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プレスリリース逆回転

プレスリリースとは、新商品・新サービスやイベント開催の発表から、人事、決算、不祥事などの企業動向まで、企業や団体が自らに関する情報をメディアに向けて広く発表する「公式文書」のことで、広報活動の代表的な手法を指す。

当たり前だが、起点は企業・団体であってメディアではない。
それだと予定調和で発信者の都合のいい情報ばかりで面白味がない。
そこで、SDGs+ひとり編集部では、読者を起点にして11月2日発行した『SDGs+ Vol.6』を逆回転で本号を総括してみたい。発行と同時にPDFで読んでもらい、編集部に寄せられた6人の感想をまとめながら、最終号となった第6号を振り返った。

第6号をもって休刊ということで「残念」「寂しい」「悲しい」という声が集まる。編集部としてはこういった声に支えられてきたことをあらためて知る。また、ひとり編集部ということで私に対するメッセージもいただいた。「ぜひ復刊を」との声も複数届いている。ありがとうございます。

最も興味深かったのが、SDGs+とはどんな雑誌だったのかという読者から見た雑誌像だ。
「SDGs関連のwebメディアは増えているが、大体オンラインで簡単に取材をしているだけで、貴紙は足を運んで丁寧に取材されている」「丁寧に取材していただいたことが印象的」「読みごたえのある内容で部門のメンバーで共有し毎回楽しみにしていた」

取材費など予算がほとんどなく、コロナ禍で調整が難しかったが、対面取材にこだわった。インタビュイーの表情や声色も大切な情報だからだ。

発行元である弊社は、新聞記事のクリッピングサービスなどメディア露出の分析を主な仕事とする。雑誌も企業広報をメインターゲットにSDGsをテーマにした話題をメディアにどうすれば取り上げられるのか、企業事例を紹介するのが本誌の使命だった。創刊号では全国紙を逆取材し、各社のSDGsへの取り組みと関連ニュースはどの部署の担当などを掲載した。

本誌の出発点は、SDGsに取り組んでいるというポジティブイメージを社会に向けて発信している「SDGsバッジを付けている人」に私も他ならなかった。けれども社会は分断が加速し、ウクライナ情勢や中東の緊張もあって不満や諦めが渦巻いている。組織を代表するのでなく、作り手としてはいつしか、一人一人の声を直接聞きたいと思うようになっていた。

ありきたりの言葉でなく、ひりひりして生々しい言葉はどこかできっと誰かの心と響き合うはずだ。編集にかまけて販売網を全く整備できず、確実に雑誌を届ける道筋をつくることができなかったのは、私の怠慢だ。1年余で6号発行したがもっと間を置き年2回程度に抑え、全国のセレクト書店を回り雑誌を置いてもらい、時に読者イベントを開催するなどして、読者とのコミュニケーションを図るべきだったと猛省している。

最終号のテーマは「行動するSDGs」。行動を起こすことは無論、素晴らしい。でも、他人を巻き込み活動が広がらなくても、個人レベルで昨日より少し心が外にひらいていけたなら、それは「アクション」に値するのではないか、というメッセージを込めたつもりだ。ある人が感想としてこんな言葉を寄せた。

<小さなことから社会は変わる、というのを実践されていて少し勇気だったり、一種の(もちろん良い意味で)諦めみたいなものが芽生えました。大きなことをしなくちゃ、大人なんだし、みたいに勝手に自分にプレッシャーを与えていたところもあるなぁと。そして、紙面左上の小さなキャラクターが言っている「やるしかない」がやけに刺さりました>

小さいことをゆっくりでいい。最後尾で、それぞれがすぐに忘れてしまうような日ごろの何気ない想いに伴走できたとしたら、それだけでいい気がしている。でも、だからこそこの最終号が一人でも多くの人に届いてほしいと切に願う。


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