコンセプト」です。

コンプライアンスのコンセプトの役割

優先順位を見極める基準になる

コンプライアンスのコンセプトの役割の一つ目は、コンプラ対応の優先順位を見極める基準になることです。

先ほどのサステナブル商品ブランドについて考えてみましょう。例えば、彼らのブランドのパーパスが「廃材を利用した商品で、資源循環の輪と人の和を作る」みたいなものだったとします。そんな彼らにとっては、廃棄物処理法などの環境関係の法令への対応は何よりも重要です。

なぜか?

それは、これらの法令の背後にある価値観(法令のWHY)が、ブランドと密接な関係にあるからです。ここで失敗したらブランドへの信用が地に落ちてしまう、というのは誰でも想像できますよね。

法令への対応はもちろん、契約書や社内規定もブランドの重要なタッチポイントです。コンプライアンスのコンセプトは、これらのタッチポイントを適切にデザインするための指針になるわけです。

サステナブルな組織風土の土台になる

2つ目の役割は、コンプライアンス違反が起こりにくい風土の種を早めに撒いておくことです。スタートアップ時に作ったコンプライアンスのコンセプトは、創業者たちの想いでありブランドが成長し関わる人が増えていってもDNAとして刻み込まれます。

優れたブランドであればあるほど、創業者の想いがブレることなく受け継がれていきます。その創業者たちが「まずは利益を上げ、コンプライアンスはそのうちにね」とやっていたとしたら?そんな姿勢がブレずに受け継がれたとしたら?

何もかも台無しです。

ブランドが歴史を重ねれば重ねるほど、染みついた風土の改革には時間とコストがかかります。実際に、不祥事を起こした大企業の中には、大量の人とお金を組織風土改革につぎ込んでいるところもありますよね。

創業時に、ほんの少しだけの時間と手間をかけてコンプライアンスのコンセプトを決めブランドの一部として”練り込んで”おくことは、不祥事が起こりにくい組織風土=「サステナブルな組織風土」が作るうえでとても重要なわけです。

コンプライアンスのコンセプトの見つけ方は?

コンプライアンスのコンセプトを見つけるには、ブランディングの世界観とコンプライアンスの世界観を上手くバランスする必要があります。しかし、現状両者はほとんど水と油の関係。橋渡しをするのも容易ではありません。

そこで、両方の世界観を知る私が両者の橋渡しのために執筆したのが、コンセプトドリヴン・コンプライアンス: 担当者の9割が見落としている企業コンプライアンスの極意です。

ブランディングの世界になじみのないコンプライアンス担当者向けの本ですが、ブランディングの世界で働く皆さんにもきっとお役に立つ内容になっていると思います。ブランドの中にコンプライアンスを”練り込む”ことにご興味がある方は是非お手に取っていただき、感想など聞かせていただけると嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?