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いま小劇場は何を見れば面白いのか?(その3)

TFCラボ プレゼンツ 『みんなで語る小劇場演劇』


TFCラボ プレゼンツ 『みんなで語る小劇場演劇』

【山下】これはカルトなものということで、演劇でしかできない表現があるということで、最近、僕と谷さんが積極的に観ているものと、そうじゃないものもありますけど、ご紹介していきたいと思います。山下、谷、お薦めの、これはぜひ観てほしいというのが、

「東葛スポーツ」どうですか、谷さん?(※金山寿甲)カナヤマジュコウさんと言うんですか?

【谷】カナヤマスガツと読むんです。

【山下】金の山に、寿に、甲、カブトというね。

【谷】甲子園の甲ですね。

【山下】甲子園の甲と書いて、金山寿甲、カナヤマスガツさん。が、作、演出なんですけど、これを初めて観に行ったのは、秋葉原の、ほしゅの……、ほしゅの時代……?

【谷】『ほしゅのリゾート』。

【山下】そうだ、思い出した。『ほしゅのリゾート』を観に行ったんですね。

【谷】僕は、その前に、根本宗子が出たやつが初めてだったんです。

【山下】じゃあ、東葛スポーツ先輩として、いかがでしょうか、東葛スポーツは(笑い)?

【谷】ラップの世界なんですよね。まず注目すべきは、オープニングからすごい映像を流していたりするし。

【山下】すごいですよね。ちょっと言えないですよね、あんまり詳しくは。

【谷】あとは、早い者勝ちなんですよね、座るのも。整理番号とか関係なくて、早くに行った人が勝ちということで。

【山下】だから、並んでいるときありますよね、開場前にね。

【谷】だいたい、普通30分前から整理番号順とかいうんですけど、そんなのなくて。

【山下】とにかく並んだもん勝ち。分かりやすいね。

【谷】だから、早めに行かないといい席は取れないけど、まあ、そんなに早く行くことはないんですけど、一緒によく行く博報堂の方は、必ず最前列の真ん中で観ないと駄目だというので、そこに座ると。椅子じゃない席に座ると(笑い)。

【山下】こだわりがすごいですね。とにかく、いろいろ、新しいことをやって。わりと社会への批評性が強い。

【谷】シニカルですよね、すごくね。

【山下】昔で言うと、ニュースペーパーカンパニーとか、松元ヒロさんとかが似たようなことをされていて、テレビでほぼオンエアできない……。

【谷】まあ、無理ですね。

【山下】オンエアするとすれば、テレ東ぐらい?

【谷】テレ東でも無理だと思います(笑い)。全部「ピー」が入りますから。

【山下】そうすると、オンエアできるところがないと。

【谷】放送事故になっちゃうと。生は絶対できないです。

【山下】まあ、いろんなところから。放送倫理審査会にかかってしまうくらいの。

【谷】そうすると、全部出禁になっちゃうんで。

【山下】これが観られるのが、演劇の、演劇らしい……。

【谷】たるものですよね。

【山下】秘密の部屋に入ったような感じで。

【谷】秘密クラブですよね、これね、ある意味ね。

【山下】もう、本当にこんなのやっていいのかというようなことをおやりになる。

【谷】あんまり詳しいこと言っちゃうと、楽しみがなくなっちゃうんで、ぜひ足を運んでいただくといいと思うんですけどね。東葛スポーツ。東京スポーツからきているんですかね?

【山下】ああ、東スポ。

【谷】東スポ性があるじゃないですか、内容も。

【山下】ああ、東スポっぽいね。東スポの感じは、ちょっとあるかな。だから東葛なのかな。でも、出身が葛西とか、あっちのほうなんですかね、東葛だから。

【谷】そうなのかもしれませんね。最近、だから、北千住の稽古場で公演を何回か、ここ最近でやっていますよね。

【山下】コロナで中止になったりしていて。

【谷】『オリンピック』が中止になったんですよね。

【山下】『オリンピック』という公演があって、楽しみにしていたんですけど。

【谷】本当にオリンピックの開幕式の日に開幕する舞台だったんですけど、中止になっちゃって(笑い)。

【山下】コロナで。公共劇場でやるからなかなか。

【谷】今度12月の4日間か5日間、またそこの北千住でやりますけどね。

【山下】でも、『オリンピック』じゃないんですよね。

【谷】『支援金をもらうためにやる会』とかなんか、そんなタイトルでした。
(※『A-2活動の継続・再開のための公演』)

【山下】いいですね。それ、面白いですね。

【谷】必ず全員自己紹介が、黒いサングラス掛けて、ラップでやるんです。

【山下】暗いサングラスで、ラップでやって、川崎麻里子さんがMCをします。

【谷】あと、ロロの森本華さんが……。

【山下】森本華さんもいつも出ていますね。

【谷】今回も出ますね。

【山下】あの二人は、だいたい、ほぼレギュラーで。ときどき有名な俳優さんで、あの人、誰だっけ?

【谷】光浦さんが、このあいだ出ていましたね(笑い)。

【山下】光浦靖子さんが、光浦靖子のネタとして光浦靖子が出るという、すごいね、あんな有名人が出るという。しかも稽古場で上演……。

【谷】光浦さんがラップやるわけですからね(笑い)。すごいですよ。

【山下】いや、そこまでやっているので、やっぱり好きな人は好きで、光浦さんが出るような力があるということなんですね。ほんと、金山さん、素晴らしいです。谷さんでしたっけ? ツイッターかなんか教えてもらって、金山さんのやっているやつ。

【谷】あ、noteね。

【山下】面白いですね、あのnote。

【谷】フォローしてチェックするといいと思います。ラップもちゃんと聴けますし。やっていますので、音付きで聴くと、なかなかいいですよ、あれは。

【山下】東葛スポーツ、金山さん、才能すごくあると思います。

そして、同じ括りでは全然ないんですけど、鎌田順也さんという人がいて、
ナカゴーとかホリブンというのを主宰している方がいるんですけれども。

【谷】もともとは、ナカゴーですよね。ホリブンは、鎌田さんと、川上友里さんと、もう一人の人で……。

【山下】そういうユニットなんですね。

【谷】だけど、出る人はまた別な、いろいろなんですけどね。

【山下】ということは、ナカゴーでいろんな話を、最初、立ち上げられたと。

【谷】そうです。そこに、東葛にも出ている川崎麻里子さんがいると。

【山下】そうか、川崎麻里子つながりでもあるのか。なるほどね。鎌田さんも、物語が不思議な感じで、『牛久沼』でしたっけ?

【谷】牛久沼にただ一匹だけいるうなぎの争奪戦とかね。あと、『飛鳥山』とかね。

【山下】『飛鳥山』ね、北区のね。北区の話、よく出てきますよね、この人。

【谷】だって、北トピアでだいたいやりますから。

【山下】王子ね、北区王子。

【谷】それはホリブン公演ですね。ナカゴーは、なんか変なとこで……。

【山下】この前、阿佐ヶ谷でやっていましたね。

【谷】このあいだ、本当はゴールデンウィークにやる予定だったのが、ナカゴー、ホリブン公演が、1日、昼、夜、ナカゴー、ホリブンというね。

【山下】ナカゴー、ホリブンを1日で観る!

【谷】楽しみにしていたんですけど、見事に飛びましたね。

【山下】意外とチケット代も安いですよね。2500円とかで観られちゃう。

【谷】なんか、チケットじゃないんですよね。チケットがない(笑い)。

【山下】あ、そうか。チケットは手に入らないというね。

【谷】整理券で、「2」とか書いてあるのだけもらえる(笑い)。

【山下】川崎麻里子さんとか、チケットの受付もされるし、一人何役もされていますよね、すごいですよね。ぜひ観てください。これ、最初、教えてもらったのが、山内ケンジさん、さっきの、城山羊の会の。これはすごいですって。何がすごいか観てくださいと言われて、びっくりしましたけど。

【谷】このあいだ、配信でやっていましたね。昨日、おとといくらいまでだったのかな。有料配信でしたけど。僕は時間合わなくて観られませんでしたけど。ナカゴーでね。

【山下】鎌田さんも天才ですね。

【谷】船堀なんとかですよ。

【山下】あ、船堀、「船堀の怪談」ですね。。観に行きましたよね。
続いて、庭劇団ペ二ノ、タニノクロウさんという方が作、演出をされているんですけど、谷さんも結構最近ご覧になっていますよね?

【谷】そうですね、結構ハマっていますね。

【山下】美術がすごいですよね。

【谷】美術もすごいし、物語もいいですよね、すごくね。この方は精神科医ですよね。

【山下】医師免許を持っていて、奥さんが女優さんの安藤玉恵さん。医師免許を持っているんだけど、どっかの勤務しているわけではなくて、パートタイムで収入を得ていらっしゃると以前は聞きました。昔、手術の芝居とかあったんですよ。手術をするという芝居があって、よくマメ山田さんとか出ていて、背の低い方なんですけど。

【谷】マメさんは、『地獄谷温泉 無明の宿』か。

【山下】僕、それ、ちゃんと観ていないんですよ。それ、どうでした?

【谷】いや、素晴らしい美術で、回る美術なんですよ。2階建の。

【山下】舞台が、回転すると、2階建で。2階建で回転するのはすごいですね。

【谷】本当に温泉宿で、言っちゃうと、全裸なんですよ。

【山下】お風呂だからね。

【谷】役者が全裸で何も隠さず出ていたという。まあ、マメ山田さんもいましたけど。

【山下】お風呂に入った?

【谷】お風呂に入っていましたし、一番すごかったのが、日高ボブ美という、□字ックか、□字ック解散しちゃったけど、あの人が、ほんとに、まあ見事な全裸でした。

【山下】独特な美意識があって、本当に不思議な。お線香焚いたりとかなんか、それは違うやつなんでしたっけ? それもタニノクロウさんのやつですよね?

【谷】それは、なんだっけな。お線香というか、火を焚いていたんですよね。だから、シアタートラムは、たぶん、それで駄目になっちゃったんじゃないかなと思って。

【山下】上演できないと。消防法がありますからね。

【谷】あとは、このあいだ一緒に観たのが、『笑顔の砦』って。緒方晋さん、ススムさん、シンさんというのかな? あれは人情もので良かったですよね。

【山下】あれは、全然違う、タニノさんの中では、ペ二ノの美意識が高い作品とはまた違う、あれは漁師の話とかね。

【谷】片方の家では介護が行われ、片方の家では漁師が集まって(笑い)。

【山下】漁師が毎晩集まって呑んでいるという。

【谷】すごいですよね。

【山下】でもすごくリアリティーがあって。タニノクロウさん、こういう幅があるんだって、僕、あれ初めて観て、びっくりしました。

【谷】ちょうどコロナのころに、無料で配信してくれていて。なかなか良かったですよ。

【山下】良かったですよね、あの舞台は。『笑顔の砦』ね。
で、最近あんまりやっていらっしゃらないですけど、ポツドールという劇団があって、ポツドール自体は、もう、今、やっていないのかな。三浦大輔さん。
この人も、映画も撮られてますけど、独特な世界観で、わりとエロをちゃんと描いて。

【谷】僕は3本くらいしか観ていないんですよね。最初、横浜ベイスターズの、ハマの番長かと思ったら、同姓同名なんですよね。ピッチャーで、今はコーチか。

【山下】全然違う方の三浦大輔さんなんですけど、僕が最初に観たのが『騎士(ナイト)クラブ』というやつで。

【谷】僕は『ストリッパー物語』。

【山下】それ、つかこうへいさんの戯曲かな。

【谷】つかさんのかな。門脇麦かなんかでかな。

【山下】『娼年』とかは観てません?

【谷】『娼年』は観ました。

【山下】『娼年』は、娼婦の娼に、年かな。

【谷】松阪桃李。あれはすごい方ですね。

【山下】春を男の人が鬻ぐというお話なんですけど。

【谷】ずっと双眼鏡で観ていました

【山下】それくらい、ちょっとエロスというのをストレートに描くというやつなんですけど、僕が観た『騎士(ナイト)クラブ』というのは、男の人が、わりとブルーカラーの人たちが、アパートで毎晩ぐうたらしていて、隣のアパートを覗き見していると、そこに若い女の人がいたと。じゃあ、この女の人を捕まえてきて、そこで強姦してそれをAVにしてビデオに撮っちゃおうと。

【谷】やばいじゃないですか(笑い)。

【山下】ものすごい話でしょ? それを、王子、今、花まる学習会の劇場になったんですけど、そこで観て、僕はほんとに衝撃を受けて、それで、これネタバレになるんですけど、最後にその女の人が「じゃあ、あの」と言って、強姦されたあと、「シャワー浴びてきます」と言ってなかなか出てこない。そしたら、カミソリで手首を切って自殺をしていたという。

【谷】すごい。

【山下】ものすごいインパクトがあったんですね。それが『騎士(ナイト)クラブ』というやつだったんですけど、それを観たときに、もう立ち上がれなくて、だから、これはほんとに、もう、こんなの観たくないという人も、たぶん、出てくると思います。

【谷】そうでしょうね。『愛の渦』もそうですよね。

【山下】そうです。『愛の渦』は映画になりましたけどね。

【谷】だけど、舞台もやっていますよね。

【山下】やっていますよね。『愛の渦』の舞台もすごかったです。乱交?

【谷】乱交パーティーみたいな感じですよね。合意で来て。

【山下】合意の、デートクラブみたいなところがあって。これは映画になっているからね。さっき言った大根仁さんが演出して、4日で撮影したっていう、すごい話なんですけど。あのとき、門脇麦ちゃんとかが出ていたのかな。

【谷】池松壮亮も出ていました。

【山下】本当に三浦さんはそこの深いところをえぐっていくところが衝撃的で、THEATER/TOPSがなくなる前に、ポツドールの公演は若い男女でぎゅうぎゅうだったんです。そこで、「男の夢」という舞台とかで、男女がセックスをいろんな部屋でするみたいなことをやっていて、まあ、これも演劇でしかできない。

【谷】まあ、そうですね。

【山下】これ、放送はなかなかできない。

【谷】できないですよね。だけど、『娼年』は映画にはなっているんだな。キャストが違うんだな。

【山下】たぶん、そうでしょうね。演出も、監督は、三浦さんがおやりになったと思います。カメラマンは田中創さんという方がやっていて、CMもよく撮られている方なんですけど。

【谷】僕、観たのは、『母に欲す』というやつで、銀杏BOYZの峯田さんが出ていて、池松さんも出ていて。

【山下】秋山菜津子も出ていましたね。

【谷】かな? それと田口トモロヲ、お父さん役で。

【山下】パルコ劇場ですよね。あれ、面白かったですよね。

【谷】あれ、良かったですね。

【山下】三浦大輔は、本当すごい人なんですけど、その田口トモロヲさんの所属する事務所のMASHの、太田さんという社長さんがポツドールを観て、これは、なんとか私が面倒見ないとというんで、三浦さんは現在、マッシュに所属しているということでございます。そのポツドールによく出ていたのが、安藤玉恵さんなんですね。安藤玉恵さんも、ものすごく激しいお芝居をされていて、私の30代40代のときのインパクトも衝撃も半端ないという、カルトな劇団のご紹介でした。

【谷】最近、見ないですよね、三浦さんね。

【山下】最近はされていないですね。でも、この前、オンラインでやったんですよ。オンラインでやったやつも面白かった。売れない俳優さんが集まって、というのを観て、これはまた面白かった。三浦大輔は、全然あの強度は衰えていないです。
(※銀座九劇アカデミアワークショップ 「『映像』『舞台』両方できる役者になるⅡ」/2020.7.15~8.6)

【谷】ありましたね。僕、観なかったけど。

【山下】僕、自宅でちょうど観ていて、面白かったなと思っていたんですけど。三浦大輔も、ぜひ観てみてください。で、『笑の大学』は、ちょっと記憶が飛んでしまったので。

【谷】僕は全く知らないです。

【山下】反社会勢力のヤクザの話とかを書いていて、ヤクザの人って、暴対法の法律で銀行口座が作れない。そうすると、保育園とかにも入れないというので、そういう話を書いたりとかしていました。

で、テント芝居とか野外公演も、密が避けられるのでとてもいいんですけど、テントは逆に密になっちゃいますが、谷さんは、何かご覧になったものあります?

【谷】そういう意味では、ここに書いてある、『マハーバーラタ』をSPACじゃなくて、その下に書いてある池袋のグローバルリング シアターで、雨の中、びちょびちょになりながら、カッパ着て観ました。

【山下】きれいですよね。

【谷】すごい寒かったです。

【山下】僕は、SPAC、静岡で観たんですけど、静岡城の近くに、この左下に写真がありますけど、こういうセットを組んでやっていましたけど、すごいきれいですよね。海外の人が見ても、「なんかこれいいな」って。海外公演も、SPACは、宮城聰さんという人でやっていますが。

【谷】あとは、山下さんと三浦さんと一緒に行ったのが、椿組の……。

【山下】花園神社でしたっけ?

【谷】花園神社の特設テントでしたね。

【山下】あれも面白かったですよね。

【谷】あれは、だけど、ちゃんと席があって。

【山下】椅子があって。

【谷】ちっちゃいですけどね。中上健次の三部作をやったと。

【山下】地べたに座るのは、だんだん年とってくると観るのがちょっと疲れちゃうんですけど。

【谷】足が痛くなっちゃうんですよね。

【山下】唐組とかだと、後ろの1列だけ椅子席があるんですけど、そこに座れないとちょっと厳しかったりとか。ただ、若いときは、全然大丈夫です。
僕、学生時代、大阪で、大阪駅の前に空き地があって、そこで初めて唐組を観たんですね、赤テント。そのときも、谷さんが言った大雨で、下に浸水してきて。今の妻と一緒に観に行ったんですけど、それはそういう経験したので、ずっと覚えているわけですよね。そういうのはありますよね、寒かったのを覚えていたりとか。

【谷】だから、花園神社もすごい印象はありますよね、暑かったし。ちょうど暑くなったね、寒い夏だったけど、その前日から暑くなっで。

【山下】急に暑くなったよね。それで、うちわを配ってもらったんですね。うちわが配られて、うちわであおぎながら、もう今だと考えられない密なところで。

【谷】ビールも売っているけど、ビール飲むとトイレ、行けないし(笑い)。役者さんも大変ですよ、あれは。もう、汗だくになってやっていましたよね。

【山下】楽屋とかもないしね。でも、独特な演劇体験ができるという意味では、観に行くと覚えていますよね、逆に。

【谷】だから、あのときの、ちょっと名前、今、ド忘れしちゃいましたけど、主人公が赤鬼に出ていて、赤鬼のBチームだったのかな、出ていたんです、そのBチームを選んで、『真夏の夜の夢』にも、先ほどの野田さんのやつにも出ていたんです、加治将樹という俳優さんがね、なんかすごくっ魅かれちゃうんですよね。ちょっとポッチャリ体型の、太めの方なんですけど、すごく魅力ある役者さんですね。

【山下】あと、水族館劇場というのがあって、これも自分たちでセットを組んで、右下の写真、そうなんですけど。これは、僕の知り合いの知り合いがちょっと関わっていて。ここは水をすごく使うんですね。上から水がブワーッと下りてきたりとか、そういうのはなかなか……。

【谷】唐十郎さんみたいですね。

【山下】唐さんもやっているんですけど、こういう屋外とかテントだからこそできるみたいなのがあるという。松本雄吉さん亡くなっちゃいましたけど、維新派というのがありまして、維新派はいろんなところで野外公演をやっていて、そうすると、行って、そこで観るという体験が、やっぱりすごく記憶に残るみたいなのがあって。昔、汐留が開発する前に、維新派がそこでやっていたりして。あと、大阪の南港とかでもやったりとかしていて、観に行ったんですけど、本当に行くと記憶に定着するという。独特な野外公演も、ぜひ観に行ってください。

で、ちょっと最近のあれなんですけど、昔、新劇と呼ばれた劇団が、小劇場演劇の作家と一緒に組んで、いろんなことをやっています。文学座はアトリエ公演があって、いろんな新しい作家とやっていますけど、古川さんがお書きになったやつも良かったですよね。

【谷】あれは、文学座でしたっけ? 俳優座?

【山下】アトリエ文学座。俳優座もあったけどね。俳優座は、歴史ものだったかな、アレ。俳優座は六本木にあって、

【谷】稽古場でやりましたよね、あのときはね。

【山下】そうです。俳優座の稽古場でやったのも観に行きました。

【谷】文学座は、戌井昭人さんのやつも観ましたよね。

【山下】鉄割アルバトロスケットの。

【谷】アレも良かったな。本が良かったですね。

【山下】文学座のアトリエ公演とかは、そんなに高くないし、文学座の昔ながらの木造の劇場で。

【谷】あれは、歴史的な建築物なんですってね。このあいだ新聞に出ていました。

【山下】だって、文学座できて、もう100年近いですもんね。だから、もしかしたら、戦後直ぐに建てられたものかもしれませんけど、独特な感じがあって、音の反響が木造だから、なんかちょっといいな。

【谷】ちょっと横長なんですよね。

【山下】なんかふわっとしていて、それがいいと思っているんですけど。まあ、こんなところもやっていますよということで、

続いて、演劇賞と劇評などということで、いろんな演劇賞がありますが、朝日新聞は予算削減でなくなっちゃったんですけど

紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞、岸田戯曲賞、鶴屋南北賞とか、
ありますが、谷さん、こういうのをときどきチェックされたりするんですか?

【谷】岸田戯曲賞はすごく注目していますよね。去年が……。

【山下】谷賢一だ。

【谷】谷賢一さんがダブル受賞だ。

【山下】鶴屋南北と岸田國士と。

【谷】市原佐都子さんも岸田賞?

【山下】市原さんとダブル受賞だった。二人受賞したんですね。

【谷】そういう意味で、今、問題になっていて、男性ばっかりが選者になっているというのが問題になっていて、柳美里。あの人だけがなっているのかな。あと、平田オリザさんと、ケラリーノ・サンドロヴィッチと、松尾スズキと。

【山下】錚々たる。すごいですね。

【谷】錚々たるメンバー。あともう1人2人いたかな。

【山下】白水社というところがやっているんですね。

【谷】だけど、アレ、観ていないんですって、みんな、芝居を。

【山下】戯曲だけ見るんですね。

【谷】戯曲だけ見て評価をするんで、だから、すごく、それでどう自分で読み込むかというところが……。

【山下】戯曲だから、でも、読めるんじゃないですか、結構、記憶が。だから、演出家じゃない人が読んだらよく分からないってなっちゃうかもしれないね。

【谷】あと、野田秀樹も入っていますよ。

【山下】すごいですね。

【谷】あと、松原さんは、今回辞退していますね。

【山下】松原俊太郎。

【谷】あ、松原さんじゃない、ごめんなさい。三浦基だ。
  (※松原さんでも、三浦さんでもなく、宮沢章夫さんでした)
【山下】これ、でも、読むのも大変でしょうね、岸田戯曲賞。

【谷】どのくらいから選んでいるのか分からないですけどね。元は誰が選んでいるのか分からないですけど、どういう拾い方しているのか。

【山下】なんか、出版されたものに対してということなんですかね。

【谷】そうなのかな?

【山下】違うのかな?

【谷】いや、獲ると出版は決まりますよね。

【山下】じゃあ、送るのかな? ちょっと調べてみたいと思いますけど。
(※「白水社」HPより 以下 引用;選考対象は、原則として1年間に雑誌発表または単行本にて活字化された作品とする。ただし、画期的な上演成果を示したものに限って、選考委員等の推薦を受ければ、生原稿・台本の形であっても、例外的に選考の対象とすることがある。)

あと、読売新聞は、読売演劇大賞、半期で1回中間報告するんですね。それを見ると、「あ、ほとんど観ていない」とか私はよくあるあるなんですけど、どうですか、谷さんは?

【谷】いや、結構観ている作品が入っているとうれしいもんですね。

【山下】うれしいですよね。観ていないと悔しくないですか、逆に?

【谷】悔しいです。「ええ、これかよ。ああ、俺、駄目だな。見る目ねえな」と思って。

【山下】一期一会だから。「わあ」という感じでね、なんか人生損したみたいな感じになるんですよね。

【谷】紀伊國屋(演劇賞)くらいだったらまだ許せるんですけど、読売演劇大賞を見逃していたら、ちょっとショックですよね。岸田賞はちょっと登竜門的なところはあるから、まだわかるんですけどもね。

【山下】新人発掘的なものはありますからね。

【谷】ちょっと読売は……、ショックが大きいですよ(笑い)。

【山下】でも、こういうので、また再演したら見に行ったりとか、「アレ、賞獲っているから行こう」とかというのはあると思います。あと、新聞ね、劇評の。

【谷】ちょっと、劇評だから、どうしても時期がずれちゃうんですけど、売り出しのやっている最中なんで、地方公演も含めて、劇評は書かれていると思うんで、終わっているものはあんまり書かないんで、やっている最中のものを書いてくれるんで。毎週木曜日と書いてありますけど、読売だけは火曜日ですね、今。

【山下】読売は火曜日で、朝日と毎日は木曜日なんですか?

【谷】木曜日で、僕が一番尊敬する人は、毎日新聞の濱田元子さんという人の劇評は素晴らしいですね。もちろん、決して否定とかマイナスの要素は書かないんだけど、内容が素晴らしい読み方していますよね、見方をしている。

【山下】濱田さん、ここ来てくれないかな?

【谷】どうでしょうね? 新聞記者だから、そういうのはどうなのかというところで、副業的なのはとこはね。

【山下】こういうのは駄目ですとかって、あるのかな。

【谷】僕、1回アフタートークで徳永京子さんとやられて……、出られて……。

【山下】どんな人なんですか?

【谷】普通の女性ですよ。上品な方です。

【山下】年齢的には、アレですか?

【谷】ちょっと上かな? 論説委員かなんかじゃないかな?

【山下】やっぱり偉い方なんですね、なるほど。

【谷】文芸系では1番上じゃないかな、あの人が。読売は、祐成(スケナリ)さんと読むのかな、男性なんですけど、その人の劇評がやっぱりいいですね。毎日も濱田さんの弟子が、今、いて、その人がたまに書いていますよ。朝日はいろいろな人が書いて。徳永京子さんも書いてますね。あと、藤谷さんも。

【山下】藤谷浩二さんかな。

【谷】だけど、やっぱりあれを見て、改めてそういう見方ができる、「あ、こうだったんだ」というのもあったり。

【山下】あと、観に行く前だと、これ、読んでから、「じゃあチケット取ろう」とかって、僕はわりとそれが多かったかな。

【谷】それ、ありますよね。「ああ、これ、じゃあ、観たほうがいいんだ」とかね。

【山下】そう、そう。そうなんですよ。谷さんは、ちなみに、全国紙を毎日読まれています。これは業務を含めてですけど。日経も読まれていますか?

【谷】日経も読んでいます。日経もたまに……。

【山下】日経は、劇評はあるんですか?

【谷】あります、あります。何曜日だか、不定期なんじゃないかな。

【山下】じゃあ、読売、朝日、毎日はちゃんと毎週出している、コンスタントに。

【谷】東京新聞は、たまに出るくらいかな。話題作みたいなのがたまに出る。産経はほぼないかな。

【山下】産経は、劇評書かないんだ。

【谷】書いていないですね。記事としてたまに出るくらいじゃないですかね。

【山下】夕刊のないところは、劇評もなかなかあれだし。

【谷】みんな、夕刊は無駄だとか言う人いるんですけども。

【山下】夕刊大好き。

【谷】僕は、夕刊、ほんとに大好きなんですよ。

【山下】面白いですよね。

【谷】アメリカとかって、夕刊ないじゃないですか。だから、うちの奥さんなんかもいらないって言っているんですよ、夕刊はいらないって。

【山下】ええ? 値段そんなに変わらないじゃないですか。

【谷】だけど、あれないと、僕の人生半分捨てたようなもんだと。新聞の値段は夕刊で決まるというね。「薄いじゃない」とか言う(笑い)。

【山下】あと、三谷さんのコラムも朝日の夕刊に載っていますからね。毎週木曜日ですよね、あれもね。

【谷】あれもいいですよね。あれ、すごいですよね、続いていますよね。

【山下】いや、すごい、あの人。続けられるの、すごい。

続いて、これは皆さんに、私からのメッセージなんですけど。
これ、谷さんともよく話するんですけど、
栗山民也の『演出の仕事』という本があって、
公共性のあるものはみんなで守ろうというようなことを彼が書かれていまして、
で、人間には3つ健康を保たないといけないものがあるというので、
体の健康、これは病院ですよね。で、頭の健康、教育、学校ですよね。
で、心の健康は、劇場だと。
劇場とか、芸術、アートを守らないと、心の健康は保てないというふうに、
栗山さんがおっしゃっていて、今、本当にコロナ禍で大変なので、
いろんな基金も出てきています。みんなでこういったたかたちで、
守っていきたいというふうに思っています。
ちょっと説教くさくなってしまっていますが、
僕が初めてこの栗山さんの文章読んだときにびっくりしたので、
ちょっと皆さんにお伝えしたいと思いました。

もう1つ、これ井上ひさしさんの言葉で、演劇とはということで、
こまつ座の1989の9月号の出典なんですけど、
井上さんは演劇を描くときに、

「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、まじめなことを愉快に、そして愉快なことはあくまで愉快に」

というふうに書かれて、それを実践されていったのではないでしょうか。
山形に僕は2年に1回、必ず行くんですが、
山形に行くと井上ひさしの記念館みたいなのがあって、実は1度も行けていないのですが……。

【谷】アレ、だけど、危機なんですよね。

【山下】そうなんです。洋菓子屋さんがやっていて、シベールという。

【谷】そこが引いちゃったのかな。

【山下】そこが、経営がちょっと苦しくなって。

【谷】後継ぎがいないんですよね。

【山下】そうなんですよ。そこも、だから、逆にさっきのことじゃないけど、それを守るためになんとかしたいというふうに思うんですけど。こまつ座も、公演もコンスタントにいろいろやっていて、今回は、こまつ座の紹介はしませんけど。谷さんは、ご覧になっています? 井上ひさしのなんか。

【谷】観ています。

【山下】本当にこういうような先輩がいて、もちろん『ひょっこりひょうたん島』の作者としても有名なんですけど、演劇の先人としてすごい言葉を残されたと思います。

で、最近コロナ禍になって、
松尾スズキさんがシアターコクーンのホームページで発信した言葉が
すごい印象に残っているんですけど、こういう舞台芸術というのが、そういうのいらないんじゃないのとかというふうに言う人もいるかもしれませんが、松尾スズキさんは、こんなことを書かれています。

「人間はなくてもいいものを作らずに、そして作ったものを享受せずに生きられない生きものだと、私は思っている。(中略で、)かつて、野猿というグループが解散したとき、もう生きていなくていいやとばかりに自殺した女子高生2人組がいた、と。
人は、ともすれば、野猿が解散しただけで自殺してしまう生きものだと知り、戦慄したことを覚えている。生半可な気持ちで、自分に必要のないものなどなくていいとは言い切れない。しかし、人は命がけで暇を潰しているのだ。」

この、命がけで暇を潰すというのはすごい言葉だなと思って。松尾スズキさんの演劇に対する、なんか、こう、気迫を感じたんですけど、コロナで、本当に、今、舞台芸術が大変なことになっていますが、やっぱり生で観るといいですよね。

【谷】ええ、いいです、いいです。

【山下】オンラインの良さも、もちろんありますし、安く観られるというのもあるんですが、やっぱり実際の空気を同じくして観ていくのはすごくいいと思いますし、何か、谷さんも、これで感じるようなことはありますか?

【谷】栗山さんの言葉、いいですね。心の健康って、まさにそうなんだろうなと思って。

【山下】やっぱり、アートがないとですよね。
なんとなく心が満たされない人というのはたくさんいるんじゃないかなって。それは、舞台芸術だけじゃなくて……。

【谷】いろんなところにアートはありますから。

【山下】音楽もそうだし、美術もそうだし、建築もそうかもしれないですね。

【谷】そうですね。建築もいいですね。

【山下】今度、KADOKAWAが所沢のほうに……。

【谷】サクラタウンでしたっけ?

【山下】それで、今度行こうと言っているんですけど、隈研吾さんが作った、石で作った建築、知ってます?

【谷】なんかで見た気がしますね。

【山下】それも、すごい面白いの作った。その中が本であふれ返っている。で、松岡正剛さんがそれをレイアウトしてという。もう楽しみにしていますね。

【谷】チョイスもしたんですか?

【山下】そうなんです。キュレーションしていて、こういうコーナーで。昔、丸善かなんかの上に松岡正剛のコーナーがあったんですけど、それをものすごく大きくしたみたいなやつで。

【谷】所沢ですっけ?

【山下】所沢のほうです。西武池袋線とか言ってたよな。宮下俊さんがそこを全部仕切っているという。

【谷】今、うちの人間が、今井君が……。

【山下】出向している? あ、今井。今井久。

【谷】出向して、楽しそう。

【山下】ということで、谷さんと二人でいろいろと話してきました。次回は三鷹市芸術文化センターの森元さんに来ていただいて、森元さんも30年近く舞台芸術に関わっていらっしゃるので、落語の会もされているんですよね。それも含めて、ちょっといろいろと、準レギュラーとして来ていただきたいと思いますけど。ということで、今回はこれで終わりにしたいと思います。谷さん、ありがとうございました。

【谷】どうもありがとうございました。

【山下】じゃあ、カメラに向かって、さようなら。

【谷】どうも、さようなら。ありがとうございました。

以下 文字起こしをしていただいているブラインドライターの担当の方の感想です

担当 青山直美
今回もご依頼ありがとうございます。舞台芸術は、考えてみると、昔からいつの時代も人々の楽しみになっていて、プロの公演から町内の園芸大会まで、個人的にも社会的にも辛いときだからこそ、みんなが集まって楽しみ、心の健康を保っていたんですよね。だから、今のような世の中でも、舞台芸術の方々には元気に心の栄養を発信してほしいです。山下さんが教えてくださった演劇界の方々の言葉が、もっと広くみんなに知られていきますように。またよろしくお願いいたします。

テキスト起こし@ブラインドライターズ
http://blindwriters.co.jp/



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