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随想(詩について)

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2024年5月の記事一覧

詩の適齢期について

ぼくは若いころ、詩を書いていて、よく思ったことがあります。

どうして詩人は、歳をとってくると、緊張感の失われた詩しか書けなくなるのだろう、ということです。

自分はあんなふうにはなりたくない、詩がダメになったら、潔く書くことから離れようと、考えていました。

でも、なんということか、ぼくは人よりもずっと早くに、緊張感の失われた詩しか書けなくなりました。

それで、今、自分がもっと歳をとって、考え

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詩はなんの役にたつか

詩はなんの役にたつか、と考えれば、いくつかの答は出てくると思います。人それぞれに違うのかもしれません。

ぼくにとっては、なによりも、「生きていく支えになった」ということでした。

高校生の時だったか、普通は10代後半というのは、溌剌と生きているものなんですけど、ぼくはそうではなくて、けっこう暗かったんです。

当時から猫背だったし、若いということがむしろ邪魔でさえありました。

これといって人に

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「ためになる言葉」にもたれかからない

詩の入門書を読んだり、詩の教室で話を聴いたりしていると、詩についてのさまざまな言葉に出会います。はっとなります。いい言葉だなと感心します。

「擬人法はこうした方がいい」
「想像だけの詩はつまらない」
「詩は説明ではない」
「詩は比喩である」
「詩とは、、、」

それらの言葉に感心して、では自分もその言葉に即して詩を書こうとします。

でも、注意した方がいいと思うのです。万病に効く薬はありません。

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詩の理想とは

下記は、先日の小池昌代さんとの対談で話したことの一部です。

✳︎

詩を書く、という時に、(こちら側)と(向こう側)の二つの側面があると思うんです。

(こちら側)

ひとつの側面は、まさに詩を書くということそのものの側面です。詩を書きたくて書く。書きたくて仕方がないから書く。その側面には、詩と、自分しかいないんです。(こちら側)です。

(こちら側)では、世界を遮断して、自分と詩のふたりき

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ネットに詩を書くことについて

ぼくがネットで詩や文章を載せ始めたのは、50代だったろうか。途中でやめたり、ぜんぶ削除したり、また始めたりしてきたけど、もうかれこれ20年以上も書いている。

それで、もちろん毎日書く垂れ流し(と、言われたことがある)のような文章に、何の意味があるだろうと、考えることはある。

ただ、これも一つの表現に違いがないだろうと思う。

というのも、どこかに読んでくれる人がいるのは確かなことだし、書くもの

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詩に片思いをしている人もいる

詩の教室をやっていて思うのは、誰もが器用で、上達が早くて、センスが良い、というわけではないということです。

詩が好きなのに、なぜか詩に好かれていない人、というのが、いるんです。

詩に片思いをしているんです。

詩がこんなに好きなのに、うまい詩が書けない。どんなに頑張っても、詩がほめられることはめったにない。

ところで、ぼくはこれまで何冊も詩集を出したけど、根本のところでは、ぼくもそうなんだと

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