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【撮影紀】憧れの只見線

一度は行ってみたいローカル線

鉄道写真を撮っていると、一度は行ってみたいローカル線というものがあります。私にとって、そのひとつが只見線でした。

福島県は何度も訪れているのですが、その度に、手前にある会津鉄道や磐越西線に吸い寄せられてしまい、なかなか奥会津の只見線へ行くことができておりませんでした。ずっと憧れながら、なかなか行けない場所、そこが只見線だったのです。

ところが、2020年3月のダイヤ改正で、只見線から国鉄型キハ40系が引退すると聞いて、居てもたってもいられなくなりました。最後の勇姿を写真に収めたい。せっかくだから雪景色の中を走る只見線を撮りたいけれど、今年は記録的に雪が少ない。いろいろな葛藤がある中でしたが、2月に入ってようやく本格的な冬型がやってきて、奥会津も順調に積雪が増えたところを見計らってついに足を向けました。

本数の少なさがネック

ローカル線というのは、基本的には利用者が少ないので、その分列車本数も少ないのですが、只見線はその最たるもので、少ない列車本数の中で、どれくらい撮影ができるかがカギとなります。

家庭もあるので出発は土曜日のお昼すぎ、只見線沿線に到着したのはまもなく日が沈む夕方でした。それから冬道をこわごわと走り、貴重な夜の鉄道風景を撮影します。

現在、列車が行く終点の会津川口駅では、ボタボタと雪が降る中、音もなく到着した列車を撮ることができました。

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翌朝、まだ夜も明けぬ早朝に出発。いろいろと迷った挙句、雰囲気が気に入った会津柳津駅で、一番列車を撮りました。車掌さんが駅務員さんに手を挙げていきます。ローカル線に車掌さんが乗っている光景も今では珍しくなりましたね。

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只見線には、今や世界中に知られる存在となった、超有名撮影スポットがあります。それが、会津西方と会津桧原の間にある只見川第一橋りょうです。撮影ポイント脇には道の駅も設けられ、そこから歩いて数分で撮影ポイントへ行くことができます。また、もう少し高さを稼ぐポイントもあり、当日はかなりの鉄道カメラマンが登っていくのが見えました。私はやや視点が低いものの徒歩数分でたどり着けるお気楽な第一展望台で撮影。集った15人ほどのうち、日本人は5人くらいかな。他は台湾人ばかり! グローバルな撮影スポットです。

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只見線の最大のネックは列車本数の少なさ。9時すぎの上下列車を見送った後はお昼すぎまで列車がありません。近くの温泉でのんびり入浴するもいいですが、私は道の駅で只見線撮影の第一人者である星先生の写真集やお土産品を買ったり、食堂が開くのを待って、朝ごはんだかお昼ごはんだかを食べてから、早起きした分ちょっと仮眠して、昼すぎに1本撮り、14時過ぎの下り列車は只見川第二橋りょうで撮影しました。この時はものすごい雪が降っており、鉄橋が霞んで見えるほどでした。

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本当はこの後、もう1本会津川口からの折り返し列車を撮ってもよかったのですが、家庭がある身なのと、雪道での運転が怖かったので早めに帰宅しました。それでも憧れの只見線を撮れた満足感、十分なものがありました。

復旧後の動きも楽しみです

只見線は、2011年7月の豪雨災害で第五、第七只見川橋りょうが流されるなど大きな被害が出て、会津川口-只見間で不通となっています。山間部の秘境といわれる地帯でもあり、鉄橋の復旧は莫大なお金がかかることから、JR東日本は鉄道での復旧断念を地元に打診しました。しかし長い期間をかけて福島県が国やJRと調整した結果、復旧工事が行われることになり、2021年度中もしくはその近辺での全線復旧が予定されています。復旧後はインフラ部分を福島県や地元自治体が持つという英断も下されました。

「体験型観光」充実!奥会津7町村新事業 只見線・全線再開へ
 2021年度中を目指すJR只見線の全線再開通などを見据え、奥会津7町村でつくる只見川電源流域振興協議会は新年度、体験型観光の強化に乗り出す。奥会津の伝統や文化、食などを体験プログラム化する「奥会津博覧会(通称・オクハク)」などを新たに実施し、観光や産業の活性化につなげる。三島町で21日に開かれた同協議会の総会で事業計画を承認した。
 奥会津を訪れる観光客は、只見線の絶景写真の撮影などを目的とする台湾人を中心に近年増加しているが、滞在時間が短く、地域経済への波及効果が少ないのが課題。体験型観光を通じて滞在時間を増やし、産業や人材の育成などを図る。
(2020年2月22日福島民友新聞)

直近の記事でも、復旧に合わせて様々なイベントを行っていこうという地元自治体の意思が見え、非常に楽しみです。

しかし、今回現地を訪れて思ったのは、この路線が想像を絶する山間部の過疎地を走り抜けているということ。人口の少なさ、目玉となる観光施設の少なさ、そして駅前から観光地へのアクセスルートがないことなど、大きな課題があるように見えます。

列車本数も少なく、絶景撮影地へは車がないと行きづらいこともあり、多くのカメラマンは当地を車で訪れます。私もその一人で、申し訳ないので、少しでも地元にお金を落とそうと道の駅でお買い物をしたり食事をしたりはしましたが、駅からこういったポイントへのアクセスルートができれば、列車利用で来てくれる人も増えるかも知れませんが、列車本数の少なさはやはり厳しいものがありますね。だからこそ、なかなかアクセスしづらく、魅力があるのかも知れませんが……。

今回、福島県と地元自治体が下した英断により、只見線は復旧への道を歩むことになりました。憧れの路線、冬だけでなく、春も夏も紅葉シーズンも、四季を通して追いかけたくなる路線です。只見線、ずっと応援していきたいと思っています。

(掲載写真はすべて筆者撮影。2020年2月)

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