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iakuの劇作家・演出家:横山拓也さんに創作について聞いてみた!(全4回)その3「横山さんの創作について」

iakuの劇作家・演出家:横山拓也さんに創作について聞いてみた!(全4回)その3「横山さんの創作について」

【山下】横山さんは、劇作をしているときに、よく作家さんって毎日のルーティンを決めていて、午前中を書くのに当てるとか深夜に書くとかっていうのがあるっていうのが、人によって違うじゃないですか? 横山さんは、そういうのが決まっていたりするんですか?

 

【横山】この何年かは、ずっと朝10時に家から徒歩10分の図書館に行って、そこからずっと夕方6時くらいまで書いて、家に帰ってくるっていう。

 

【谷】図書館が作業場なんですか?

 

【横山】そうなんです。執筆場所なんです。

 

【山下】いいですね。規則正しいですね。

 

【横山】そうなんですよ。自分の家に自分の仕事部屋作ったんですけど、全然集中できないんですよ。

 

【山下】家だと、できないですか。じゃあ、パソコンかなんか持ってやるみたいな。

 

【横山】そうです。

 

【谷】いつも席は替わっちゃう可能性もあるってことですか?

 

【横山】だから、開館に並ぶんです。パソコン利用席をおさえるために。

 

【山下】パソコン利用席って決まってますもんね。

 

【横山】決まってるんです。

 

【山下】お昼は、近くに食べに行ったりされてるんですか?

 

【横山】そうですね。図書館に喫茶店があったり、自分の奥さんが食堂をやってるんで、そんなに行かないですけど、たまに行ったりして。

 

【谷】「きさらぎ亭」ですね?

 

【横山】きさらぎ亭です。

 

【山下】桜新町。

 

【横山】どこの図書館かバレてしまいますね。

 

【山下】奥様が「セブンルール」(@関西テレビ)に出演されてるのを拝見して、たまたま知らなくて見たら、旦那が横山さんだということで、本当に衝撃を受けたんですけど。

 

【谷】僕も、衝撃を受けました。

 

【山下】大阪とちゃうんやと、そのとき初めて知ったんですよ。

 

【横山】妻の実家が、「きさらぎ亭」をご両親がやってて、高齢になってきて、ちょっと手伝いたいっていうことで東京に。それまでは、大阪に住んでたんですけど。

 

【山下】大阪に一緒に2人で住んでたんだけど、引っ越してきたってことですか?

 

【横山】はい。僕、どこで活動してもあまり変わらないから、東京に一緒に行こかっ、てことで行ったんですよね。

 

【山下】じゃあ、横山さんが東京でなんかやろかってことではなくて、家族の事情があったっていうのが、主に東京に出てきた理由なんですか?

 

【横山】そうですね。演劇をやるために東京に来たわけではないんです。

 

【山下】実際、出てきて、東京の演劇と大阪とでは全然違うんですか?

 

【横山】僕は、出てくる前から、自分の学生劇団からやってた劇団の頃から、東京の事情を知るためにけっこう遠征して、個人的に芝居を何本も見て、3日間来て7・8本見て帰るとか、調査をしてたんですよ。

 

【山下】事前リサーチは、抜かりないぞと。

 

【横山】そうですね。というのもあり、iakuを立ち上げたときに、東京を特別視しないという意思で、一地域として大阪から発信して、東京も福岡も東海地方も同じような見方で回っていこうというふうに決めて、iakuを立ち上げたんですね。iakuを立ち上げたあと、何年かしてから東京に移住して、実際東京でいろんな方に出会っていろんな方に見てもらえるようになって、東京という場所の見え方が変わりました。結局、一地域以上のパワーを感じてしまいました。

 

【山下】やっぱり、東京は特別ですか?

 

【横山】それをいうのが悔しいくらい、東京は特別でした。

 

【山下】僕も関西で、東京の制作会社に内定もらったから、大阪にいるか東京行くか悩んだんですよ。とりあえず、一生に1回やから行ってみようって行ったら、やっぱり特別だったですよね。

 

【横山】人の数が違うんですよね。分母が違うから、演劇1個発表しても、それを言語化してくれる人の数が全然違うんですよね。それが大きかったですね。

 

【山下】そうですよね。見に来る人も多いしね。やっぱり、そこが一番大きいのかな。

メディアの力なんかはあるんですか? 東京でやるからこそ、新聞とかに取り上げられるとか。

 

【横山】それは、関わってくださったスタッフさんの力があって、急にiakuがいろんなところで紹介してもらえるようになったんですけども、プロモーションの力っていうのを知りましたし、大阪にいたら多分体験できなかったいろんなところへの露出といいますか、事務所を知ってもらうってことの広がり方が、大阪と東京では違うんだなっていうのが実感として感じましたね。

 

【山下】逆に、東京に出て来られてから、大阪公演、『フタマツヅキ』とかあると思いますけど、大阪でやってみるとどんな感じなんですか? 印象としては。東京でのiakuが大阪で公演するっていうのは。

 

【横山】これは、僕もよくわからなくて。なにがよくわからないかというと、昔みたいにOMSでやってるとかABCホールでやってるとか、劇場を固定せずに、東京でおさえた劇場のサイズ感に合わせて大阪の劇場をおさえたりするので、あまり正しい統計が取れてないような気がして。公演をやるごとに入場者数もまばらで、増えてきたなって感じもしないですし。ただ、いえるのは、東京でやった評判が大阪にTwitterなんかで流れて、それで大阪のお客さんが見に来てるっていうことが、逆の現象がおきてるようなのは、最近よく感じます。

先に東京でやるっていうのが、ここのところずっと。

 

【山下】そうですよね。東京で発信されたら、その評判を聞いて。

 

【谷】量が違いますからね。

 

【横山】そうなんですよね。

 

【山下】逆に、大阪の公演は、日数が少ないけど、チケット取りやすかったんですよ。東京は、すぐ売り切れちゃったりするので、やっぱりすごいなって思いますよね。

横山さんは、劇を書くときは、iakuの作品で俳優は先に決まっててっていうようなのが多いんですか? 劇作が先にある?

 

【横山】戯曲全部書き上げるのは、さすがに無理なんですけど、プロットを立ち上げて登場人物表みたいなものができて。

 

【山下】そこが先に作られる。

 

【横山】概ね作ります。時々、主軸は決まってるけど、脇があいまいになったままオファーが遅れちゃうことはあるんですけど。

 

【山下】主なところは、プロットと登場人物があって、そこからもうキャスティングをされる感じなんですか?

 

【横山】そうですね。ほぼ自分でやりますね。

 

【山下】そうすると、そのキャスティングに合わせて書き進めていくと、当て書きをするっていうふうに思って大丈夫ですか?

 

【横山】ほとんど当て書きだと思います。

 

【山下】例えば、ずっとiakuに出ている橋爪さんとかは、橋爪さんだからいきてるよねっていうような感じが圧倒的にあるし、iakuに出る橋爪さんの魅力ってすごいじゃないですか。

 

【横山】ありがとうございます。

 

【山下】それは、やっぱりそういうのがあるのかな?

 

【横山】橋爪さんに関していうと、もちろん彼女にぴったりの役をお願いすることもあるんですけど、どの役やってもはまってくれるんですよね。

 

【山下】そういうのが上手いのかな?

 

【横山】上手いですね。

 

【横山】彼女とかは、今大阪にいらっしゃるんですか?

 

【横山】彼女も東京に出て来てます。

 

【山下】なるほど。

 

【谷】再演すると、別の役をやったりしてますよね?

 

【横山】例えば、この間パルコ・プロデュースで『目頭を押さえた』のときは、初演のときとは違う役で。

 

【谷】女子高生役だったのが、家庭教師役になってるってことですよね。

 

【山下】いろんな役をできるってことか。

ちなみに、横山さんはiakuの劇作以外に、外部の劇団に割と書かれてますよね?

 

【横山】そうですね。ありがたいことに。

 

【山下】これは、どういうかたちでオファーがくるんですか?

 

【横山】ここ最近の話ですよね?

 

【山下】そうですね。例えば、俳優座さんとか土田さんから誘われたりとか。

 

【横山】例えば、俳優座さんの場合は、俳優座の役者さんが確か戯曲を先に見つけてくださって、戯曲を読んで面白いと思ってくださって見に来てくれて、声をかけていただいて。新劇なんかは、まず次年度の企画を劇団内で通すことが必要なので、企画をもんで企画書を作ってみたいなことをしていただきましたし、土田さんとは昔からの繋がりもあるので。

 

【山下】それは、ものによってって感じですか?

 

【横山】そうですね。

 

【山下】文学座は初めてなんですか?

 

【横山】そうですね。文学座さんは、その前に2019年の『ヒトハミナ、ヒトナミノ』っていう作品を松本祐子さん演出で作ったんですけど、あれが今回の文学座さんの公演に繋がっているんですけど。

 

【山下】それは、松本さん繋がりということですね?

 

【横山】そうですね。そのときは、企画集団マッチポイント主催で松本祐子さん演出で、作家を探していて、祐子さんとも仕事でご一緒したときに台本を読んでいただいたりして「横山君いいよ」って、薦めていただいて。

 

【山下】そういった下地はあったっていうことなんですね。

 

【横山】はい。

 

【山下】自分の劇団じゃないときに書き下ろすときって「なんでもええよ」って、いわれるんですか? それとも「こういうのにしてくれへん?」って、いう感じなんですか?

 

【横山】けっこう、こういうテーマで書いてほしいっていうのが、最近多いですね。

 

【山下】そういうときに、自分は「そんなん、わからへんわ」って、すごく苦労するのか、テーマにもよるんでしょうけど。それとも、いろいろ調べたら「なんか書けるわ」っていって、書けるものなんですか?

 

【横山】書けるところを探します。例えばさっきいった、『ヒトハミナ、ヒトナミノ』は、介護のテーマにしてほしいっていわれて、その中で自分が興味を持てる箇所を探すといいますか。書けそうなところを見つけて、これで書きたいんですけどって逆に提案してっていうのはありますね。

 

【山下】そしたら、外部に書き下ろすときは、そこのやり取りが出てくるわけですよね? そのときに、葛藤がうまれたりとかっていうのはあるんですか?

 

【横山】題材に関しては、最初にいったみたいにちゃんとアイディアと合致すれば、正直書けるんですよ。その題材にまつわる人たちの、登場人物のイメージがたち上がって、例えば、こういうシーンは強いぞっていうのが自分の中で捕まえられたら、なんらかの興奮が1個でも発生したら書けると思います。

 

【山下】それは、こういうキャラクターがいて、この人たちがこういう会話をして、こういうストーリーの流れにしていくといけるんじゃないかって感じですか?

 

【横山】それもありますし、本当にラストの一場面の絵がパッと浮かんで、ここに持っていけたら成功するんじゃないかなとか、設定がこういう人たちにするために、こういうところで働いている人とこういうところで働いている人が出会ってみたいな設定を立ち上げていって面白そうっていうのもありますし。

 

【山下】それは、ケースバイケースなんだ。

 

【横山】ケースバイケースですね。

 

【山下】最後のシーンだけでいけそうだなってとき、モヤモヤしてるじゃないですか? そのモヤモヤしている感じをずっと持ってないといけないですよね? 作家さんって。

 

【横山】そこが書けるかどうかわからないモヤモヤですか?

 

【山下】そう。そのとき、僕なんかは割とすぐに構成をするんですね。自分が安心したいからやるんですけど、それをずっと溜めてる時期っていうのがあるんですか?

 

【横山】そうですね。そんなに僕は、パパパッと書けないので。

 

【山下】それは、我慢できる才能だと思うんです。

 

【横山】ただ、ラストシーンが明確につかまえられているときのほうが、勢いよく芝居が進むことが多いですね。

 

【谷】道筋が、ちょっと見えてるって感じなんですかね?

 

【横山】そうですね。

 

【山下】面白いね。創作って、0から立ち上げるじゃないですか。例えば、介護っていわれてもいろんな介護の仕方があるし。どんなのがあるかなって、最初にお考えになると思うんですね。で「これとこれやったら、いけるんちゃうか?」って、いうふうに思うところの、なにもない状態がすごく長いと、そういうときも横山さんは図書館に行ってパソコンをカチャカチャしながら考えるんですか?

 

【横山】図書館って、ありがたいことに本がいっぱいあるので、当たり前ですけど。散歩するように本の間をずっと歩いて、背表紙を見る旅をするんですけど。全然関係ない業界紙みたいなものも置いているので、そこの小さいエピソードを見たりとか、何か拾おうとはしますよね。

 

【山下】大きな資料室に毎日行っているってことなわけですね。

 

【横山】格好よくいえばそういうことですけど。

 

【山下】パッと出会うようなものが繋がると、これがアイディアになりますから、そういうことをやってらっしゃるんだな。

 

【横山】そうですね。

 

【谷】いい場所ですよね。

 

【山下】すごく覚えているのが、「セブンルール」(@関西テレビ)を見たときに、奥さんが「横山さんには、演劇の仕事に専念してほしいから」ってお話をされていて、すごいなと思ったんですけど。それは、たまものなんでしょうかね? 横山さんが今の仕事をできているのは。

 

【横山】そうですね。感謝はありますね。うちの奥さんもそうですし、もう亡くなっちゃったんですけど奥さんのお父さんもすごい人で、僕のことを「よっこん」って、ずっと呼び続けた人なんですけど。大学生のときから付き合いもあったので。「よっこんは、40まで好きなことをやったらいいんだ」って、ずっと言い続けてくれたんです。

 

【山下】いいお父さんじゃないですか。

 

【横山】そういう意味では、環境としてはありがたかったですけどね。

 

【山下】僕、この話と吉田羊さんの話がよく繋がるんですけど。吉田羊さんが、まだ売れない俳優だった頃にマネージャーが「あなたは、俳優以外の仕事はしちゃだめ。アルバイトとかしちゃだめよ」っていって、彼女が全部、いろんなお金を工面して。それで、吉田羊さんが売れて、マネージャーと2人で華々しく売れてきたっていう話を聞いて、そのエピソードとリンクしちゃうんですよ。だから、応援する人がいかに重要かっていうのが・・・。

なぜ、僕がこれをいったかっていうと、『フタマツヅキ』の妻に、それを感じたんです。「これ、横山さんのことちゃうか?」って、言い過ぎかもしれませんけど、僕はそう思っちゃった、知ってたので。

 

【横山】少なからず、これは僕だけじゃなくて、同じように小劇場の世界で頑張っている役者とか作家・演出家の様子を見ていても、皆、誰かに応援されていて、ちょっとチャンスみたいなものが必ず目の前に転がるんですよね。年に何回か。で、これをつかまえればいけるぞっていうのを皆信じながら、ずっとやり続けるんですよ。

これが、実はすごく苦しくて、それではねるってこともなかなかなくて。

でも、もう辞められないところに皆いてっていうのを、僕が代表して書きました。

 

【山下】本当に、小劇場界のリアルですよね。

 

【横山】そうだと思います。

 

【山下】声優の世界も、ちょっと近いところがあって。ここの学校は、声優の養成学校でもあるんですけど、やっぱり皆売れないときはバイトをしないといけない。バイトで、自分で生活はできるけど、そのバイトをすることによって、チャンスをもしかしたら見失うときがくるかもしれないっていうのが、多分あるんですよね。だから、そこのバランスがすごく難しくて、そういう好きなことをやっていても生活していけるような社会の仕組みを作るといいなと、すごく思うんですけどね。

 

【谷】そうだったんですね。『フタマツヅキ』はね。

 

【山下】いや、僕はそう見たってことですよ。だから、いろんな見方があるから。

 

【横山】いくつかの要素の中の1つには、それはあるかもしれないです。

 

【山下】それは、私の見方で、谷さんの見方じゃなくても全然OKです。私は、それがリンクしちゃったの。だから、ブログにも書いたし、それはすごく思いました。

 

 テキスト起こし@ブラインドライターズ
 (http://blindwriters.co.jp/

 

担当者:江頭実里

この度は、ご依頼くださいまして、ありがとうございます。

横山さんが、図書館にある本の背表紙や業界紙などからアイディアを得ることがあるというお話をされているのを聞き、作家さんやなにかを生み出す仕事をされている方が、日常生活の中からアイディアを得ることがあるという話をよく聞くことを思い出したのですが、実際に、ご本人が「このようなかたちでアイディアを得ている」と、具体的に話していらっしゃるのをお聞きする機会が、私にはこれまでになく、全く関係のない業界紙などからも着想を得ることがあるということなど、いくつも驚きを感じながら作業しておりました。

プロの劇作家の方が、普段どのように執筆していらっしゃるのかという貴重なお話を聞き、それを文字に起こすという役目を担うことができて光栄でした。

ぜひ、次回もよろしくお願いいたします。

 

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