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今さら聞けない株式投資での経営指標 ー 今回はROEです

最低限知っておくべき経営指標

本日から1週間の夏季休暇になります。この夏休みは本を読んだり、雑誌での情報収集、近い将来の副業開始に向けての企画作りをメインに過ごす予定です。後は9月からはじめる登山(低山ですが)の準備です。

本日から数回に分けて株式投資でも使用する経営指標について簡単な解説をしたいと思います。ROE、PBR、PER、ネットキャシュ倍率、配当性向、DOE、ネットデット/EBITDA倍率あたりです。「そんなこと知っているよ」という方も多いかも知れませんが、そういう方は読み飛ばして頂ければと思います。

これら指標は私自身も業務で頻繁に使用しますし、機関投資家との対話でもこれらの意味を理解しておかば、困らないかと思います。IR部門の方でも財務・経理出身でない方は、この言葉を実は理解できていない方も結構いたりするので(「知ったふり」をしている方は中高年サラリーマンには意外に多いですね)、そういう方にも分かりやすい初歩的な内容にしています。

今さらですがROEとは?

今回はROEです。英語で言うとReturn on equityです。さんざん言われてる用語ですね。このROEは、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表す重要な財務指標になります。企業の株主資本に対する当期純利益の比率で、ROEの数値が高いほど経営効率が良いと言えます。今の世の中で上場企業の経営トップが果たすべき重要な役割の1つがこのROEを上げることです。

では、ROEは何パーセントあれば良いのでしょうか?

ROEはその企業の株主資本コストと比較する必要があるので、一律にこの数値が適正であると決めることは出来ず、企業の属する業界によって異なるのですが、ざっくりとして最低でも8%が必要と言われています。

ちなみに、5%を下回る状態が続くと機関投資家は企業の経営トップや在任年数3年以上の取締役の選任に反対をします。この点は以前に記事を投稿しておりますので、以下再掲いたします。

ROEは3つに分解して分析

「ROEが何パーセントである」という結果のみが新聞では報道されることがほとんどであり、結果が大事なのでやむをえないのですが、同業他社や類似企業で比較する場合には、ROEをブレイクダウンする必要があります。

投資家の観点から言えば、投資先銘柄のROEが同業他社と比較して低く、その原因は何であるかを探るような場合に分解します。勿論、原因を探った後、その銘柄の経営陣に対して改善のアクションを求めるという行動がセットになりますね。これは個人投資家の方も是非見習うべきとは思います。

ROEを分解すると「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」です。

まず売上高利益率ですが、これは「当期純利益÷売上高」ですね。つまり、当期純利益を上げることが重要です。そのためには、そこに至る過程での利益、つまり、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益など上げていくことが重要になります。

次に総資産回転率ですが、これは「売上高÷総資産」です。売上を稼ぐのに資産をどれだけ効率的に活用しているかの指標です。一般的には、メーカーの場合には、1回を下回ると「資産が重たい」と言われています。

最後に財務レバレッジですが、これは「総資産÷株主資本」です。株主資本が10億円で総資産が30億円の場合は、財務レバレッジの倍率は3ということなります。株主資本に対して、有利子負債が多くなるほど、財務レバレッジの倍率が高くなると考えれば分かりやすいと思います。

ROE向上の肝は?

上記のように3つに分解できますが、この中でROE向上の肝になるのは利益率です。総資産回転率は同じ業界においてはそれほど差異はなく、また、配当も増やしている今の世の中、株主資本もめちゃくちゃ分厚い企業もそう多くはないと思います。とすると、ROEの高低の肝は利益率の向上です。

最終的には当期純利益が大事ですが、そこに至るスタートラインの利益である売上総利益が一番大事かなと思います。売上総利益は会社の儲けの源泉です。ここがどうしても低いとその後の利益は低くなります。商品やサービスの付加価値を高めて製品又はサービスの単価を上げる、または材料費や作業工程を見直して、売上原価を下げるというのが重要になります。

投資先銘柄のROEを分析する場合には、単にROEの数値だけを比較するのではなく、上の公式に従いブレイクダウンして、しかも過去数年分に遡ってエクセルシートに並べてみると良いかと思います。そして、その銘柄と同業の上場企業なども比較して(少し面倒ですが)、改善についてIR部門に質問したり、株主総会で質問するということが出来ます。

以上になります。ブログを読まれてお気づきのことやご質問、ご感想など何かありましたら、コメント又はnoteのトップページの一番下の「クリエイターにお問い合わせ」からご遠慮なくご連絡頂ければと思います。