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大人になってからの好きという言葉は軽くて重い

2023年3月をもって、29歳になった。自分が学生の頃、大人として尊敬していた30代がすぐそこまで迫っている。あの頃は、いつか結婚して、いつか子どもができて、30歳になるころには家族というコミュニティを形成しているのだと、本気で思っていた。スマン、過去の自分よ。29歳の僕は何一つ成し遂げていません。

中学生や高校生の頃、彼女はいなかったけれど、好きな人はいた。放課後に教室で二人っきりになるイベントも、運動会で一緒にダンスを踊るイベントも発生しなかった。クラスが変わるたびに好きな人も変わったけれど、結局その誰にも好きという言葉を伝えることなく大学生になった。

大学生になって、少しだけ大人になった。彼女もできたし、彼女じゃない友達もできた。好きという言葉を少しずつ言えるようになった。

社会人になって、大阪で働くようになった。仕事関係で知り合った人と関係を持った。2歳年上の経験豊富な女性で、女の子にはちゃんと言葉で伝えることが大切だと教えてくれた。

ちょうど1年前、転職して東京勤務になった。マッチングアプリを始め、何人かの女性と会った。一度きりの食事で連絡が取れなくなった人もいるし、付き合った人もいるし、付き合わなかったけれど一緒にいた人もいる。いろんな女性と会ううちに、好きという言葉が使えるようになった。

3か月前、会社の同僚(女性)が退職した。1歳年下の先輩。仕事でかかわることはなかったけれど、飲み会なんかでは話す機会も多くて気になっていた。勇気を出して個人的に飲みに誘った。何度か飲みに行くうちに、この人のことが好きかもしれない、と意識するようになった。でも、何度も伝えるチャンスはあったはずなのに、「好きです」のたった一言が言えなかった。

マッチングアプリで数回しか会っていない人には簡単に出てきた言葉が、毎日会社で顔を合わせ、幾度となく飲みに行った元同僚に言えなかった。中学生や高校生の頃の自分に戻ってしまった気がして、情けなくてうんざりした。

大人になって、好きという言葉を軽々しく使えるようになった。でも、本当に伝えたい相手を前にすると、やっぱりまだずっしりと重くて、そう簡単に言葉にしてはいけないような気がする。30歳になるまでには、素直に伝えられたらいいな。頼んだぞ、未来の自分。

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