読書録「悩む力」2011/2023
姜尚中「悩む力」(集英社新書)
偶然つけたテレビ番組に姜教授が出演し閉塞感漂う現代社会において、自らを肯定するには、如何に生きればよいのかについてお話しされいていた。
その中で著書「悩む力」の紹介があり、「自分一人だけが行きずまって悩みを抱えているのではない。むしろ悩みは至極当然なものであるから悩み続けることを良しとしよう」といったことを主張されていた。
放送終了後の翌日、大学書籍部で早速「悩む力」を購入した。
近代科学の発達により客観性が推し進められた結果、非合理的な宗教・伝統・習慣・文化・地縁的血縁的結合は剥落されていった。その結果、自己と他者とを結びつけるものが切り離され、「私」という単体が流出する個人主義の時代へと突入した。
個別に切り離された自我は確固としたバックグラウンドを持たないので自らを守ろうとするあまり肥大化してしまう。印象に残った言葉として、
「自分の城を築こうとする者は必ず破滅する」という箴言がある。
誰しも「自分の城」を頑強にすれば自分というものが確立すると思い込むが、それは自ら墓穴を掘るような行為なのだ。
なぜなら自我というものは他者との関係性において、すなわち「相互承認」によって生み出されるものだから自分を他者に対して投げ出さなければならない。この時、他者との関係性において悩みや苦しみがあり「所詮、人は分かり合えない」といった絶望を味わい、真面目な人ほど心身ともに疲弊し暗鬱となってしまう。
しかし中途半端なところで悩むことを放棄してしまうと自我を確立することも、他者を受け入れることもできない空虚な人間になってしまうと本書は説いている。
人生とは複雑怪奇なものだ。
まして「盤石な拠り所」を失ってしまった現代人は皆、不安で仕方がないから他人の顔色をうかがってばかりいる。裏切られたこともないのに裏切られることを恐れたり、つまりは自我が生み出す他者のイメージに怯え、自ら袋小路に陥ってしまう。
かくいう僕自身も悩みは尽きない。
でも、これは僕が生きている証だと捉えて引き受けていこう。
今日も皆様にとってよい一日でありますように。
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