書類の記入【読切超短編小説】
ジャージ姿のおばさんがN氏に呼びかける。
「え、ここと、ここと、ここにサインを。」
そこからも長かった。
次から次へと書類が出てくる。
「ここと、ここと、ここにもサインを。
何かあったら困るのでね。
あ、もちろん、
内容はきちんとご確認ください。」
午前8時に行って、
午前11時までかかってしまった。
N氏はくたくた。
後ろを見れば、
とんでもない行列になっていた。
正午、1年生の徒競走が始まる。
N氏は、娘の走る姿を暖かく見届けた。
まだ校門の前では、
遅く来た保護者達の書類の記入が…
彼らより先に運動会は終わるだろう。
仕方のないことだ。
何かあってからでは遅いのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?