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256話 夢の入り口へ

1人夢に取り残されている黒の女王・シャム。彼女を助ける為に墓守のドムは走り回っている。一方黒の城でコリーとサンディは、部屋に様子を見にきた黒の王の話から「夢の入り口」を見つける事ができた。


※ ※ ※


黒の王・シーカは身体中が震え出し手先が冷たくなっていくのを感じた。

「忘れてないでしょ? シャムと過ごした井戸の場所を」

黒の王の顔を覗き込んだのは黒の女王の代わりに目覚めた夢歩きのドナだった。

黒の王はゆっくりと両手で顔を覆った。
忘れるはずもない。しかしその場所はもうここには存在していなかった。

「もう無いんだよ、その井戸は」

「え?」

部屋にいたドナをはじめ、コリーと主治医のサンディの声が同時に重なった。

「どうして?」

「そこはもう埋め立ててしまったんだ。新しい研究施設が必要だって言ってな」

「研究施設って?」

「城内を支えるオートメイルの生産施設だ。そこで組み上げられた機械仕掛けの人形達が教育を受け、この城や町で働いている」

「その発案者は……」

「彼女だよ。女王だ」

そう言って黒の王は頭を抱えた。

「じゃぁ入口は? 井戸が夢の入り口なんでしょ?」

主治医サンディが立ち上がり、震えた声で質問した。

「残念だが」

再び絶望感に包まれた。
部屋の時間が止まってしまった。

「だが…」

黒の王のその先に続く言葉に誰もが期待を寄せた。

「井戸の底へつづく道は残っておる」

黒の王は地下道の事を口にした。
誰もが暗黙の了解で触れる事を恐れていた未知の空間に王自ら口にしたのだ。

皆の顔が明るくなった。
それは黒の王も、女王を助ける真の協力者となった瞬間だった。

つづく

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