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257話 酒場での会話

1人夢に取り残されている黒の女王・シャム。彼女を助ける為に墓守のドムは走り回っている。一方黒の城でコリーとサンディは、部屋に様子を見にきた黒の王の話から「夢の入り口」を見つける事ができた。


※ ※ ※

黒の女王の夢の入り口となる「井戸」は随分前に埋め立てて無くなったことを黒の王・シーカは口にした。しかし、井戸の底につづく地下道があると告げ、ようやくコリー達一同は部屋を出て「夢の入り口」へ向かう事となった。


一方、酒場でも元・墓守のドミノ達も行動を開始しようとしていた。

「もう頭痛の方は平気かい?」

酒場「ヤミゾコ」(闇底)の女主人・ヒラリが笑顔でドミノ達へ声をかけた。

「はい、お世話になりました」

出発の準備をしているシイナ達の隣でドミノは深々と頭を下げた。

「いいのかい? もう少しゆっくりしてけば皆んな帰ってくるだろうに」

「いえ、私たちもやるべき事がありますので」

ドミノはドムへの思いを一旦心の片隅に押し込め、本来この国へと訪れた意味を思い出した。

「これからどちらへ?」

ヒラリより小さく線の細い男主人・シブヤが朝食にと、ヒラリの作ったお結びを包んで持ってきた。

「わ、私の仕えたお嬢様の所へ」

「そうかい、じゃぁ道の方は大丈夫だね」

シイナは笑顔でうなづいて見せた。

「また何かあったらいつでもおいで。ここはヤミゾコ、底には必ず希望が落ちてるって事を忘れないように」

そう言ってシブヤは包みを笑顔でドミノに手渡した。

「ありがとうございます。もし……」

ドミノは弟のドムがここに戻ってきたら……と、言いかけてやめた。これは自分たちの問題で誰かに頼る事ではない、という気がしたのだ。

「では、また」

そう言ってドミノ達は酒場「ヤミゾコ」を後にした。

客人達のいなくなった店内をカウンター越しにヒラリとシブヤは見つめ、小さな息を吐いた。

海からの風がやんだ。
嵐の前の静けさが酒場だけでなく黒の国全体を包み込んでいる様だった。


つづく

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