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告白ごっこは、彼らの自信のなさの表れだった


一年生の女子をターゲットとした「告白ごっこ」

大学時代に所属していたサークルでは妙な習慣があった。
ひとつは、女子は同じサークルの男子と付き合うこと。部員数は、男女比が2:1なので、男子はバイトとかで知り合った「よその人」と付き合うのだが、女子はほとんど全員がサークルの男子と付き合っていた。なお、私はサークルの男子とは付き合わなかった(笑)。
もうひとつは、彼氏のいない一年生の女子に対し、学年関係なく彼女のいない男子が告白するという「ゲーム」が行われることである。

この「告白ごっこ」は本当に最低だった。ターゲットとなる女子を決めたら、そのうちひとりが彼女を好きだということにし、男子が告白したあとの反応を観察するのだ。
これだけで最低なのだが、これに怒ったり、傷ついたりすると、先輩から
「そんなの冗談なんだから本気で怒っちゃダメ」
みたいに言われることがある(理不尽)。

被害に遭った一年生の女子が女性の先輩に訴えられるならまだいい。一番怖いのは、傷ついたまま、ひっそりと退部してしまうことである。
私が三年生だったときの話だが、夏までにほとんどの一年生の女子が退部した。理由については、ほとんどの子が、サークル以外にやりたいことがあるとしか言わないので、受け入れるしかなかった。そんな中で、一年間頑張って続けた陽子(仮名)という女の子がいた。この陽子も二年生になるタイミングで退部することになった。そのとき、彼女が私に電話をくれた。

陽子「このサークル、最低じゃありません?一年生の女子に告白して楽しむなんて悪趣味ですよ!みんな、それもあって夏前に辞めたんですよ」
「え?あいつら、まだそんなことしてるの?」
気づかなかった。おそらく、私のようなうるさいヤツの目の届かないところであいつらは悪趣味な遊びをしていたのであろう。

陽子「そうですよ!さっき、幹事長の山下さん(二年男子)に辞めるって電話したときに言ってやりました!告白ごっこは悪趣味ですよって」
「え?山下もやってたの?」
陽子「はい、私にじゃないけど、やったことあるみたいです」
「そりゃ、耳が痛いねー」
陽子「山下さんに言ってやったんですよ!あなたたち、自分がいい男だって思ってるんですか?たいしていい男でもないのにそんなことしても寒いだけですよって」
「何て言ってた?」
陽子「そうですね、すみませんって言ってました」
「あなた、すごいね(笑)」
陽子はしっかりしていて、男子の愚かな行為に突っ込みを入れたりできる。だが、ほとんどの一年生の女子は傷ついて不信感を抱き、黙って辞めるだけであろう。


「告白ごっこ」の裏には「あわよくば」の気持ちがあった

この「告白ごっこ」はたいていの場合、女子がサークルを辞めるという不幸な結果に終わる。サークルを辞めなかったとしても、被害者はサークルの男たちに気を許すことはないだろう。友達、仲間として仲良くしても、
「深く関わるのはめんどくさいから、恋愛対象にするなんてあり得ない」
と思ってしまう。
しかし、ごくまれに、告白された女の子もその気になり、付き合う展開になるカップルもいる。アホな男子が「告白ごっこ」をやる一番の目的はそれではないかと思う。
うちのサークルに入ってくる男子は、高校まで遊んでいないタイプが多かった。どうやって彼女を作ればいいかわからない。一方で、プライドが高いから、振られるのは嫌だ。だから、仲間と一緒になって誰かに告白し、もし振られたら
「冗談だよー」
と逃げる。
運良く付き合えそうであれば、ありがたく付き合う。
「告白ごっこ」は、彼らの自信のなさが滲み出た行動だったのだ。

男女関係で自信が持てない人生を歩んできたことや、プライドばかり高くて堂々と女子に告白できないようなチンケな人間に育ってしまった生育環境には若干同情を覚えるが、
「だからといって、女子を傷つけていいはずがないんやで?」
と言ってやりたい。
サークルの女子は、君たちが恋愛の練習台にしていい相手ではない。うちのサークルの1年生の女子は、男子と同様に、擦れていないタイプが多かった。告白されたら本気にしただろうし、それが「告白ごっこ」と知ったら傷つくし、怒るであろう。そんな反応に対して、
「怒るな、本気にするな、受け流せ」
というのはあまりに酷である。
早々に辞めた女子の中には、そのような心無い言葉をかけられてサークルが嫌いになった子もいるのではないだろうか。

これは、どこかに「サークルの女子は、サークルの男子の所有物」という意識があったから起こった事態ではないかと、いまになって思う。
サークルでは恋愛抜きで楽しく過ごさせてもらった私は、一緒に遊んでくれた彼らに対して感謝しているが、彼らの臆病さゆえの女子への言動については見過ごしたことを反省している。

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