見出し画像

まじょのなみだ(18)

食事は、おかゆ一口すら食べるのが必死。

眉間にしわを寄せた険しい表情で、
もはや全く欲していないごはんを食べることは苦痛になっているようだった。

緩和ケア科には、
一室をカフェスペースにし、ボランティアさんがコーヒーなどを提供してくれる日があった。

水分もほとんど口から取っていない母だけれど、車いすに乗せて一緒に行ってみた。

カフェの雰囲気で母も口を付けてくれるんじゃないか、
以前カフェをやっていたからコーヒーについてうんちくでも言ってくれるんじゃないか、
と期待して。

そこには様々な方たちが来ていた。

治療をしながら看護の勉強をしている若い人。
元気そうに病状を語る人。
介護の合間に一息つきに来た家族の人。

なんか勇気付けられた。

母は「おいしい。」と一口、形だけ口を付けて飲んだふり。
それ以上は口を付けなかったけれど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?