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不思議な夜話に酔いしれるー『バートン版 千夜一夜物語第1巻』ー


印象に残った言葉

入れ知恵をするようなばかなまねをしたので、こんなことになったんだ。世間でもよく言うじゃないか、幸福にひたっていたのに、おせっかいをしたばっかりに、こんなひどいめにあってしまった、と。

p.72

滅びてはかなき朝の露、よろずの人は言わんかな、
「因果はめぐる火の車、運命をうらむことなかれ」

p.102

あらゆる女にはひとりの男がある。その男のためならば<いつでも喜んで床さえ清めるくらい>のただひとりの男がいるのだ。運命の神はたいていそんな男に女を合わせないけれど、いちど会うと、亭主も子供も、名誉も宗教も、生命も魂もおさらばなのだ。それに自然(人性)は、美しいものと醜いもの、暗いものと明るいもの、背の高いものと低いもの、といった、好対照の取組みを命ずるわけで、さもなければ、人類は犬族のように、極端なものの種族に、すなわち愛玩用テリヤのように小さいもの、(略)になるだろう。

p.212

なにか手に入るみこみがなけりゃ
恋など毛ほどの値うちもないよ。

p.226


感想

シャーラザットが千夜物語を王様に語るというものは知っていましたが、結構エロティックな話が多かったです。

王様は結構クズでした。夜ごとに処女と交わり翌朝に殺すというかなりの悪人。

たまに、誰の物語かわからなくなることがありました。理由は、話の中にさらに話が出てくる時があるからです。

例えば、シャーラザットが物語を語る→物語の中の男がさらに物語を語る→また更に物語を語るなど途中で分からなくなることがありました。

第四夜の話の『漁師と魔神の話』で壺の中から出てきた魔神に対して、漁師が「そんなに大きけりゃ、もう壺に入ることはできないだろ」みたいなことを言って、魔神を壺に再び封じ込める話は日本の昔話でもあったような気がします。

意外と似たような昔話が世界に多いので、元となる物語がどこかにあるはずなので気になります。

後、話が面白ければ殺されない世界だという事が分かりました。悪人でも「○○見たいになるぞ」と殺されそうなときに言うと、「なんだ、その話は聞かせよ」みたいな感じで話す機会が与えられる。面白ければ「なるほど」と言って殺されない。変な世界だ。


書籍情報

バートン版千夜一夜物語1
大場正史 訳者
ちくま文庫
2003年10月8日 第一刷発行


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