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随想(詩について)

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#茨木のり子

飾らずに書く ー 茨木のり子さんのこと

飾らずに書く

 茨木のり子さんは僕にとっては特別な詩人です。なぜ特別かと考えた時に、茨木さんの『詩のこころを読む』(岩波書店)という本を思い出します。岩波ジュニア新書の一冊で、今さら言うまでもなくすばらしい「詩の入門書」です。その中に、僕の書いた「顔」という詩が引用されています。とてもありがたく感じています。載せてもらえたことに晴れがましい気持ちです。

 ところが、この本が出た頃(もう四十

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無名性の尊さ ー 茨木のり子さんのこと

無名性の尊さ 

誤解を恐れずに言わせてもらうなら、茨木のり子さんの詩というのは、朝起きて「今日は茨木さんの詩を読みたいな」という気持ちのおきるようなタイプの詩ではないのではないかと、思うのです。むしろ、日々の雑事の中でふっと詩が目にとまる、するとその目がそこにとどまって、どんどん引き込まれていってしまう、そのような詩なのではないかと、思うのです。甘そうなにおいや、人をひきつけるためのトリックなど

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