見出し画像

第3話「孤独の戦いから」


(午後6時)

ベルガスとの戦闘に勝利したハルは、負傷した右後ろの脇腹を押さえ、マッピングを確認しながら来た道を(セイラの街方向へ)戻っていた

ベルガス討伐から30分ほど歩き・・・

ハル「傷口がさらにズキズキする・・・。これだけ離れたらとりあえず大丈夫か・・・」

ハルはまわりの安全を確認し、岩陰に身を隠した

バックパックを地面に置き、立ったまま鉄の鎧を外し、右後ろの脇腹を見ると、致命的な傷ではないが予想以上に傷は深く出血も多かった

ハル「救急パックで消毒と止血しないと」

ハルはバックパックから応急パックを取り出して消毒と止血をした
ハル「いててててっ・・・・うぅぅぅぅ・・・」

続いてバックパックから回復ポーションを取り出して飲んだ

ゴクッゴクッ

ハルの体力が少し回復した

ハル「とりあえずこれでいい。あとは血の匂いをたよりにこれ以上追われないように、少しでも匂いを消さないと・・・」

空いた回復ポーションの瓶をバックパックにしまい、あまったガーゼと消毒薬をすべて使い、身体や装備に着いたベルガスの返り血を拭き取り、鉄の鎧を装備し、汚れたガーゼなどはゴミ袋に入れてバックパックにしまった


(午後6時40分)

ハル「ベルガスが血の匂いをたどりここへ来るかもしれない、さらに離れて野営の(野外に泊まる)出来る場所を探さないと」

ハルはバックパックを背負い、また歩きはじめ、
マッピングを確認しながら来た道を(セイラの街方向へ)戻りながら、野営が出来そうな場所を探した


(午後7時)

微かに聞こえるベルガスの声
「キキィィィ」
「キッキキィィィ」

ハル「!」

ハル「ベルガスの声!さっき止血していた方向から微かに聞こえた。やはり追ってきたか!」


「グゴゴゴゴォォォォオ」
「グゴググググゴゴォォォォオ」


ハル「なっ!!」

ハル「あのうなり声は、ベルガルヘル!」


【ベルガスヘル (紫)】
生息場所は、山・洞窟・森など。性格は超凶暴。2足歩行で体は大きく身長は2mを超える。高い知能と豪腕を持ち、ベルガスを指揮して行動することでも有名で、その統率力は冒険者からも恐れられている。硬いものまで砕くアゴの力と大きなキバ、武器攻撃での破壊力は岩をも砕くという


ハル「これはまずいぞ・・・ベルガスAがボスを呼んだか」

ハル「ベルガスヘル1体だけでも危険なのにベルガスを引き連れてオレを探しに来たか・・・」

ハル「もっと離れなきゃ・・・」


ハルは細い山道を出来るだけ音を立てないようにさらに移動した


(午後7時40分)

まわりはどんどん暗くなっていき灯りをつけずに移動には困難な明るさになってきた

ハル「もう・・・移動はそろそろ限界かぁ。結局いい場所が見当みたらない・・・こうなったら」

ハルは鉄の剣で、4cmほどの太さの木を1m50cmほどの長さで切り、さらに片方はとがらせるように斜めに切った
そして、山道から緩い斜面を5mほど下に移動し、木の棒を使い斜面を掘りはじめた

ハル「身を隠せるように十分に掘らなきゃな」


開始から30分掘り続け・・・

あたりは真っ暗になり月明かりだけを頼りに穴を掘り続けた

開始から1時間掘り続けた・・・

ハル「やっと半分くらいか・・・」


カサカサ

ハルは動きを止めて耳をすませる
ハル「!」

ハル「・・・足音からベルガス単体の偵察か」

ハルは鉄の剣をゆっくり抜いて、浅い深呼吸で気配を消す

カサカサカサ

・・・通りすぎた

ハル「ふぅ〜」

ハルは鉄の剣を鞘に戻し、深呼吸をしながら少しの時間を待ち、また穴を掘り始めた


さらに1時間ほど掘り続け・・・

隠れるのに適した大きさの穴がやっと出来たが、ハルの手にはいくつものマメができていた・・・


(午後10時)

バックパックは掘った穴の入り口側に置き、バックパックから簡易毛布と冒険用ランタンと油と火起こし石を取り出し、冒険者用ランタンに油を注ぎ、簡易毛布を頭からかぶり、灯りが漏れないようにその中で火起こし石を使い、ランタンに灯りをつけた

火起こし石と油の空をバックパックにしまうと、ハルは簡易毛布から顔だけを出し冒険者ランタンは腰に付けて、穴の奥に寄りかかるように座った

自分の不安を少しでも打ち消すかのように心でつぶやいた
ハル「灯りのついたランタンを毛布の中に入れておけば、もしいきなり戦闘になっても視界は大丈夫だ・・・」


《冒険者用ランタン》
通常のランタンよりひとまわり小さく、とても頑丈にできている。さらに揺れても消えづらくできていているため、腰につけながら移動、戦闘もできる。下の油を入れる部分が膨らんでいて、油が多く入るようになっていて、そのまわりがゴムでおおわれているため、鎧に当たっても音が出ないように工夫されているのも大きな特徴である


ほんの、少しの時間が経ち・・・

ハルはバックパックから保存食と水筒を取り出し、鉄の剣と鉄の盾をすぐに取れる角度に合わせ地面に刺し、穴の奥に寄りかかって座った

ハル「食べれる時に食べておこう・・・」

水筒の水を飲みながら、保存食を音を立てないように少しずつ食べる

保存食での食事が終わり、保存食の空をバックパックにしまい、穴の奥に寄りかかって座り、すぐに取れるように角度を合わせ、鉄の剣と鉄の盾を地面に刺した

ハル「1人の夜は長く感じる・・・しかも、追われる身、いつもの何十倍も時間が長く感じる・・・」

ハルは小さくヒザをかかえ

すぐに取れる角度に合わせ地面に刺した鉄の剣と鉄の盾を眺めながら・・・

ハル「思い出すなぁぁ」



●(過去)

ハル 10歳
トレス 24歳


ハル「トレス〜・・・」

トレス「どうした、ハル」

ハル「・・・ボクの練習用の木の剣知らない?」

トレス「捨てた」

ハル「え?」

トレス「捨てた」

ハル「なんで、なんでそんなひどいことするんだよ〜」

ハルは大泣きをした
ハル「わぁぁぁぁぁぁああ」

トレス「泣いても捨てたものは戻ってこない」

ハル「トレスのバカヤロ〜鼻くそじじぃぃぃ」

ハルはさらに大泣きした
ハル「わぁぁぁぁぁぁああわぁぁぁぁぁぁああ」

トレスが大きな声で怒鳴った
トレス「ハル!!!そんな大切なものが、なんで外に落ちてるんだ!この前もそうじゃないか!」

ハル「・・・」

トレス「そんな大事な剣だったら、なぜしっかりしまわない。なぜ磨かない、なぜ誰かに取られるような場所に置く」

ハル「・・・」

トレス「戦士にとって剣は自分を守るものでもあり、誰かを守るものでもあるんじゃないのか?」

ハル「・・・うん」

トレス「それがどうだ。今ここに、いきなり敵が来たらどうする!」

トレス「ハルはまず剣を探すのか?」

ハル「!!」

ハル「・・・」

ハル「ごっごめんなさい・・・」

トレス「なんのごめんなさいだ?」

ハル「剣をそこらへんに置いといて」

トレス「まだまだわかっちゃいねぇなぁ」

ハル「・・・」

トレス「オレにあやまってもなんの意味もないんだよ。剣をそこらに置いて、探してる最中にハルが敵にやられるのは自分の責任だ!」

トレスは、ゆっくりハルの前にひざまずき、ハルの両肩に手をおき、同じ目線になりハルの目をじっと10秒ほど見つめて静かにゆっくり話しはじめた

ハルはいつもと違うトレスの雰囲気を感じ、きっと大切なことを今から伝えようとしているのではと、心が自然と「よく聞く準備」をした

トレス「オレにあやまらなくていい。そんなことよりまずその剣で自分を守れ、もっと力があるならその剣で仲間を守れ。わかるか?」
ハル「うん、わかる」

トレス「そんな大切な剣をハルは外に落としておいたんだぞ!」

ハル「!!」

トレス
「夜は寝る、朝は起きる」
「夜は布団をひろげる、朝は布団をたたむ」
「ご飯をたべる、食器を洗う」
「剣の練習をする、剣を磨いてしまう」

トレス「今から大切なことを言うぞ」

ハル「うん」

トレス「自分で1往復が大切なんだよ、自分でな」

ハル「うん」

トレス「自分で1往復、言ってみろ」

ハル「自分で1往復」

トレス「もう一度」

ハル「自分で1往復」

トレス「そうだ、それを忘れるな」

トレス「自分でしまうことで、どこになにがあるかわかる。それがもし毎日同じ場所なら、目を閉じてでもすぐに取ることもできる」

ハル「うん」

トレス「人がしまったら、場所がわからなくなるだろ」

ハル「うん」

トレス「オレの伝えたいことをわかってくれたか?」

ハル「うん、わかった」

トレス「そうか!さすがハルだな」

トレスは笑みを浮かべ、ハルの頭をグジャグジャになるくらい撫でた

ハルは照れくさそうに嫌がってみせた

トレス「でだ!?」

ハル「まだあるの?」

トレス「あやまれ!」

ハル「え?」

トレス「あやまれ!」

ハル「さっき、トレスにはあやまらなくていいって・・・」

トレスは苦笑いしながら、ハルの鼻をつまみながら
トレス「オレに、バカヤロ〜鼻くそじじぃぃぃって言ったことにだ!!!(笑)」

ハルは泣き笑いをした(笑)
ハル「いてててて。ごっごめんなさい・・・ごめんなさい・・・(笑)」


その日の夜、ハルは眠りにつこうと自分の布団をめくった

そこにはキレイに磨かれた「ハルの練習用の木の剣」があった

ハルの瞳から嬉しい涙がこぼれた

ハル「木の剣さん・・・本当にごめんね・・・。ありがとう、トレス」

ハルはその日、その木の剣を抱きしめながら眠りについた。。。

次の日から、完璧にはまだまだほど遠いが、ハルなりに食器を自分で洗い、布団もたたんでいた、もちろん、宝物の木の剣も。。。


●(現在)



ハル「夜は寝る、朝は起きる」

ハル「夜は布団をひろげる、朝は布団をたたむ」

ハル「ご飯をたべる、食器を洗う」

ハル「剣の練習をする、剣を磨いてしまう」

ハル「自分で1往復か・・・。なら・・・そうか。トレスありがとう。オレはセイラの街を出たんだから、セイラの街に戻らなきゃだよね」

素敵な過去が、時間が過ぎる遅さを少し忘れさせてくれていた


しかし、恐怖は襲ってくる・・・


(午後11時)

ガサ

ガサガサ

ハル「!!」

ハルは心でつぶやいた
ハル「まだオレを探しているのか、くっ・・・」

ガサガサガサガサカサカサ
「キキィィィ」
ガサガサガサガサ
バキバキッ
「ギギクッキキィ」
ガサガサカサカサ
ピキッ
「キキキキキィィィ」
ガサガサガサガサガサガサ

ハルの掘った穴の上の方をたくさんの足音が通っている

ハルはビクッとした
ハル「!!!」

ハルはあまりの数の足音にビックリした瞬間、簡易毛布の隙間から一瞬灯りを漏らしてしまった

ハル「うっ!」

しかし、ベルガスたちに変化はなかった。見つかってはいないようだ

ハル「ふぅ・・・」

ハル「なんて数のベルガスだ、10・・・いや20はいたか!そんな数にこんなところで見つかったら・・・さすがに・・・」

ハル「オレを探すのをあきらめるどころか・・・まだ必死になって探している・・・」

ハルは浅い深呼吸で気配を消す


数分が立ち・・・


ベルガスの声や足音は完全に聞こえなくなった

ハル「危なかった・・・ふぅ〜」

ハル「眠ることはできない・・・なぜこんなことに」

ハル「明日にすればよかった」

ハル「すぐに帰ればよかった」

ハル「1人でくるんじゃなかった」

ハル「オレはここで終わるのか?」

ハル「・・・ダメだくそっ、良いことを見つけろ・・・」

ハル「良いことを見つけろ・・・わかってるんだけど・・・わかってるんだけど・・・少し疲れてきたよ」

ハルは心の中で叫んだ
ハル「くそっ」

ハル「こんなところをピピンに見られたら怒られるな・・・」

ハルは水筒の水を飲み気持ちを落ちつかせた

ゴクッ

その時!


カシャン♪

ハル「えっ!?」

ハルは耳をすませて
ハル「なんの音だ?鉄の音?上から?」

カシャン♪

山の外側を向いているハルは
ハル「右上か!!武器の音?いや違う。普通のランタンが石か鎧に当たる音によく似ている」

ハル「ベルガスヘルならランタンなど必要ないだろうし、うなり声や重たい足音がするはず」

ハル「でもうなり声も足音も聞こえない、冒険者がいるのか?そんな奇跡があるのか?あるはずないよな・・・それに冒険者なら冒険者用ランタンを使うはず・・・。でもPT (パーティ)が、しっかりした視界を確保したいなら使うことはあるか・・・」

ハル「今の音からしてそんなに遠くない・・・。なんにせよ確かめないと!」

ハルは灯りが漏れないよう、簡易毛布で体を包んだまま、水筒をバックパックに入れ、回復ポーションを取り出し、キンチャク袋に回復ポーションだけを入れ、右手に鉄の剣、左手に鉄の盾を持ち、自分の掘った穴から少し顔をだし、斜面の上を見てみた・・・が・・・やはりわからない

ハル「この5m上にさっきベルガスの集団が通った山道がある、確かめなきゃ」

ハルはバックパックを掘った穴に残し、静かに呼吸をしながら音を立てないようにゆっくりゆっくり、上の方向へと緩い斜面を登りはじめた

ハル「頼む冒険者であってくれ」

緩い斜面をゆっくりゆっくり登るハル

そしてハルが斜面の一番上付近に着いた時、直接は見えてはいないが、左前方のまわりの木に薄く灯りがゆらゆら反射していた

ハル「やっぱり灯りだ!誰かいるのか!?」

ハルは斜面からゆっくり少しだけ顔を出して灯りの方を見た

ハル「やはり灯りだ間違いない!ただ灯りは移動していない・・・誰か休んでいるのか?はっきり見えない・・・なにしろ慎重にだ・・・」

ハルは頭を隠しゆっくりゆっくり斜面を左に移動し、灯りの前方までくると、ゆっくり斜面から顔を出した

ハルは心で叫んだ
ハル「普通のランタンだ!!」

山壁の前に高さ30cm横50cmくらいの石があり、その上にランタンだけが置かれている


しかし、人影がない・・・


ハル「いったいどういうことなんだ!なぜ誰もいない・・・」

ハル「トイレか?いやPTならなぜ誰もいない・・・おかしい。強者のソロの冒険者なら、冒険者用ランタンで十分だし、わざわざ灯りをつけて敵に位置を教える意味がない・・・。わけがわからない・・・」

ハル「なにしろこのまま少し様子を見よう・・・帰ってくるかもしれない」


次瞬間!!


ベルガスヘル「グゴゴゴゴォォォォオグゴググググゴゴォォォォオ」

ハル「なっ!なにっ!?」

ランタンが置かれていた奥の山壁の上からベルガスヘルがうなり声をあげながら飛び降りてきた!

ドスンッ!

ベルガスヘルは険しい表情でハルをにらみながら、さらに大きなうなり声をあげた
「グゴゴゴゴォォォォガガガ」

ハルは見つかってしまった!!


ハルはあまりの驚きに斜面を少し滑り落ちたが、鉄の剣を斜面に突き刺して体を止めた

ハルは心でつぶやいた
ハル「まずい!上から攻撃されたら不利だ」

そう、戦闘においてちょっとした地形の差でも上からの攻撃は有利、下からは不利なのはハルもよく知っていた

ハルは簡易毛布を脱ぎ捨て、急いで斜面を駆け登り、ベルガスヘルと同じ地面に立ち戦闘態勢の構えをとった

ベルガスヘルの顔は怒りに満ち、その右手には、とがった鉄の突起が埋め込まれた強化された棍棒が握られていた

ハルは心でつぶやいた
ハル「こいつ・・・ランタンをおとりにオレをおびき寄せる罠をかけたのか・・・。ベルガスヘルの足音がなかったのは、さっきのベルガス集団にまぎれ移動し、気づかれないように上で身を隠し潜んでいた・・・。メディアスで過去に何度かベルガスヘルと戦闘になったが、ここまで賢いヤツははじめてだ」

ハルは落ち着いて間合いをとったが、ベルガスヘルは間合いなどまったく気にもせず、大きなうなり声をあげながら怒りのすべてをハルにぶつけるように突進しながら棍棒を力一杯振り下ろした

ベルガスヘル「グギゴゴゴゴォォォォォオ」

ガキーーンッ

ハル「クッッッ」

ハルは鉄の剣を持つ右手も使い両手で鉄の盾を支え、ベルガスヘルの棍棒の攻撃を受け止めたが、ガクッとヒザをついてしまうほどの破壊力だった

ベルガスヘル「ゴォォォォォオ」

ベルガスヘルは棍棒を横後ろに振りかぶり、ヒザをついたハルにすかさず強烈な攻撃を放った

ガコーーンッ

ハル「うわっ」ドスッ

ハルは同じく両手を使い鉄の盾でバルガスヘルの棍棒の攻撃を受け止めたが、ハルの体は吹っ飛び山の壁に叩きつけられてしまった

ハル「なんなんだこのパワーは・・・両手がシビレちまった」

ハルは脇腹の右後ろから生温かさを感じ
ハル「しかも脇腹の傷口が開きやがったか・・・くそッ」

ハル「まともに衝撃を受け止めたらダメだ・・・」

ベルガスヘルは容赦なく棍棒を上に振りかぶり強烈な攻撃をしてくる

ハル「冷静に冷静にだ」

まっすぐ頭上からくる強烈な攻撃

ハルは素早く横にステップして
ハル「かわせるものはかわす」

スッ

ベルガスヘルの棍棒は地面を叩き

バゴーンッ

さらに続けてハルの腰にきた攻撃は、素早く少し下がり、棍棒の先を盾でかすめるように受け流し

ハル「かわせないものは受け流す」

ガシャン

ハルの足にきた攻撃はジャンプしてかわした

ハル「かわせるものはかわす」

スッ

ベルガスヘルの棍棒は空を斬り

ブォン

ハル「よし、スピードにも慣れてきた。シビレもきえた」

ハルの口元が微笑んだ

それを見たベルガスヘルは、さらに険しい顔になり棍棒を握っている右手の力が増した

ハルは一気に間合いをつめ
ハル「力が増せば、その分、振りかぶりが大きくなり」

ハルは鉄の剣をベルガスヘルの左足のモモに突き刺し、素早く後ろにステップして間合いをとる

グサッ

スッ

左斜め上からの棍棒攻撃を、ハルはしゃがんでかわしながら前に出て、ベルガスヘルの左足のモモを切り上げまた素早く後ろにステップして間合いをとる

ザクッ

スッ

ハル「空ぶったらその分スキがうまれるぞ」

ベルガスヘルの顔が歪んだ

ハル「オマエはオレには勝てねぇ」

ベルガスヘルが棍棒を大きく振りかぶれはハルはベルガスヘルの左足のモモを突き刺し

グサッ

バルガスヘルは左手でハルをつかもうとしたがハルは素早く左にステップしてかわし

スッ

次々にくる攻撃を受け流してはまた左足のモモに攻撃

ザクッ

かわしては、左足のモモに攻撃

ザクッ

ベルガスヘルが左足を引きずりはじめた

ハルの一撃一撃は重いものではないが、左足のモモ一点に集中した攻撃は効果抜群であった

ベルガスヘルの怒りは頂点に達し棍棒を両手に持ち、さらに大きく振りかぶり、真上から渾身の一撃をはなった

「グゴゴゴゴォォォォォォォォォォ!」

その予想以上の棍棒のスピードに、かわすから頭上で盾を斜めにして受け流すに瞬時に切り替えたハルは、その衝撃の強さによろけながらも、またベルガスヘルの左モモを攻撃した

ガシャーン

ザクッ

ベルガスヘルは・・・前足を入れかえ左足を引いてかばった

その瞬間・・・

ハルは心でつぶやいた
ハル「そりゃそろそろさすがに、左足をかばうわな、そして」

グサッッッ

ハルの鉄の剣は、ベルガスヘルの右足のモモに深く突き刺さっていた

ベルガスヘルがはじめて、後ろに下がった

ハル「弱気になったか(笑)」

ハルの腰につけられたランタンの灯りが後ろに下がったベルガスヘルの口元の変化をうっすらとらえた


ニヤッ


ハル「!?」

ハル「!!!」

ハル「・・・ベルガスに囲まれたか。20・・・いや、もっとか・・・ベルガスヘルの声で集まってきたか」

ハル「あのデカいうなり声も怒りだけでなく、仲間を呼ぶためでもあったか!こいつ凄えわ・・・」

ベルガスヘルが棍棒を天高く上げ

ベルガスヘル「ゴッググギィィィォォォォオ」

ベルガスヘルからベルガスへの合図のようだ
ベルガスが次々とハルに襲いかかる

ハルは盾でツメ攻撃を弾き、剣でベルガスを切り裂き、足でベルガスを蹴り上げる

しかし止むことがない攻撃・・・

ベルガスのツメ攻撃
ビシッ

ハル「くっっ」

ベルガスのキバ攻撃
ザクッ

ハル「うぐっっ」

ハルは盾でベルガスを弾き飛ばし、剣を突き刺し、移動しながらかわしていく

しかし、止むことがない無数の攻撃・・・

ベルガスのツメ攻撃
ビシャッ

ハル「ぐっ」

ベルガスのキバ攻撃
ザクッ

ハル「うぐぐっ」

ハルはそれでも次々と斬りつけた

ザクッ
グサッ
グサっ
ザクッ
ザクッ
グサッ
ザクッ
グサッ

ハル「まだ、3分の1ってとこか・・・ハァハァハァハァ」

ハル「回復ポーションさえ飲めれば・・・」

ハルは力を振り絞り移動のスピードを上げ、盾でベルガスの攻撃をガードしながら、剣で攻撃しながら、回復ポーションを飲む一瞬のスキ作った

ハルは心でつぶやいた
ハル「よしっ!」

剣を地面に刺し、キンチャク袋から回復ポーションを取り出し、それを口に含ん・・・

ガゴーーーーーン!

ベルガスヘルの棍棒がハルの脇腹の右後ろの赤く染まったガーゼの場所を強打した
ハルの体は吹っ飛び山の壁に強く叩きつけられた

ハル「うわぁぁぁぁぁぐぁぁぁぁぁ」

あまりの衝撃と痛みに意識が遠ざかっていくのがわかる

ハル「うぅぅ・・クックソッ」

ハルがベルガスヘルの方を見ると、ベルガスヘルの足元にハルの鉄の剣がむなしく地面に刺さったままに・・・

ベルガスヘルは、ハルが飲むはずだった回復ポーションを拾い、笑みを浮かべて飲んでいる

ハルの視界が上からだんだんとなくなっていく
ハル「なんだよオレ・・・終わっちまうのかよ・・・」

ハル「終わりってこんなものなのか・・・」

不思議と痛みはやわらいでいく

ハル「痛くない・・・よかった」

ハル「もう視界がなくなる」

ハル「・・・すべてが・・・終わった。オレの分かれ道の扉はどっちが開くのかな。良い方が開くといいな・・・」


ハルの瞳が完全に閉じる前に、数人の人影が見えたような・・・



[第4話へ続く・・・]

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?