菊坂ロンリー編集部

社会といわなくてもいい、身の回りをちょっとだけいい感じに変えていきたい。それが雑誌「S…

菊坂ロンリー編集部

社会といわなくてもいい、身の回りをちょっとだけいい感じに変えていきたい。それが雑誌「SDGs+(プラス)」。取材、撮影、誌面編集までやるロンリーでオンリーなひとり編集部のつれづれを語ります。 http://deskone.jp/sdgs/sdgsindex.html

最近の記事

切なさと愛しさと心強さと

ひとり編集部はその名の通り、ワンオペで雑誌を作る。外食で言えば接客も調理も電話応対もすべて、この身ひとつ。時には同僚と「このレイアウトどう?読みにくい?」「昨日まで金沢に旅行に行ってて」などと会話したい。ひとり編集マシーンにそのような時間は皆無である。したがって、独り言が多くなる。妄想が激しくなる。先の会話が私の脳内で繰り広げられる。「そうだな、ここで記事をたため」「いいねえ、旅行なんてこのところご無沙汰だあ」  この日の脳内対話の相手は新聞編集時代に世話になった馬場さん。

    • 仰げば尊し

      恩師が亡くなって3年が過ぎた。あの夜、大学で卒論の指導を受けた先生の名前が旧ツイッターのタイムラインにたまたま流れてきた。真偽のほどは分からない。各紙の新聞記事検索を当たったが出てこない。日をあらためて神保町の大きな書店に行く。学会誌の動静に何か情報がないかと考えた。勘は当たった。小さな記事だったが、先生の逝去を確かに伝えていた。先生は私たち夫婦の仲人でもあった。大学卒業後勤めた新聞社が西日本にあり妻も当地の出身だったから、結婚式は都内ではなく、先生には宿をお取りしお越しいた

      • プレスリリース逆回転

        プレスリリースとは、新商品・新サービスやイベント開催の発表から、人事、決算、不祥事などの企業動向まで、企業や団体が自らに関する情報をメディアに向けて広く発表する「公式文書」のことで、広報活動の代表的な手法を指す。 当たり前だが、起点は企業・団体であってメディアではない。 それだと予定調和で発信者の都合のいい情報ばかりで面白味がない。 そこで、SDGs+ひとり編集部では、読者を起点にして11月2日発行した『SDGs+ Vol.6』を逆回転で本号を総括してみたい。発行と同時にP

        • 催促電話の憂鬱

          「取材の件ですが、いかがでしょうか」と催促電話をA社の広報に入れた。 校了5日前。土日を挟むので、先方の記事の確認作業までを考えれば、もうギリギリのタイミングだ。 キリキリ胃が軋むなかでの催促電話。案の定、広報直通ダイヤルにかけてもダイレクトにはつながらないのがこのご時勢。担当に転送されるまでの保留音メロディーがうらめしい。 ようやく担当者につながった。「今やっていますけど、何か」と乾いた声音。受話器を握る手がプルプル震える。 「黙って待ってろい」と言われないだけまし

        切なさと愛しさと心強さと

          コロナ禍での奇跡的な書面取材

          「自粛」という名のもとに、新型コロナの感染拡大で企業活動が停止してしまった2020年。広報さんから「熱い原稿ありがとうございました」とお礼を言われました。 対面ではなく、メールによる書面取材という無機質なやり取りだったにも関わらず、どうして原稿に「熱」がこもったのか、少し長くなりますがお付き合いください。 休館に追い込まれた美術館・博物館に“善意のシグナル”を発信していた取り組みを振り返りたいと思います。 俎上に載せる記事はこちらです。 インタビュー:ドワンゴ-デスクワ

          コロナ禍での奇跡的な書面取材

          聞き手の傲慢

          取材とはどういうものなのか、記者はどんな仕事なのか、書くことはどんなことなのか。この記事を読むといいと思う。 立てこもる青木容疑者と一緒にいた母 投降までの状況語る 「なんでこんなことを」 中野市の事件|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト (shinmai.co.jp) 取材の現地ではどんなやり取りがあるのか、想像できる。極端な例かもしれないけれど、誰だって話したくないことがあって、それを聞いて書くということはとても厳しいことなのだと思う。 聞き手の傲慢

          あの鐘を鳴らすのは誰や?

          今でもときどき新聞を作っている夢を見る。 すみません、すみません、と謝っている。 でも、少しほっとしているのは確かだ。 共同通信のピーコを聞かなくなって久しい。ピーコとは、新聞社の編集局に響きわたるニュース速報を告げるチャイムのこと。「ピーコピコピコ…」という音声で始まるので、ピーコと呼ばれるのだそう。 だが、キンコンカンコーンは最上級の非常事態発生を知らせる緊急チャイムだ。「9・11」のときにはベテラン記者でも一度あるかないかのキンコンカンコーンが何度も何度も鳴った。

          あの鐘を鳴らすのは誰や?

          ときには、取材について語りたい

          note初心者です。必死で何か書かなきゃと思っています。随分とフォローしていただきありがとうございます。 自分語りオジさんは嫌われると、子どもにも言われます。 ときには仕事術についてお話しできればと思います。 お付き合いください。 新聞記者から会報誌のライターとなって最もしんどいのが取材依頼。コロナ以降、難易度が何十倍にも上がって毎回泣いている。いや、ベテラン記者でも気が重いと思う。心構えとしては、一にも二にも「つながりが大事」だ。 その1:まずは、誰かとつながる その

          ときには、取材について語りたい

          独りニモマケズ

          朝、カラスが鳴いていた。 そのことを知らせたのは、家の飼いウサギだった。激しく動き回って鼻を鳴らしていた。 外に出ると電線に隙間なくカラスが集結している。いずれも東を向き50羽以上はいただろうか。1羽が鳴き始めるとみな続いて、読経の唱和みたいになった。 以前、似たような光景を目にしたことがあった。電線に居並んだ数十羽のムクドリが鳴き喚いていたのだ。大群に見守られるように、道端には1羽のムクドリが死んでいた。 カラスは何に鳴いていたのだろうか。仲間が難に遭った様子はない

          編集と犬の遠吠えと

          インパクトのある言葉をつい使いたくなる。 新聞の整理記者時代に面担でなく何でも屋のフリーで、ある地方版に入ったときのことだ。ワイドショーでも取り上げられたようなある行方不明事件に大きな動きがあった。忽然と姿を消して1年余り。乗っていたとされる車が見つかったと出稿部のデスクから一報が入った。 地方版だけでなく全国版の一面、社会面、そして私の地方版にそれぞれ記事がくるという。一面は本記といって「○○で車が見つかった」という事実関係を伝える記事、社会面にはその背景や現場の表情を

          編集と犬の遠吠えと

          雑誌をこうやって作っています(続)。

          前回、創刊準備は3カ月と書きましたが、そのうち最も時間をかけたのが紙選びでした。創刊号の企画と合わせて最初の1カ月を使い決めました。 大まかな紙面イメージをつかみたいので、イラストをワードで描き表紙を作ってみました。 質感・印刷時の鮮やかさ<コスト本来なら雑誌のテーマがSDGsなので、FSC認証紙といったエコ用紙を使いたいのはやまやまでしたが、コスト面を最重視しました。作り手としてはいきなり凹みました。 どこで印刷するのか?・内製(リースのカラーコピー使用) ・印刷所 ・

          雑誌をこうやって作っています(続)。

          雑誌をこうやって作っています。

          ひとり編集部だからこそ伝えないといけないことがある――とずっと思っていました。紙の雑誌がどう作られているか? 前職は新聞記者ですが雑誌編集の経験はゼロ。ひとりで雑誌を立ち上げ1年で5号出してきました。 雑誌『SDGs+』を知っていただくために4つ書いてみます。テーマもバラバラですが、まぎれもなくコロナ禍の編集戦記。興味を持ってくれる方がいたらいいなと願い、note6本目の投稿です。 ①創刊準備は3カ月、ターゲットは企業広報 弊社には以前『CASレポート』という企業の全国

          雑誌をこうやって作っています。

          わが人生の時の時

          僕たちに校正ルールをみっちり仕込んでくれた先生は実は2人いた。 僕が先生と呼ぶのはT君で、もうひとりはSさんという眼鏡が理知的で快活な大学中退をしたばかりの女性がいた。彼女は弘前出身だから、先生は陰で太宰と呼んでいたのだが、僕たちの彼女の呼び名はSさんで通した。 先生とSさんはコンビで僕たちの指導係というわけだ。先生はSさんより年上だったが、主導権はSさんに握られっぱなしだったように思う。大輔花子だと僕たちは先生たちを囃し立てた。先生は失敬なと顔を真っ赤にしていた。Sさん

          プロレタリアート

          こんな所でプロレタリア文学語るとは思いませんでしたよ。僕より10歳若い先生の研修はよく脱線した。1ヶ月、小テストと座学を繰り返しながら、某R社の求職サイトの表記をマスターしなければならない。僕たちの部署は確か品質マネジメント課とかいった。 何とかかんとか、と関東ではいうが、先生は、うんすんかんすん、と言った。出身はどうやら松山らしい。 もう15年以上も前の話になる。 僕は校閲者であり派遣労働者だった。東京タワーが見える勝どきのオフィスに派遣された僕たちはみんな「崩れ」で

          甲子園【自己紹介】

          野球経験のない私が甲子園の土を踏んだのは、もう20年以上も前になるだろうか。 西日本のある高校が夏の県大会を制し初出場した。地方紙の支局記者として1週間ほどナインに同行したのだった。地方版に練習の様子、対戦相手の横顔といった記事を送った。 初戦は神奈川の強豪。スコアは覚えてない。惜敗だった。アルプスとは名ばかりのスタンドでジリジリ焼かれながら、グラウンドに背を向け、応援の様子を取材していた。スタンドの雑感取りという新人の仕事だ。 「○高の夏は初戦で激しく燃え尽きた」。1

          甲子園【自己紹介】

          SDGs+第5号の読みどころ

          「SDGs+(プラス)」第5号は、「LOCAL×SDGs」をテーマに、地域の課題に取り組む人々を特集しています。「シン・地方人」として、埼玉県横瀬町の「よこらぼ」や神奈川県相模原市の「SDGsビジネス認証制度」など、自治体と企業や大学などとの連携の好例を取り上げたほか、ゼロ・ウェイストを推進する徳島県上勝町の地域づくりを担う住民にも話を聞きました。いずれもそこで生まれ育ち、今も住んでいる方です。官民それぞれの視点から地域づくりの課題が語られます。 「往来人」では、都内に拠点

          SDGs+第5号の読みどころ