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リハビリ領域のEBP発展を妨げる5つの壁

Evidence Based Medicineというのは今から30年前くらいに提唱されるようになり、現在では世界的に広く支持されています。

30年ほど前まで当たり前に行われていた経験に基づく医療が、実は患者さんに害を与えていたということが明らかになり、これからは患者さんが良くなるという証拠(Evidence)がある医療をやっていこう、という流れがありました。

Evidence Based Practiceが大事というのはもはや当たり前ではありますが、なぜ大事と言われているEBPがなかなか普及しないのか、その理由について5つ紹介させていただきます。

「5つ理由を知ったから何?」と思われるかもしれませんが、EBPの学習を進めていくと、実践に至る前に必ずぶつかる壁になりますので、知っておくと対策を立てやすいかなと思います。

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▼EBP発展を妨げる5つの壁
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結論ですが、5つの壁というのは「トレーニングの壁」「時間の壁」「アクセスの壁」「資源の壁」「研究の壁」です。

リハビリ分野以外にもお医者さんの分野や看護師さんの分野など様々な分野で発展を妨げる要因について調査されています。

実はこの要因は分野ごとに異なっています。

ですので、リハビリ分野において妨げになるのはこちらの5つであることが多い、という視点でお聞きいただけたらと思います。

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▼それぞれの壁について紹介
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それぞれの壁について紹介させていただきます。

まずは「トレーニングの壁」です。

これは、教育の問題です。

学生時代、EBPについてしっかり習ったことがある人はなかなかいないのでは無いでしょうか?

私は10年以上前に大学を卒業しましたが、その時はEBPやEBMという言葉は聞いたと思いますが、やり方については習いませんでした。

となると、卒後教育として大事になってくるのですが、現在は卒後教育としてEBPをしっかりと教えてくれる機関がありません。

海外ではいくつかあるのですが、英語であったり、費用がかかるという点で、日本国内のセラピストが受けるのはなかなかハードルが高いのでは無いかと思います。

EBPのスキルとしてはシステマティックレビューを行うスキルだったり、患者さんとコミュニケーションをとるスキルだったり、患者さんの問題を把握するためのロジカルシンキングのスキルなどが必要になるのですが、これらについて学べるところはなかなかありません。

なので、EBPをやりたいけどどうすればいいのかわからない、という人が出てきてしまいます。

これがEBP発展の壁のひとつ目です。

続いて、「アクセスの壁」です。

これはエビデンスにたどり着けない、という問題です。

EBPのためのシステマティックレビューのスキル、批判的吟味のスキル、ロジカルシンキングのスキルなどを身につけても、エビデンスを入手することができなければEBPをやりようがありません。

エビデンスにはガイドラインや研究論文などありますが、いずれも無料のものと有料のものがあります。

インターネット上で無料のものを入手するのであればさして問題はありませんが、有料論文や有料のガイドラインを入手するためにはお金が必要です。

ガイドラインは職場で1部用意してくれるかもしれませんが、有料論文の購入許可を施設や病院が都度承認し、度々購入するのは難しいでしょう。

となると大学の図書館や、日本だったら国立国会図書館などに出向いたり、あとは著者の方へ直接連絡してPDFを送ってもらうといった方法がありますが、いずれもなかなか大変です。

このように、エビデンスにアクセスできない、という壁が存在します。

続いて、「時間の壁」です。

EBPは時間がかかります。

患者さんの臨床疑問に合わせて情報の検索をするのですが、情報の検索をするのに時間がかかりますし、検索した後批判的吟味をしてエビデンスを選んでいく作業はもっと時間がかかります。

例えば(本当に例えばですが)患者さんひとりの一つの臨床疑問を解決するために20〜40編くらいの論文をしっかり読む必要があったりします。

そして、この20〜40編へ絞り込むために数百編の論文をスクリーニングすることが必要になる場合があります。

スクリーニングとは、自分が欲しい情報かどうかというのを判断するための作業ですが、こちらも結構手間がかかります。

このように、EBPは時間がかかるので、忙しいセラピストはEBPのための時間がない、というのが時間の壁です。

続いて、「資源の壁」です。

資源の壁というのは、所属施設などでEBPの環境が整っていないこと、などです。

例えば、エビデンスを集めてきて「電気刺激療法がベスト」と判断したとしますよね。

でも、電気刺激装置がなければ電気刺激を行うことができません。

所属施設からのサポートが得られず、電気刺激装置の購入を許可されず、EBPが困難になるケースです。

最後に、「研究の壁」です。

これはエビデンスの問題です。

リハビリ領域のエビデンスは結果に矛盾があったり、再現性の問題があったりします。

例えばミラーセラピーは一方の論文では効果あると報告しているものの、もう一方の論文では効果がないと報告している。

あるいは先行研究と同じようにプロトコルを組んで研究したのに、同じ結果が再現されない、などです。

これは色々な要因が考えられますが、ひとつはリハビリがセラピストの手によって行われるものだからというのがあると思われます。

例えば、同じ課題指向型訓練だとしても、セラピストAさんとセラピストBさんがやる場合では全く同じにはならないですよね。

運動学習の知識とか、患者さんの病態に関する知識の多さや深さによってセラピストの治療の再現性が変わってきます。

お医者さんの薬の研究であれば、同じ用量の薬を患者さんに処方すれば良いだけなので(あとはアドヒアランスの管理)、高い再現性が期待できます。

なので、お医者さんなど他の領域と比べるとどうしてもエビデンスの問題というのが出てきてしまいます。

これを解決するためにはやはりシステマティックレビューの知識や、エビデンスの適用可能性について考えるスキルがセラピストにないといけないです。

そのためにもやはりトレーニングが大事になってきます。

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▼EBP発展のために
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さて、ここまで5つの障壁を紹介してきました。

ここまでお聞きいただいていた方は感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はセラピスト個人の努力だけではどうしようもない壁があります。

個人で勉強して、つまり「トレーニングの壁」と「研究の壁」を乗り越えて、時短術を駆使して「時間の壁」も乗り越えて、所属施設を説得して「資源の壁」を乗り越えたとしても、「アクセスの壁」を突破するのはなかなか難しいです。

本当にめちゃめちゃやる気のある人で、図書館に毎週通います!とか、著者の方にどんどんメール送ります!という方だったらエビデンスの入手が可能だと思いますが、日本のセラピスト全員がそれをやるのはなかなか難しいです。

ですので、もちろん著作権には配慮した形で、エビデンス情報を入手できるツールがあった方がいいのではないかと思っています。

要は、無料でエビデンスを簡単に入手することができて、「アクセスの壁」を突破できるツールです。

ここから先は私ごとになりますが、このツールをBRAINでは開発しようとしています。

脳卒中EBPプログラムという教育事業を通して「トレーニングの壁」「研究の壁」を突破し、誰でも無料で使える意思決定支援ツール(エビデンスが無料で入手できるもの)を開発することで「アクセスの壁」を突破する。

事業で得た利益は経緯を除いて、この意思決定支援ツールの開発費用に充てます。

2021年4月から始めた事業なのでまだまだ先にはなりますが、必ずこのツールを作り、日本国内でEBPが当たり前に行われるような時代を作りたいと思っています。

本日は「リハビリ領域のEBP発展を妨げる5つの壁」というテーマでお話しさせていただきました。

BRAINでは脳卒中EBPプログラムというオンライン学習事業を運営しております。

2021年前期はおかげさまで満員御礼となりましたが、後期は10月から開始、募集は7月ごろから開始する予定です。

ご興味がある方はよかったらホームページを覗いてみてください。

それでは今日もリハビリ頑張っていきましょう!

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