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[書評] 権藤主義 ~唯一無二の痛快野球論~

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・エッセイスト書評家 として、
自らを定義しています。

この本を読んで 頭に浮かんだのは
「出過ぎた杭は打たれない」
という言葉だった。

強過ぎる個性は
時代に合わないことも多い。

だが、時代に迎合しない個性は、
時代を経るにつれて
再評価されることがある。

本書は表題のとおり
野球論に関する内容が中心だが、
この記事は野球に明るくない人にも
ぜひ読んでいただきたい。
(なるべく専門的な話は避けたつもり)


戦前生まれの昭和オヤジ

筆者:権藤博 氏は 1938年 生まれの
85歳(本稿 執筆時点)。

中日ドラゴンズで選手として活躍した後、
横浜ベイスターズの監督として
日本一に輝いた他、
投手コーチとして
様々な球団を渡り歩いた
控えめに言って スゴイ人である。

私は やはり20世紀の終わりに
「マシンガン打線」を
代名詞に球界を盛り上げた
ベイスターズの監督というイメージが強い。

初めての監督就任時点で
還暦 間近だったというのだから、
改めて驚いた。

80歳を超えた今もなお、
このように活躍されていると
「戦前生まれの昭和オヤジ 恐るべし」
と感じる。

もちろん「昭和オヤジ」は
尊敬と畏敬の念を込めた敬称である。

権藤、権藤、雨、権藤

氏を語る上で、セットになっている
お決まりのフレーズがある。
それが「権藤、権藤、雨、権藤」である。

投手として入団した氏は、
1年目から投げまくった。

1年目にして
今もなお歴代1位となっている
シーズン 429回1/3 という投球回数だ。
(当時はシーズン 130 試合制、
 うち 69 試合に登板)

これがどれくらい
ブッ飛んだ記録かというと、
143 試合制になった 昨今でも
200 投球回に到達することが難しいと
されていることから 想像いただけるだろう。

昔、「24時間たたかえますか」なんて
CM が流行ったのを聞いて、
現代人は「バカじゃないのか?」
なんて思うだろうが、
その CM が流行した当時の人間が見ても
氏の連投っぷりは 常軌を逸している。

まさに「常在戦場」というにふさわしい。

ちなみに先ほど紹介した
「権藤、権藤、雨、権藤」は、
こんな背景から誕生した言葉らしい。

連投に連投を重ねる権藤を指した「権藤、権藤、雨、権藤(雨、雨、権藤、雨、権藤と続く)」という流行語も生まれた[4][13]が、この言葉が生まれたきっかけは、当時巨人の投手であった堀本律雄が「中日の投手は権藤しかおらんのか、つぶれてしまうぞ。権藤、雨、旅行(移動日)、権藤、雨、権藤や」と記者に語ったことからだという[6]。1961年7月4日からは「雨・完封・雨・移動日・完投・雨・移動日・先発(5回を投げる)・雨・雨・移動日・先発(5回を投げる)」という、このフレーズに近い12日間だったということもあった[14]

Wikipedia - 権藤博 より

早過ぎた野球観

氏が監督を務めていた当時は、
まだ日本のプロ野球界に
「送りバント信仰」が根強かった時代。

一番バッターが出塁したら、
二番バッターは送りバントで
クリーンナップにつなぐのがセオリー。
それが堅実であり、常識とされていた。

そんな中、当時の横浜ベイスターズは
「送りバントなんかクソ喰らえ」とでも
言わんばかりに、お構いなしに
ヒッティングを選択していた。
そして実際に打つ、打ちまくる。

また 投手起用としては、
「先発完投」という文化が
徐々に減りつつあったとはいえ
現代よりも根強く残っていた中、
セットアッパーやクローザーを固定して
分業制と救援投手のローテーション制を
確立した ひとりとされる。

特にクローザーの 佐々木主浩 投手は
「ハマの大魔神」として
プロ野球ファン以外にも有名になった。
(今は馬主としての知名度も高いが)

この投手に無理をさせない
仕組みを作ったのには、
自身が現役時代に連投に次ぐ連投で
肩を壊した苦い経験があるという。

「俺が苦労したんだから、
 お前らも同じ苦労をしろ」
というブラック指導者が
現代にも広く蔓延る一方で、
氏は 彼らに同じ苦労はさせまいと
自身の経験から 新しい時代を作ったのだ。

権藤ベイスターズ時代は
私も本格的に野球にハマる前だったから、
氏の手腕が当時 どのような
評価だったのかは分からない。

ただ、同時代の他のチームと比べたときに
同じ考えを持っていた監督が
多いとは言えなさそうである。

特に攻撃面の采配については、
自チームの選手からでさえ
「もっと送りバントのサインを出してください」
と言われることもあったほどだそうだ。

今となっては
2番打者が 送りバントをしないのも、
救援投手を酷使しないのも、
ごくごく一般的な考えになった。

氏の野球観と理論には
先見性があったと言えるだろう。

まとめ

当時は 常識知らずの破天荒と
思われていた 織田信長 が
後世で その先見性を評価されたように、
権藤氏についても
「ようやく時代が氏に追いついた」
と言えるのではないだろうか。

たとえ周りに何を言われようと、
信念を持って 自分の道を進んでいれば
必ず評価してくれる人は現れる。

そう信じて、安易に迎合せずに
己が信念を貫き通そうではないか。

そう思わせてくれる一冊である。

こんな人にオススメ!

・プロ野球ファン
・野球論議が好きな人
・権藤ベイスターズに思い出がある人

こんな人には合わないかも…

・「昭和世代」を条件反射で嫌厭する人
・野球の話には微塵も興味がないという人

お読みいただき、ありがとうございました。

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